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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

とりあえず、最後まで観なければもったいないという気持ちで鑑賞。

途中まで、眠かったデス。

ザラチェンコがあっさりと殺されたのは意外でしたが、その秘密結社のジイサンたちが皆同じに見えて区別がつかなくて、結局誰が誰やらよくわかりませんでした。

病室でトレーニングするリスベット、お待ちかねパンク姿で法廷に現れるリスベット、最後までツンデレのリスベット、などなどヒロインの魅力は全開です。

前作で生き延びた尸良・・・じゃなかった、ニーダーマンとの決着は最後の最後までひっぱられました。ナンデあのガタイで逃亡できるねん、とツッコミたいところではありましたが、そこはリスベットの活躍に免じて目を瞑りましょう。

ミカエルは今作もリスベットとはあまり触れ合うことなく、後方支援に回ります。おかげで、リスベットに真摯に味方する主治医のほうがカッコよく見えます。You、乗り換えちゃいなよ、と言いたくなります。

いや、ミカエルもペンを持つ者として信念を曲げずに戦うんだけれども。それでも日本人としては、その貞操観念にうん? と思うところもあり、やっぱり主治医の方がカッコエエわ、と思いました。

2と3は映画としては少し残念な出来ではありましたが、リスベットというヒロインは一貫して男も女も魅了してしまう人間力がありました。今後も、ミカエルとの関係含めたリスベットの活躍が観たいところではありましたが、原作者がこの作品を書いたあと急逝してしまったということで、この物語はここでおしまい、メデタシメデタシ、の模様です。残念。

評価:★★★☆☆

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エグザム

とある企業の試験に集まった男女8人。試験官はルールの説明後、部屋をあとにする。残ったのは8人と警備員。受験者が問題用紙を裏返すと、それは白紙だった。残り80分。彼らは何とかして「問題」とその「答え」を見つけようとする。

極端に説明の少ない導入部。受験者と同じく「???」が渦巻き、これからどうなるのだろうとワクワクします。

『SAW』や『CUBE』が一世を風靡して、雨後の筍のように制作された密室群像劇。そのどちらとも観ていませんが、設定だけを真似たようなB級作品が多い中、これは比較的良作の部類に入るのかな、と感じました。

いくら年収一億がかかっているとはいえ、そんなに必死にならなくても、と思わなくもありませんが、そこはいちおう、「本当に命がかかっている」状態の人間もいることがわかるので、理屈は合うかなという気はします。

ただ、ラストでとってつけたように試験の趣旨を説明していたとはいえ、いくら何でも非人道的すぎてそこは違和感でした。それぞれ個性ある受験者の中でとりわけ異彩を放っていた人物が企業の回し者であったのは、大方の予測どおりでしたが、そこは『ユージュアル・サスペクツ』のケビン・スペイシーばりの変貌を見せてほしかったところです。

さらに、冒頭で最大の謎をぶちあげている以上、それなりのオチを用意してくれないと困ってしまいます。「問題」の中身には、感心どころかどっと脱力してしまいました。屁理屈をつけようと思えばナンボでもつけられる、ただのトンチクイズです。

ま、ラスト以外は退屈せずに観ることができましたので、まあまあかなと。

評価:★★★☆☆

<ヤスオーのシネマ坊主>

 結局主人公の母親が工場で事故で死んだのは、本当に工場の事故で死んだのですね。ここは絶対に伏線になると思ってずっと考えていたのですが、まったく何もありませんでした。主人公達が撮っていたビデオにも、後半まで引っ張るほどたいしたものは映っていないですね。あそこまで引っ張るなら多少のどんでん返し的なものを入れないとダメです。主人公達の理科の先生は、20年前にエイリアン研究チームに入っていたという設定ですが、本当に大した情報を持っていない人ですね。だからこそ20年も普通に先生をやっていたといえば、そのとおりなんですけど。

 あと、人間をバリバリ喰っていたエイリアンはただ自分の星に帰りたかっただけなんですね。ということは悪者は軍隊の方ですか。こういう陳腐な設定になっちゃうと僕はもうダメなんですよ。子どもも楽しめる映画であってほしいということであくまで善悪をはっきりさせたいというならば、主人公の身近に黒幕を一人ぐらい入れても良かったのではないでしょうか。

 けなしてばっかりですが、前半は面白かったですよ。僕はちょっと用事があって開始から40分ぐらい観ていったん止めたのですが、前段落で述べたような大きな風呂敷を広げられたその時点での評価は満点近いです。さや氏にも「こんな面白い映画何でyahoo映画の評価(たしか平均3点ぐらい)低いんや。誰が何と言おうとおれはおもしろいと思うよ。」と言ったのですが、終わってみれば人々の評価が正しいとはっきりとわかります。

 ただ、こういう後半明らかに失速する映画は評価がどうしても低くなりますが、前半の風呂敷だけでも見る価値は十分あります。また、少年少女たちの映画を作る様子やちょっとした恋模様の描き方も上手です。主人公の父親が開始早々でヒロインの父親ともめているのですが、ああこれはおそらく主人公の母親の事故に関係あるなと誰でもわかるので、このへんの人物の絡まし方も上手だと思います。結局後半で父親二人は大した理由もなくもめていることが分かり、大した理由もなく和解してしまうんですけど。

 

★6(10点満点)

ミレニアム2 火と戯れる女

 

『ミレニアム』3部作の2作目。

1作目を観たのがちょうど1年前なので、なんとなくしか憶えておらず、鑑賞を始めてからメニューの人物相関図へ戻るていたらくでした。

殺人事件の犯人に仕立て上げられてしまったリスベット。はからずもその事件に巻き込まれ、リスベットの潔白を信じ彼女を救おうとするミカエル。謎の組織の殺人鬼、そして黒幕の正体。

次々と紐解かれていく事件の真実と、リスベットの過去。

サスペンスとして、面白いは面白いのですが、前作のようにストーリーに没頭してしまうことはありませんでした。

前作はミカエル&リスベットの探偵コンビ、ふたりの関係の進展、リスベットの秘密と謎めいた魅力・・・などなど、主題の殺人事件の謎解きだけでない面白さがてんこ盛りだったのですが、今回はミカエルとリスベットは別々の場所で行動し、最後まで交わることはありません。また、リスベットも逃亡生活をするせいか、奇抜な服装はなりをひそめ、かつらをかぶりノーメイクがほとんどです。きたえあげられた肉体をさらけだしてのラブシーンや血まみれ泥まみれのアクションシーンは中性的な色気がありましたが、見てくれの魅力という点では劣っていました。ミカエルも後方支援に回ってしまいあまり活躍できず、前作ではそれなりに渋みを感じた中年男だったのに、なぜか今回の裸は加齢臭を感じさせるという・・・。

殺人鬼が無痛症だったというオチは、『無限の住人』の尸良を彷彿とさせました。白髪だし。ちょっとイカニモなキャラだったかなあ。3にも続いて登場するようですが、尸良みたいな最期を迎えるのでしょうか。あれはかなりえげつなかった・・・。

3は2以上に評判がよろしくないようですが、とりあえず結末が気になるので、借りてみることにします。

それにしても、インテリア雑誌やムーミンで良いイメージばかり抱いてしまう北欧にも、やはりアレコレと暗部はあるのだなあと、ちょっと複雑な気持ちになりました。

評価:★★★☆☆

冷たい熱帯魚

『愛のむきだし』などの園子温監督の作品です。

しかし、『愛のむきだし』はまだラストに救いや光を持たせるような作品でしたが、これは実際の事件(埼玉愛犬家連続殺人事件)をもとにしているだけあってますます残酷でエゴイスティックで猟奇的な作品に仕上がっていました。

とにかく、「マトモ」ではありません。

正面からストーリーを追う、登場人物の心情を考える、展開を予想する・・・そんな、「フツー」の映画鑑賞をしていると、カウンターパンチを何発も何発もくらうことになります。

吹越満が演技派なのは知っていましたが、でんでんにここまで俳優の才があるとは、正直思ってもいませんでした。最近でいえば『運命の人』の販売局員や、入浴剤のCMくらいしか印象がありませんが、どちらかというと平凡な中年オヤジ役のイメージだったので、まさかこんなどうしようもない殺人鬼を演じることができるとは、意外でした。

でんでん演じる村田は、まごうことなきサイコパスですが、実際の犯人も映画と同じ発言をしていたとはにわかには信じがたい話です。そういう、人間として大切なものが欠落してしまった者がこの世に存在し、聞くに堪えぬ残酷さをもって人を殺めてしまう事件は、これに限らず今まで幾度も発生していたことですが、理解の範疇を超える理屈を聞かせられると、自分自身の認識ではあきらかに相手が狂気の沙汰であるにもかかわらず、聞いているほうの頭がおかしくなってしまいそうになります。

この作品に出ている人物で、自分の理解の範疇である「マトモ」な人物はひとりもいません。男も女も、大人も子どもも、みんな壊れています。

「フツー」をよそおっていた社本でさえ、もともとはエゴイスティックな人間です。最後はその本性をむきだしにします。

いや、その「エゴ」という評価さえ、あてはまるのかどうかはわかりません。ごくとなりにいる人たちを語る時のような、安易な言葉では区分けできない、常軌を逸した人たちばかりなのです。

断末魔、哄笑、裏切り、暴力、セックス、血の海、散らばる肉片、破壊されたマリア像。

そこから何かのメッセージを受け取ろうと考えましたが、途中で脳みそがいろんな人の骨肉と一緒に切り刻まれ、醤油をかけられ焼かれていきました。

エンドロールが流れる頃になって、酸素をほとんど摂取していないことに気づきました。

気が狂いそうなほど、とにかくすべてが範疇を超えているのです。

監督の言う「徹底的に救われない家族」――救われない、とは、いったい何だろう。確かに、自分の価値観からすると、彼らはまったく救われない、ずたぼろの状態。では救われる家族とはどのようなものだろう。社本が夢見たように、父と後妻と娘、三人並んで仲良くプラネタリウムを見上げて笑うことだろうか。それで救われた気になるのは社本だけだろう。後妻と娘が無理に笑ったフリをしていただけであったとしても、体裁を繕った社本は救われた気になるだろう。でもそれでは後妻と娘は永遠に救われない。といって、遮二無二暴力で抑えつけても救われることは絶対にない。社本が最後に救いを求めたのは、自分が命を賭けて得た教えを、親として伝えることだった。それは、父親としての威厳であり、誇らしげな姿であるべきだった。社本は最後に救われたと言えるかもしれない。その今際の際の教えを聞いた娘の反応を見ずに済んだのだから。

まあ、そんなところだろう。

ひとりの矮小な人間が死してこの世に残せるものなんて、ほんのわずかだ。

まして今まで目の前の現実から逃げ続け甘美なものだけ享受して都合良く日々を消化してきただけの社本が、いったい何の説得力をもった言葉を伝えられるというのか。結局、逃げないフリをして逃げた。それだけの人間だ。もっとも、ヤッたことが極端なだけで、たいていの人間がこんなもんにすぎないのだろうが。

良作、とは呼べません。心に残るものはなにもありません。むしろ絶望や虚脱感しか残りません。二度と観たくもありません。

しかし、駄作と決めつけるのも不適格な気がします。園監督の個性光る、といえば褒め言葉ですが、園子温にしか作りようのない作品でしょう。

ただ主要キャストの熱演は目を瞠るものがありました。とくにでんでんは、もうサイコパスにしか見えません。これからCMを見るたびに「斗真くん、逃げて~!」と言ってしまいそうです。

評価:★★☆☆(2.5・・・★1と★5のちょうど中間ということで)

 

<ヤスオーのシネマ坊主>

僕はアンダーグラウンドな世界が大好きなので、この映画の基となった事件もよく知っていたので、ちょっと不自然にエロをからめすぎかなあという違和感はありましたが、それはこの監督の嗜好なので仕方がないですね。遺体の解体シーンも監督の嗜好でしょう。あそこまで血みどろの場面が必要とは思いません。ただ、暗い事件を題材にしてるわりには、テンポも良いし、展開もまったく予測できないし、純粋に飽きずに観られる作品でした。

でんでん演じる「村田」のキャラクターも、幼児期のトラウマを引きずっているところは映画的すぎてあまりいいキャラ設定とは思いませんでしたが、この人物の言っていることは人生哲学としてある意味正しいので、というか吹越満演じる「社本」よりも正しいことを言っているのではないかとまで思わせてしまうぐらいですし、そのへんの映画の陳腐な猟奇殺人鬼よりずっと魅力的なので、それが逆に怖かったですね。あと、誰もが分かっていることだと思いますが、こういう人間は実際にいますからね。明るくて、声が大きくて、押しが強くて、ユーモアがあって、身も蓋もないことばかり話す奴。ある程度の距離を保って付き合っていれば普通に面白くて頼りがいのある奴ですからね。

そして、殺人鬼の「村田」の生きざまが小市民の「社本」の生きざまよりある意味正しく感じるからこそ、ラストの「社本」の「人生ってのは痛いものなんだ」というセリフにも説得力が生まれてきますね。ちなみにこの映画はそのあともうひとひねりありますが、これは僕はいらなかったと思いますが。

ただ、こういう人間の汚い部分ばかり切り取った映画がそれなりに話題になるというのは、「ALWAYS 三丁目の夕日」みたいな人間の甘い部分ばかり切り取った映画があるからであって、園子温は「ALWAYS 三丁目の夕日」を作った人たちに感謝しなくてはいけませんね。三丁目の夕日みたいな映画をベタなお涙頂戴の商業的映画とガンガン否定して、冷たい熱帯魚の方を人間の本質を突いている深い映画とか言う奴がいるからこそ、こういう映画も陽の目を見るわけですから。

点数:★7(10点満点)

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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