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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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オリンピックやいろんな大会、努力してその結果、優勝できたりできなかったり。

いろんな場面で、テレビごしに涙して。

「感動をありがとう」

 

つねづね、なんだかおかしいと思っていた。

 

興業としてお金をもらってパフォーマンスを売った相手に対して、「ありがとう」は間違っていないと思う。

でも大半のシチュエイションは、そうではないのであって。

より速く、より強く、限界を超えようと努力するのは自分のため。

家族や友人やスポンサー、ファンも含めて、その選手のうしろにはいろんな支えがあるのかもしれないけれど、アスリートが口にする「感謝」「恩返し」という言葉は一方的なものであって、決してこちらが求めている答えではない。

だから、「ありがとう」だって、選手が本当にその結果に対して求めていた返答なのかどうか、疑わしい。

一方的な感情の押し付けは良くないと思う。

ひねくれた見方なのかもしれないけど。

 

でも、自然と「ありがとう」と言いたくなる気持ちはわからないでもない。

 

中野友加里選手の引退。

トリノ、そしてバンクーバー。どうして彼女のための枠が存在しなかったのか。実力の結果なのだと受け止めるには、観ているだけのこちらにしても苦しいものがあった。

2年前の世界選手権、鮮やかなオレンジの衣装で舞ったFP『スペイン奇想曲』。着地を決めたトリプルアクセル、目にもあやなドーナツスピンで観客の喝采を浴び、予想よりも低い点数に異国にもかかわらずブーイングが噴出したあの場面は今でも忘れえない。

凛としていてかつ愛らしい『ジゼル』も好きだった。

荒川静香、村主章枝、安藤美姫、浅田真央。これだけの質の高いスケーターを相手にしながら、決して見劣りすることなく、個性を生かして存在感を示したと思う。

世界選手権で、もう一度あの滑りを観たかった。

もう二度と目にすることはできないのかと思うと、フィギュアの魅力が一気に衰えてしまうよう。

 

美しさとは何なのか、教えてくれてありがとう。

幸せな気持ちになる笑顔をありがとう。

これからの、中野友加里さんの第二の人生が、輝いたものでありますように。

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