ヤスオーのシネマ坊主・2014~
鍵泥棒のメソッド 9点
内田けんじの脚本はさすがという感じですね。あちこちに貼った伏線が最後見事にすべて回収されています。ただ、それだけだとこの映画は「その時は楽しめた」とか僕に適当に言われて6、7点ぐらいです。この映画が9点の理由は、この映画は表面上は「コメディ」であり「いつもの内田けんじのラストのどんでん返しを楽しむ映画」ですが、「ラブストーリー」という映画のテーマがしっかりしているところです。僕は以前この監督の「運命じゃない人」を見て、その時は脚本の巧みさを楽しめましたが今はストーリーなんかまったく記憶がないです(笑)。しかしこの映画はラブストーリーというテーマがしっかりしているので、たぶん時間がたってもストーリーを憶えていると思います。
そのラブストーリーの主人公である香川照之と広末涼子の演技もいいですね。香川照之の記憶を取り戻してスーツに戻った瞬間の演技なんかはさすがです。広末涼子もこの映画の役はハマっていましたね。コメディでちょっとトボけた役は向いているのでしょう。
闇の列車、光の旅 6点
まずギャングの怖さ、殺伐とした町を描くという点では「シティ・オブ・ゴッド」の方が上です。ラブストーリーとして見ると主人公とヒロインの心理描写が少し浅くて、イマイチ感情移入できなかったかなあという感じです。ストーリー展開も予定調和です。この映画で何か他の映画で勝っている点といえば映像ぐらいですかね。ロードムービーでもあるので貨物列車からの風景は重要なところでしょうし。
カラスの親指 5点
まず尺が長いのがマイナスですね。このテの映画はラストでグワッと点数があがる可能性を秘めているのでしょうが、親指である親ガラスの演技力がなさすぎてちょっとだらけた雰囲気になりました。サスペンスではなくてコメディとして見るとラストもほのぼのしているのでよいかもしれませんが、コメディとして見ても途中にそんなに笑うとこもないですしそんなに良い映画ではないでしょう。
テルマエ・ロマエ 6点
退屈でもなく、盛り上がるわけでもなく、脚本自体は可もなく不可もなくですが、設定が奇抜で面白いので普通に楽しめました。まあだから原作を書いた漫画家の着想が良くて、それをなんとかそれなりにまとめて映画にできたからそれなりに見れる作品になったということでしょう。主演が阿部寛じゃなかったらもうちょっと点数は低いかもしれません。
Mr.インクレディブル 8点
さすがディズニーという感じで、完成度の高い映画です。家族それぞれのキャラクターも魅力的ですし、ストーリーのテンポもいいし、ケチをつけるとこはひとつもありません。ただまあモンスターズインクのようにラストで一つ突き抜けるようなものはなかったですね。
ジャンパー 6点
日曜洋画劇場か何かで吹き替えでやっていて、たまたまタイミングが合って見たらそれなりに楽しめる映画です。その時は楽しめますがすぐに忘れる映画の典型ですね。世界観に深みがないからでしょう。「パラディン」の存在が意味不明でしたし。
月に囚われた男 6点
そんなにびっくりするラストでもなく、かといってそんなに風呂敷を広げているわけでもないから腹も立たない、小さくまとまった映画です。僕よりもっとSF映画をたくさん見ている人ならもうちょっと色々思うところがあるのかもしれませんが、僕はSFだけでなく映画自体そんなに見ないので、普通だなあという印象です。
風立ちぬ 9点
この映画は、主人公の堀越二郎が飛行機のことばかり考えている、病人の横でたばこを吸うような自己中な人間で好きになれないという批判が多いです。まあ確かにその通りなんですが、二郎はラスト前に設計した飛行機の飛行テストが大成功したとき、遠くの山の方を見てうかぬ顔をしています(ここはこの映画の一番のキモだと思うので、答えを言わずに、ここに注目しているぞとだけさや氏に言いました)。ああ、結局そっちなんだな、という何ともいえない哀しい感情になりました。ディズニー映画なら飛行機が上手く飛んで恋人の病気も治るでしょう。凡庸な日本映画なら飛行テストが成功したらとりあえず主人公は喜び、その後死んでしまった恋人の墓に行ってテストの成功を伝えながら泣いているでしょう。さすが宮崎駿ですね。まあ、僕は、飛行機設計という自分の夢にとことん実直な二郎も好きですが。
デビル(2010年作品) 6点
シャマランという人のアイデアを若手が監督するというプロジェクトの第一弾らしいです。僕はシャマランという人の作品は全部観ていたのですが、ついにエアベンダーは我慢できなくて途中で観るのをやめました。それに比べてこの映画は、ハッタリを効かせることだけが上手いかつてのシャマランらしさがあって良かったです。まあ彼が監督なわけではないのですが。結末は相変わらずポカーンとして終わりですが、それでいいのです。
凶悪 7点
ピエール瀧とリリー・フランキーが、電気コードやスタンガンでじじいをいじめて喜んでいるシーンがとにかくインパクトがありましたね。子どものようにはしゃぐリリー・フランキーの演技にはちょっと感動すらしてしまいました。ただ、山田孝之が演じる雑誌記者は、彼の内面も周辺の人間関係も描写がすべてベタで中途半端でしたね。女上司とか認知症の母親とか嫁とかむしろ出さなくてもよかったです。この映画はまったく違ったタイプの2人の悪人の凶悪っぷりを見る映画だと思いますから。
脳内ニューヨーク 2点
ストーリーは理論的には説明できないしろものですが、作り手の言いたいことはわかりますし、こういう映画を評価する人がいるのはわかりますが、僕はこういう独りよがりの映画は好きではないですね。この監督は客を楽しませるとかそんなことよりも、自分は映画でこんな表現ができるんだ、おれすごいだろみたいなことをいいたいのでしょう。
リトル・ランボーズ 7点
これは脳内ニューヨークとはまったく違う、典型的な小さくまとまった佳作です。スタンドバイミーように観た後に残るなんともいえない感情はないですが、そこそこ面白いのではないでしょうか。悪ガキともやしっ子が出てくるのですが、もやしっ子の方の人物描写がやや弱かったですかね。ラストもベタベタでした。
トロール・ハンター 3点
面白くないですね。「こんなに堂々と出てくるトロールにみんな気づかないわけないだろ。」というバカバカしい設定に別にケチをつける気はないです。むしろこんな設定で長編映画を作ろうという意欲は買います。ただ、登場人物に感情移入もできないし、ストーリー自体は面白くないし、緊迫感もメリハリもないし、まあ、純粋に見てて面白くないとしか言えないですね。ノルウェーにはこんな映画もあるんだなあということだけはわかりました。
さんかく 7点
登場人物がみな一見おかしい人達なんですが、よく考えたらそんなにおかしくもないぞ、というか自分がまさにこいつ(男は高岡蒼甫、女は田畑智子)と同じじゃないかと思わせる映画です。ほとんどの男はいいかっこしいで浮気もするし、ほとんどの女はダメ男を好きになるし感情で動く生き物だし。共感しやすいという点でこの映画の評価は高いんでしょう。高岡蒼甫と田畑智子の演技も良かったですしね。
クラウドアトラス 7点
面白いんですけどね、とにかく長い。この映画はテーマは壮大なんですが、たぶん娯楽作だと思います。人種問題、ゲイ、原発、宗教、まあ挙げていけばきりがないぐらい色々な問題を描いていますが、この映画は娯楽作だと言い切れます。娯楽作にしては長すぎます。あと、やはり韓国ソウルを舞台にするのはやめてほしかったですね。アジアの都会を描くのに一番ふさわしい都市は普通に考えたら東京でしょう。そういうところを踏まえてこの点数です。
チャイルドコール 5点
登場人物がみんなメンヘラに思えるので誰の視点で見たらいいのかがよくわからないし、ストーリーもどこまでが真実でどこまでが妄想かもわからないし、まあそういう何が真実かわからないなかで伝えたいものは伝わってくるので、悪い映画ではないのですが、見終わった後何かスッキリしないですね。今までにあまり見たことがないタイプの映画ですが、登場人物が少なくて世界観も小さいですし、佳作といったところでしょう。
ライフ・オブ・パイ 6点
最後までちゃんと見るとなかなか考えさせられる映画ですね。しかし序盤の退屈さはいかんともしがたくて、さやさんは寝てましたよ(笑)。あと、僕が神や宗教にまったく興味がないのも、おそらくいい映画であろうこの作品の評価が6点の理由です。
テッド 5点
この映画はコメディなんですが、アメリカが好きで好きで、アメリカの大衆文化に精通してる人じゃないとたぶん笑えないですね。シュールな笑いが好きな日本人の僕はそんなに面白くなかったですから。後半はわりとシリアスなストーリーになります。つまらなくはないんですけど、展開は非常にベタなので、あえて見ないといけない映画でもないですね。
きっと、うまくいく 9点
映画ってのは時間もとられるし、集中せな話わからんようなるし、結果的につまらなくて時間を無駄にすることも多いしで、苦行だと思うこともあるんですが、こういう映画を観ると、映画はやっぱり面白いなあと思いますね。テーマ自体ありきたりですしストーリーも分かりやすいので、世間の評価が高いのも納得です。ただ、やはり僕はインド映画特有のダンスのシーンとかはダメですね。そのシーンはスマホのゲームしてましたから。だから1点減って9点です。
真夏の方程式 3点
前作の「容疑者Xの献身」より「真夏の方程式」の方が映画としてはよくできていると思います。しかしヤフー映画の評価の平均は「真夏の方程式」の方が5点満点で0.5点ぐらい低いです。僕もこの点数と同じく「容疑者Xの献身」の方が好きです。同じ監督、同じ原作作家、脚本家、同じ主演俳優なんですけどね。一番大きいのは堤真一の演技、あとはまあヒロインの変更などから垣間見える色々な裏事情でしょうね。
ブレス 6点
今思えば、デビュー作の「鰐」という映画でこの監督は描きたいものをすべて描いていますね。デビュー作らしく荒っぽい映画ですけど。
それに比べたらこの映画はよくまとまっています。ただ、この人はとんでもない感性の持ち主ですが、あとの映画も基本的なテーマは「鰐」とそんなに変わりません。
だからこの人の映画ははじめに観た映画の方が強烈なインパクトを与えます。僕はけっこう観ているので、「ブレス」を観てもそんなにインパクトは感じなかったですね。
カラフル 8点
・主人公とプラプラの2人の声優が本当にヘタ。この2人の起用理由は見えない力ですかね。
・玉電の描写にここまで時間と労力を使う意味も不明。電車とストーリー関係なし。
上記2点で点数が2点減りましたが、それ以外は素晴らしいと思います。この監督は野球で例えるとストレートしか投げられないんですが、球速があり、球威もあります。ただ、ストレートしか投げれないゆえに、「河童のクゥと夏休み」のようにバタくさすぎて好きになれない映画もあります。
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