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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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今年も12色の輝きが銀盤を鮮やかに彩ったフィギュアの祭典。
冬の到来を感じさせるとともに、いよいよシーズンが本番に入ったことに冷えた指先も熱くなります。

男子シングル。
いつも優しくやわらかい笑顔が印象的な村上大介選手。少し緊張していたでしょうか? ステップは見ている側が幸せになるような雰囲気を醸し出す稀有なスケーターだと思います。4―3を決められるようになれば、さらに見ごたえのあるプログラムになると思います。全日本では惹きこまれるような『Anniversary』を期待します。

パトリック・チャン選手はソチ以来の競技復帰ですが、他の追随を許さぬスピードとスケーティングのなめらかさは健在。休養明けを感じさせない王者の風格漂う彼の復活で、男子シングルの争いはますます激しさを増しています。

昨季までジュニアだったとは思えない金博洋選手の4ルッツは圧巻でした。まだ随所に甘さはありますが、スタミナや表現力をつけたらどこまで点数を伸ばすのか怖いくらいです。緊張していたのかジャンプはすべて成功できませんでしたが、シニアの舞台はまだ始まったばかり。絶対王者・羽生結弦の闘志に火をつけ、四回転時代にさらなる一石を投じた新星の、この先の成長を楽しみにしたいと思います。

一年一年、まるで出世魚のように姿かたちを変えていく宇野昌磨選手の成長ぶり。シニア初年の今季は、かわいい見た目からは想像つかない大人の演技を魅せてくれました。3アクセルの密度の濃さと四回転の質の高さに加え、『トゥーランドット』の最後の見せ場、クリムキンイーグルの盛り上がり。高橋大輔が引退し情感に満ちた演技を見せてくれる選手の不在を嘆いていましたが、ここに新たな輝きの誕生をしっかり示してくれました。全日本の熱い戦いがますます楽しみになりました。

羽生結弦選手はどこまで高みを目指し、そして登頂を果たすのか。そのゆく先はまぶしすぎて直視できない。こんな完璧なフィギュアスケートは見たことがありません。助走、ジャンプ、着地、スピン、ステップ、振り付けのすべての動作に、まるで音楽が合わせてきたかのような曲との調和。映画で安倍晴明を演じた狂言師・野村萬斎が口にしたように、ひとつの「型」を見ているようでした。あらゆる伝統芸能の世界で、後世に引き継がれてきた「型」。フィギュアというひとつの芸術にも通じているという言葉を、まだ21歳の青年が真摯に受け止め、それを体現したという事実もまた衝撃的でした。彼のフィギュアはそこまで達したのです。これから彼が追うものは彼自身の描く理想。あとの者は彼の背中を無我夢中で追いかけていくのみ。それが今の現実。競技界は、これからどんな様相を見せるのでしょうか。

ハビエル・フェルナンデス選手は地元の熱狂的な後押しを受けましたが、ショートでは羽生結弦の最高得点の興奮冷めやらぬ中、精神的に落ち着かなかったでしょうか。もったいない四回転の失敗でした。フェルナンデスでしか魅せられない情熱あふれるフラメンコの舞いと、髭を剃り落としてコミカルに演じる映画の場面が目に浮かぶようなフリー。男子髄一の男性的力強さがどちらの曲調にも不思議にマッチする、世界屈指のジャンパーでありアクターであるスケーターの演技は見るものを最後まで惹きつけてやみません。フリーの後、羽生結弦にひれ伏しておどける姿もふたりの関係性を物語る一場面でした。今回は水を開けられたものの、これからも男子シングル界の先頭に立つ存在には違いありません。ますますの切磋琢磨を期待します。

一方、女子シングル。
アシュリー・ワグナー選手のベテランらしい落ち着きと円熟味はますます深みを増しましたが、ショートとフリー両方をなかなか揃えられずもったいない印象です。それでも濃密なつなぎに惹きこまれ、まるで一本の短編映画を観賞したような満足感がありました。

エレーナ・ラジオノワ選手のまるで春の空を舞う妖精のような軽やかさは成長期という壁を迎えても変わりません。完成度の高さにも感嘆します。シニア三年目を迎え、年齢にはそぐわぬ落ち着きも備わり、人材豊富なロシア代表の座を一歩リードする存在です。妖精のようなイメージが定着しないうちに、次は重厚な演技も見てみたいと思わせる、今後が楽しみな若手選手です。

浅田真央選手。休養明けのシーズンで最高難度のプログラムに挑戦するあたりが、彼女の尊敬すべきアスリート精神です。『素敵なあなた』の誘惑の眼差し、『蝶々夫人』の哀しみの瞳、いずれも多彩な表情を持ち得るベテランならではの持ち味。しかし演技からはシーズン初戦にはなかった重たさを感じました。顔色も冴えないようでした。心からの笑顔は完璧な演技ができるまでのお預けとなりましたが、ファンはただそれを待つだけです。人気は衰えぬどころか復帰イヤーとあって加熱していますが、下の層も着実に育っていることですし、彼女には課せられるものも背負うべきものもありません。ただ自分の思う道を進んでほしい。ファンが望むのはそれだけです。

宮原知子選手は、技術力も表現力も天性以上にひたすら努力することで極めたひたむきな人。「努力は不可能を可能にする」という言葉を思いださせてくれる、現代の10代とは思えない真面目さが魅せる情熱のフラメンコ『ファイヤーダンス』と安らぎの『ため息』。柔軟な若さはどんどん成長曲線を描き、さまざまな要素を吸収していきます。もっと豊富な引き出しを見てみたい、今から来シーズンのプログラムが楽しみな選手です。

エフゲーニャ・メドベデワ選手は人材の宝庫・ロシアから参戦した新星。ロシアらしい芸術性と完成度の高い技術力、まるでバレエを鑑賞しているかのように演技に陶酔してしまいます。毎年のように新戦力が表彰台に上るロシア勢。いったいどれ程の才能が下にあふれているのだろうか…。

グレーシー・ゴールド選手がまだ20歳という事実には改めて驚きましたが、北米の伝統を受け継ぐ高い技術力が持ち味。繊細さと力強さに加え、リンク映えするビジュアルも魅力です。怪我のため棄権した昨年の悔しさを晴らしたかったところですが、惜しかった。今までの彼女のイメージにはなかった『火の鳥』は、完璧に舞うところを見てみたいと思わせるプログラムです。次に期待。

異次元の極地へ足を踏み入れた瞬間と、新たな息吹を目のあたりにした3日間でした。

さあ、クリスマスが終わる頃にはいよいよ全日本選手権。
2015年のラストを飾る彩りは、果たして何色なのでしょう。




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