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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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冬の楽しみといえばフィギュアスケート、年末は全日本選手権。
今年は、インフルエンザのためディフェンディングチャンピオンである羽生結弦選手が欠場するという残念なニュースもありました。
しかし、これがチャンスとばかりに他の選手たちは燃えるはず。
今年最後の、氷上の熱き闘いが始まります。

《男子シングルSP》
羽生選手の欠場でにわかに優勝候補のトップに躍り出た、GPF表彰台の宇野昌磨選手。GPFでもSPでつまずきましたが、今大会もステップアウトや転倒ありで先行逃げ切りとはいきませんでした。
その宇野選手を抜いてSPトップに立ったのが無良崇人選手。打楽器の音だけで踊るステップでは会場全体を惹きつけました。魅せる力が必要になる難しいこの楽曲で、代名詞のトリプルアクセルだけでなく、匂い立つような無良選手の魅力がいかんなく発揮されていました。ベテランの意地を見ました。
そして、宇野・無良選手とあわせて実質この三人のトップ争いであろうと思われた、残るひとりが羽生選手と同学年の田中刑事選手。NHK杯ではみごとに表彰台に立ちました。昨シーズンからぐんと成長を感じた期待の選手。みごとにまとめ、僅差につけます。

《女子シングルSP》
三連覇をめざす宮原知子選手があぶなげなく首位発進。GPSではジャンプやステップの点数が伸び悩みましたが、きちんと修正できるところが宮原選手の強みです。
2位は本郷理華選手。シニアデビュー時に好成績をおさめた以降は、ジャンプの回転不足などで宮原選手の後塵を拝する結果となっていますが、オリンピックの枠取りに貢献しなくてはならないエース候補の選手です。
僅差で追うのが樋口新葉選手。ジャンプの迫力はそのままに、シニアらしい表現力も身につけつつあります。
最終滑走は、今大会最年長の浅田真央選手。左膝痛が心配されましたが、果敢にトリプルアクセルに挑みました。結果は一回転で得点はゼロ。大きく出遅れてしまいましたが、本人にとって大切なのは、得点でも順位でもなく3Aを跳ぶことなのだと、終了時の笑顔で実感しました。
宮原選手に次ぐ演技構成点を叩き出せる浅田選手なら、無理して3Aに挑まずともトップ争いはたやすいことでしょう。ただファンとして思うのは、それが競技者にとってふさわしいかどうかはもう関係なく、浅田選手がやりたいように演じればいい、演じてほしい、ということ。たとえ若手に敗れても、それが彼女の望む道ならば。そのスケートで、どれだけの人が歓喜し、心を支えられてきたか、登場時の歓声を聞けばわかることです。もちろん、完璧な『リチュアルダンス』を見たい。しかしそれ以上に今見たいのは、演技後の浅田選手の笑顔なのです。

《男子FP》
GPFと同じ流れで宇野選手がFPで盛り返し、逆転優勝を果たしました。
4回転ジャンプがきれいに決まらずコンビネーションを入れられなかったがための減点はありましたが、後は大きなミスなく、終盤にきっちりリカバリーも決めて涙で演技を終えました。シーズンごとにめきめき大人の演技へと変貌を遂げていく宇野選手ですが、この『ブエノスアイレス午前零時』も年齢を感じさせないスタイリッシュなプログラム。そして、大きなプレッシャーをはねのけての優勝。またひとつ、高い壁を乗り越えました。
今シーズンFPで失速することが多かった無良選手ですが、今回もまたその陥穽に嵌ってしまいました。浅田真央選手のソチ五輪の印象が強いラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』、無良選手なりの世界観はしっかり表現できていたように感じましたが、得点源のトリプルアクセルの失敗が響きました。
田中選手が2位に順位を上げ、世界選手権出場に名乗りを挙げました。フェデリコ・フェリーニの作品の主人公になりきったプログラムは、田中選手の個性にあふれていました。来年の演技も楽しみになるような世界観を持った選手です。
少しずつ演技力を高めていこうと努力している日野龍樹選手、4回転サルコウを決めた友野一希選手、200点台を出した中村優選手や島田高志郎選手など、今後が楽しみになる若手をたくさん見られるのも全日本ならでは。来年のクリスマスには、どんな成長した姿を見せてくれるでしょう。

《女子FP》
宮原選手が貫録の三連覇。パーフェクトとはいかず、GPFで見せた練習までしたというガッツポーズはお預けとなりましたが、今期磨きがかかっているのは演技構成点にまつわるすべての要素。ますます大人の演技力を身に着けつつあります。世界選手権の表彰台も狙えるだけに、枠取りも含めて大きな期待がかかります。
二年連続2位の樋口選手は転倒こそあれ、スピード感のある若々しい滑りを見せてくれました。シニア参戦の今期は成長期もあってか武器のジャンプで精彩を欠くことが多かっただけに、世界選手権ではしっかりその存在感をアピールしてほしいと思います。
3位はSP5位から巻き返した三原舞依選手。この選手の強みは何といっても癖のない正確無比なジャンプ。世界と張り合えるだけの力を持った、まさにシンデレラガール。昨年は病と戦っていただけに、感慨もひとしおでしょう。
一方、SP2位から順位を落とした本郷選手。名プログラムの『リバーダンス』でしたが、最終滑走のプレッシャーからか滑りに勢いがありませんでした。
表彰台こそ逃したものの、本田真凛選手、白岩優菜選手、坂本花織選手など、シニア参戦予定のジュニア勢が上位に割って入ったことは、来たるオリンピックシーズンへ向けてあかるい話題となりました。四年に一度の代表の座を賭けて、シニアの勢力図はどう書き換えられていくのでしょうか。
彼女たちと同じように、バンクーバーからソチへの間、急激に成長しトップ争いを繰り広げたのは村上佳菜子選手でした。高難度の連続ジャンプがなければ戦えない今の潮流に乗り切れず、近年は新戦力に押されて低迷を続けています。それでも村上選手には、若手にはない武器がある。曲が始まった瞬間、リンクを自分色に塗り替えることができるのは、世界で戦ってきた村上選手ならではの大きな魅力です。怪我もあって、もともと低いジャンプの難度をさらに下げて臨んだこの大会。ノーミスではあっても、上位を脅かすことはできませんでした。それでも客席は彼女の笑顔に惜しみないスタンディングオベーションを捧げました。ジャンプ構成を変えたことは競技者としては悔しい、とコメントし、引退を示唆したとも報道されています。いずれにせよ、ファンにとって最高の佳菜子スマイルは、待ち望んでいたクリスマスプレゼントとなりました。
競技にはいろいろな戦いかたがあると思います。
村上選手のようにパーフェクトを目指し難度を下げる方法。そして、浅田真央選手のように、無茶を承知であくまで高難度にチャレンジする方法。どちらも正しく、またアスリートとして勝負に、そして己に真摯に向き合った結果であります。
とにかく回ろう、と挑んだ今期二度目の3Aは回転不足の上転倒。しかし、3F-3loの高難度連続ジャンプは回転不足ではあったものの着氷しました。そしてしっかり踏み切れるようになった3lzには加点がつきました。3Aのダメージのせいかその後のジャンプに精彩を欠いてしまいますが、日本の、いや世界でもトップクラスの美しいスケーティング技術と、他の追随を許さないステップの密度と迫力は、見るものを魅了しました。
スピードはどうしても若手に劣ります。大技に失敗すると点数が伸びません。順位は出場以降最低の12位。世界選手権も逃し、浅田選手の今シーズンが終わりました。
羽生選手の欠場もあり、今大会最も注目されたのは浅田選手でした。だからこそメディアはこの成績を大きく取り上げ、今後の去就を書き立てました。
日本中の感動を誘ったソチFPの後、もし引退していれば、「美しい引き際だった」と言われていたのかもしれません。
しかし浅田選手は「ハーフハーフ」の心境から、競技者であることを選んだ。ならば、この状態で引退を決意するとは到底思えません(続行できないほどの怪我ならば別ですが)。FPの後の悔しそうな表情は、まだ彼女が己の目指す道半ばであるからこそのものです。3Aを跳んだからこその悔しさ。跳ばなかった、ではない、跳べなかった悔しさ。それは彼女が競技者としての向上心、闘争心を失っていないことの証明です。
ならば、浅田真央は戦える。これからも。
もちろん、世代交代は始まっています。それは競技の発展には絶対的に必要な要素です。
しかし、浅田選手とともにフィギュア界を支えてきたカロリーナ・コストナー選手は、出場停止処分が明けて復帰し、今月のゴールデンスピンで優勝を果たしました。29歳。まだ世界の舞台で戦えることをアピールしました。浅田真央とコストナー。バンクーバーで、そしてソチで、ふたりはともに戦いました。そしてみたび、平昌オリンピックの舞台で、ふたりが美しい舞で競い合う姿を見られることを願っています。




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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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