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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『真田丸』
大坂の陣以降のスピード感には惹き込まれました。結末を知っているはずなのに、結束する牢人たちに「勝てるかも!」と肩入れして見ていました。今年の大河は大当たり。三谷幸喜やキャストはじめ、スタッフの大勝利でしょう。
当初は父や兄より目立っていなかった信繁ですが、大坂城に入ってからのカッコよさといったら。
歴史上、大阪の陣でしか活躍しない真田幸村ですから無理もありませんが、十か月間は真田昌幸をはじめ、秀吉、家康という魅力的な人物たちの陰に隠れてしまっていました。前半のMVPはなんといっても昌幸パパ。敵のみならず味方をも飄々と欺く野心家で、時には籤引きに頼るような茶目っ気も見せる。その教えは信之、信繁兄弟にしっかりと受け継がれました。最終回、死を前にした信繁が敵を倒したその一手は、昌幸が大助に説いたものでした。本多正信の領地である玉縄にて、大坂からのしらせの内容を悟り、前を見据えて歩き出す信之の一歩は、父から託された国を背負う覚悟への道でした。真田丸――信繁が主役のはずの物語は、その船の舵を託された信之のカットで終わりました。
大河のようなスパンの長いドラマは、途中でブレが発生するととたんに駄作となってしまいます。近年「あ、これは制作側から茶々が入ったな」と伝わってくる大河が多かったのですが、今作は三谷幸喜という著名な脚本家だからこそ貫き通せた信念と、それへ捧げるキャストやスタッフからの無償の信頼を感じました。全員が同じ方向を見ていれば、おのずと団結力が生まれていきます。
放送されている間、『真田太平記』と『城塞』を続けて読んだのですが、前者は信之兄ちゃんがとにかく素敵でした。大泉洋演じる兄ちゃんは弟へのコンプレックスにいじける人間くささがあって、それも大きな魅力のひとつではあったのですが、エリート長男な兄ちゃんもそれはそれで見てみたかったです。終盤、お通に熱を吹くところは少しガッカリでしたが。それ以上に大河の中でのお通はあんまりなガッカリ幕引き…。きりも最後は評価を覆したけれど、当初はとんでもない叩かれようでしたし、三谷幸喜は女性を描くのが苦手なのか?
『城塞』の初読はおそらく中学生の頃図書館で借りたものでしたが、地元含め馴染んだ地名が出てくるので夢中になり、長じて文庫本を買いました。今でも司馬作品のうち五本の指に入るほど好きな作品です。
とくに印象深かったのが、「家康本営に対する幸村の突撃は二度にわたっておこなわれた。」という一文です。戦闘の凄まじさと幸村の執念が伝わってきてゾクゾクしました。
ドラマではさすがにドラマチックがすぎましたが、家康と幸村の対峙の場面はこのドラマで描いた戦国という時代が凝縮されていたと思います。ネット上でラスボスと称された家康ですが、決してわかりやすい「悪役」には描いていません。
豊臣方の視点から描けば天下統一の野望を燃やした家康が、家康の視点から描けば旧時代の権力にとらわれ平和を乱す豊臣方が、悪役ポジションに立たされがちです。しかし、豊臣方には豊臣方の、家康には家康の義があります。ドラえもんもこう言っています。



わかりやすい対立構造にせず、それぞれの義にしたがう生きざまを真っ向勝負させた最後の対決は、「これぞ大河ドラマ!」という珠玉の名シーンだったと思います。
歴史とは、振り返るものではありません。
価値観とは、過去、経験、口伝、それらの積み重ねです。
己が存在しなかった時間を現在の位置から省みたところで、現代的価値観からは逸脱できません。
最近の大河ドラマに欠けていたのは、作り手側の視点の時空移動です。
ただ、それはむずかしい。視聴者の歴史離れ、メディアにおいては大人の事情もありますし、作り手が歴史に精通しているかどうかも関わってきます。その点、司馬遼太郎愛好家の三谷幸喜は、視聴者の座標をたやすく歴史上に移動してくれました。
個人的にはもうちょっとおふざけ場面を減らしてくれたら…女性の台詞回しが現代的でなかったら…出浦さまを最後出してくれたら…と思うところは数々ありますが、昨年挫折しただけに、ようやく一年通して楽しめたことには満足でした。
おかげで個人的にも世間的にも次作へのハードルが上がってしまいましたが…。同じ戦国時代というのも不幸な話ですが、とりあえず予約はそのままにしておきます。



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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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