『64』
同じNHKで放送された横山秀夫原作『クライマーズ・ハイ』は質の高いドラマでしたが、今回もそれにひけをとらない非常に重厚で見ごたえのある作品でした。昭和最後の殺人事件と警察署内での確執、記者クラブと広報の丁々発止のやりとり、すべてが複雑に絡み合うストーリーをよくこんなにうまく全5回にまとめたなという感想です。また、メリハリの効いた井上剛の演出は私好みなのかもしれません。クライマックスにおいて、新たな誘拐事件が昭和64年の事件とシンクロしていく中での記者会見場の昂揚感と捜査現場の緊張感、まるで映画を見ているかのような満足感でした。
主演のピエール瀧といい、渋い脇役の面々といい、NHKならではのキャスティングも見事。周囲と較べるとどうしても見劣りしてしまう山本美月も質を損なうほどではありませんでした。中でも被害者の父親である段田安則は、スーツケースを川に投げいれる場面での痛切な叫びと時を経てもなお満ちる哀しみ、そして一抹の狂気。胸に迫る演技でした。
映画版の主役は佐藤浩市で前後編の二部作のようです。そしてドラマで永山絢斗演じた新聞記者役が兄の瑛太というのもなかなか興味深いキャスティングです。
『ボクの妻と結婚してください。』
マッキーの新曲が主題歌と知ってそれだけで見始めたドラマだったのですが、なかなか良作でした。ウッチャンがこんなにハマるとは思いませんでした。出演者は最小限に抑えられていましたが、子役に至るまで丁寧な役作りで細かい所作やアドリブらしきやりとりも見ものでした。三村家の装飾も修治の趣味という設定なのか、凝りに凝っていました。第一印象は「掃除大変そうだなあ…」という現実的なものでしたが。
当初はシチュエーションコメディのように観客の笑い声の入る演出が鼻につきましたが、修治の悲しみがクローズアップされるにつれてそれもなくなっていったので、自然と物語に入りこめるようになりました。
家族みんなでバラエティーを見ながら瞼を閉じた修治。その穏やかな微笑みを見てすべてを悟る彩子。みんなで笑って空を仰ぐお葬式。すべてを整えて、あとは「いかに死ぬか」を考えていた修治にふさわしい、旅立ちの時でした。青空に溶けていくマッキーの歌声に、涙を禁じ得ない最終回でした。
『ようこそ、わが家へ』
ラスト2話まではドキドキで、最終回は思わずリアルタイムで視聴。
犯人はひとりではないのだろうという予想どおり、家族の知らぬ間に買っていた周囲の人びとの小さな悪意の重なりにより恐怖に陥れられた倉田家。元凶であろうニット帽の男はいったい誰なのか、前回のラストの明日香の意味深なセリフの真意は何なのか、驚くべきどんでん返しが待っているのだろう…と期待していたのですが。
いやー、肩透かしでした。
ニット帽の役者は、櫻井くんだ、いや大野くんだ、というネットの「嵐メンバー説」が本当ならばチョットなあ…と不安ではありましたが、まさかの「猿之助かーい!」。発端となった明日香との関係も西沢-平井と同じく情がらみの逆恨みという二番煎じですし。あっさり頭下げて解決するし。ニット帽姿があまり似合ってなかったし。
明日香の独白いわく「復讐」というにはあまりにも陳腐すぎる嫌がらせは、とってつけた感満載でゲンナリしました。オリジナルキャラなうえに、最終回までひっぱろうひっぱろうという制作陣の思惑が、原作の良さを損なっていたようにも思います。
ただ、原作は父親が主人公なだけあって、ナカノ電子部品パートは充実していました。竹中直人のイヤラシさっぷりといい、西沢のきっぷの良さといい、最後の倉田部長の「倍返し」と鮮やかな去り方といい、わざわざ健太を主人公に変更せずとも、このままでよかったのでは…と思いました。相葉ちゃんありきの企画だったのでしょうが。
最終回において、グータッチに参加するガスのおててが悶えるほどにかわいかったことが、唯一の見どころでした。
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