忍者ブログ
おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

観ているだけなのに震えてしまいました。

心も身体も。

 

鈴木選手。初の大舞台で、本当に見事な滑りでした。最後のステップは何度見ても感動を抑えきれない、一瞬にして無色のリンクが色彩鮮やかなミュージカルの舞台へと変わり、観客を巻き込んでフィナーレへ。大きな苦難を乗り越えた者だけが味わうことのできる達成感が、観ているこちらにも強く伝わりました。あの情熱あふれるステップは、入賞者の中でもいちばん会場が盛り上がった時間だったと思いますよ。

その次に登場したコストナー選手・・・ううう、観ているのがつらかった。何か大きな波にもまれて、もがいている途中のような気がします。あのダイナミックなジャンプ、美しいスパイラルやスピンをもう一度!

ラウラ・レピスト選手は音響トラブルで集中力が心配されましたが、それを覆すノーミスでまとめた美しい滑走でしたね。鈴木選手がここで抜かれてしまいましたが、これは無理ないかもと感じました。フリーは4位でしたが、それも納得の素晴らしさでした。

 

そして最終グループ。正座が崩せない。

レイチェル・フラット選手はさすがフィギュア代表激戦区アメリカを勝ち抜いてきただけあります。ちょっと固いような気もしますけど、ノーミスで滑り切る地力。まだ高校生だそうですが、将来が楽しみですね。

安藤選手、衣装でずいぶんと雰囲気が変わります。スタート時、とてもいい表情をしていたので安心しました。ジャンプも安定。少しスピード感に欠けていたのは、緊張していたのでしょうか。6分間練習時点で調子があまり良くなかったとは試合後インタビューで答えていましたが、演技中の柔らかい笑顔はトリノの時にはなかったもの。この4年間、20歳そこそこの女性にはあまりにも激しすぎる荒波を乗り越えてきたことは、観ているだけですが知っています。その思いを感じる、情感こもったステップでした。滑り終えた後もスッキリした顔で、メダルには惜しくも届きませんでしたが、「スケートをやってて良かった」という言葉には胸を揺さぶられました。やっとトリノの呪縛から解放されたのかなとも思います。入賞おめでとう、ミキティ。

 

いよいよ、キム・ヨナ選手。

トップの重圧というものは、彼女にはないのでしょうか。余裕と自信に満ち溢れ、観る者を虜にするスケーティング。もう失敗する気が起きません。身体が勝手に動いているようにも錯覚する、音楽との一体感。終わった瞬間、スタンディングオベーションをせざるを得ない、圧巻の演技でした。そう、昨日浅田選手から感じた「圧巻」。今日は彼女のものでした。

そして、涙。

重圧はないのかと思った自分を恥じました。ないわけがない。お国柄はよく知りませんが、日本のそれよりずっと激しい国民性というイメージがあります。金メダルを取りに来て、取って帰らないと許されない。そして点差はあるとはいえ、2位につけた浅田選手に3Aという大技がある以上、金メダルにはノーミスで逃げ切るしかない。そしてこの演技。彼女の抱えてきたものが、少し理解できたような気がします。

 

そのすぐあとの浅田選手。順番が離れていれば・・・というのはついつい肩入れしてしまう日本人意識。

真央ちゃんには似合わない、とさんざん言われてきたこの重厚な『鐘』の曲。オリンピックのFPの中でも、とりわけ異質に聴こえる正統派クラシック。本当に「金メダル」のためだけに滑るなら、他の選手のようにもっと親しみやすい現代的な曲にするべきだし、現行ルールの中では無理して3Aにこだわる必要もなかったでしょう。ジャンプだけではない、さまざまな要素で加点をもらえる実力が、浅田選手には備わっている。でも彼女自身が、「3Aを3回飛ぶ」ことを命題とした。その結果、金メダルがついてくるのなら言うことはないけれど、3A-2回転より基礎点の高い3-3を含めキム・ヨナが勝つためのプログラムを練ってきたことは試合前からわかっていたし、予想つかないGOEの加点もあるだけに、4点以上離されたキム選手の得点を上回るのが困難であることは容易に想像がつきます。

結果的に、3Aは2回とも認定された。しかしその快挙も、選手の中ではわずかなミスにかき消され、悔いの残るプログラムとなってしまいました。試合後の彼女のとめどない涙は、キム・ヨナに敗れた、金メダルを取れなかった、ということよりも、自分の納得できる演技をできなかった、自分に負けた悔しさであったのでしょう。

しかし限界に挑戦し、それを見事に成し遂げた彼女の心意気を、日本国民はしかとその心に、瞼に刻みつけたことでしょう。また、時代に逆行した『鐘』という曲での、浅田真央の、浅田真央にしか創りえない見事な作品を、世界中にしらしめることができたのではないでしょうか。

 

大歓声の中、登場したロシェット選手。SPの時より落ち着いた表情をしていました。やれることをやりきるだけ。そんな覚悟が見て取れます。いつものロシェット選手らしい、精緻なジャンプとピタリと決める各要素。先日の涙から一転、満足げな笑顔が印象的でした。

大トリのプレッシャーなど微塵も感じさせない長洲未来選手の安定した滑りには驚きました。またこれからが楽しみな選手が増えました。SPの鼻血のアクシデントがなければ、もっと点数が伸びていたでしょうね。

 

表彰台に上ったメダリスト。ある者は亡き母を思い、ある者は歓喜に震え、ある者は悔いを残し。

三者三様の涙は、どれも美しくすばらしく、確かなものを観ている我々に届けてくれました。

こんなにも心打たれることがあろうとは、思いもしませんでした。

すべての選手にありったけの賛美を捧げたいと思います。

 

・・・・・・・・・・・・

まあ・・・得点については・・・。

飛んでいるジャンプの種類もわからない素人ですから、ジャッジの判定に対してどうこう言うべきではないかもしれませんが。

SP・FPをトータルしての1・2位の順位は仕方ない、妥当だと思います。が、あんなに高い点数を出す必要はないんでないかい? と思いますね。ずっこけました。あの瞬間、日本中がよしもと新喜劇になったのでは・・・。

でもって、もともと地元有利な判定が起きるであろうことは男子を観てもわかっていたのですが、SP終了時の3・4位の点差も異常ですよ。真央vsヨナの陰に隠れてあまり話題にのぼらなかったことが残念ですが。もし真央ちゃんが3A失敗・転倒でもしていたら、たぶん2・3位も入れ替わっていたのでしょうね。しかしこれはロシェットの状況を考えると、言及しづらいところではありますが・・・。ミキティのFPでのすがすがしい表情は、もう自分は表彰台に上れないかもしれないということを覚悟していたのかなとも思います。

試合後、実況アナがキムヨナの世界歴代最高点を「今の採点システムを最大限利用した・・・」と口走ったのには失笑しました。その気持ちはわかる。利用したというか、キムヨナ陣営は「今の採点システムを最大限に生かしたプログラムを作りあげてきた」と言うべきでしょうね。次々に難度の高いプログラムを組み込んでいく真央ちゃんとは対称的に、五輪で頂点を極めるため、今の採点システムでいかに高い得点を出すかという作戦を、何年もかけて練ってきたのでしょう(それでも点が高すぎという本音はさておき)。男子でいえばライサチェックと同様です。プルシェンコや浅田真央はそれを主眼としなかった。結果はその違いです。4回転コンビネーションを成功させたプル様や女子ではじめて3Aを3回成功させた真央ちゃんの偉業は、色は銀でも金メダル以上の価値がある。そう思いたいです。

最後に。3Aを飛べるのは真央ちゃんだけではないんだぞ! 「世界でただひとり」などと言うでない! 中野ゆかりんも飛べるんだ!(今季は飛ばなかったけど)

 

五輪が終わり、おそらくまたフィギュアの採点ルールは変わることでしょう。その時には、日本選手が少しでも公平に採点されるようなシステムであることを、日本人である私は、祈ってしまいます。

PR
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
さや
性別:
女性
自己紹介:
ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
ブログ内検索
バーコード
ATOM  
ATOM 
RSS  
RSS 
Copyright ©   風花の庭   All Rights Reserved
Design by MMIT  Powered by NINJA TOOLS
忍者ブログ [PR]