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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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文庫本『源氏物語』もようよう5巻目に入りました。読み始めるとやめられぬ。

源氏が須磨・明石とさすらう中明石の君と出会い、姫が産まれますが、やがてその子は二条院の紫の上のもとで育てられることになります。

母として苦悩する明石。姫を手放したくはない、しかし身分がものを言う時代。卑しいわが身のもとで育つよりは・・・と苦渋の決断を下します。

作者自身が母親であったからでしょうか。若草の君や夕霧、明石の姫君など、幼い子の描写は愛情あふれ、ざれてまつわる様子が目に浮かぶようです。

 

古文を習ううえで本当に苦労したのが、敬語。

現代語でさえ厄介なのに、これが主語のない古文となるといったい誰が誰に対して使っているのやら、最初はさっぱり。なんとなくニュアンスで解いたら、あとで現代語訳を見て「えっ、違うの?」とガックリすることはざらです。『源氏』では登場人物皆兄弟で高貴な方々ばかりなので、もう誰が誰やら。註釈万歳。

ただ、明石の君は本人が嘆くように身分が低いので、敬語がないのはわかります。

それが、明石の姫にまつわる描写になると、敬語が使われていることに今更気づきました。姫君にはいずれ国母となるお告げが下っていることはすでに読者には知らされているのですが、つまり明石の君は将来的に帝の祖母となる御方のわけで、語り部も読者も、思わずそういう目(将来の国母とその生みの親)で見てしまうせいでしょうか。ところが姫君がいなくなるとまた並みの人扱いに戻るわけです。

現代語訳だと気づかないところも、熱心に原文を読むといろいろ発見があります。

昔の日本語は面白いな、と思います。

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