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『カーネーション』
いやぁ・・・朝ドラにしてはショッキングな展開ですなあ・・・。
『セカンドバージン』や『カレ、夫、男友達』をはじめ、基本ドラマの恋愛は現実の倫理観をすっとばしたところで展開するものだと思っていたので、別に抵抗はなかったのですが、糸子のこれに関しては、「・・・」でした。
朝ドラだからというのもありますし、糸ちゃんの人生を幼少期から観てきているだけに、言ってみれば小さい頃からの仲良しが不倫しているところを見てしまったような感じでしょうか。恵さんが「気色の悪い!」と言い放ちましたが、まさにその感覚です。糸ちゃんかわいそう、とは微塵も思いませんでした。「人のもんやのに・・・」と涙を流すところまでは非常に美しかったのですが、しょせん不倫は不倫、キレイな不倫なんてありませんし。
主人公である以上、糸ちゃんに感情移入しなければいけないはずなのに(しかもドラマはまだ続くのに)、挑戦的な描き方だなあ、と思いました。
「組合長が若干けしかけたフシがある」「恵さんが喫茶店で大泣きするから噂が立った」「自分から辞めると断言しないズルイ周防」「勝さんの顔見られますか、て、その人も浮気してたんやけど」など、主人公に反論の余地を残しつつ、しかし言い訳せず罪を背負うと断言させるところなどは、糸子らしいっちゃらしいのですが、「周防さんは近づいてこない」「見つめ合うだけで幸せ♪」的なプラトニックラブを示唆しておきながら、「罪を背負うってことは不倫関係?」「自然に抱き合ってるけど、何や知らんいつの間にかデキてんねやん」と昼夜のドラマに慣れ切った身としては消化不良の感もなきにしもあらずです。これが朝ドラの限界なのでしょうか。まあ、不貞行為にあたるかどうかはともかくとして、妻子ある男性を好きになって近くにいられるからと店で雇い、誰もいないところでハグをする、また妻子ある身で女性を好きになり近づきたい一心で店に雇われ、ハグされたらハグし返すのは、充分に良心の呵責に値する行為だとは思いますけれど。
しかし、周防はズルイ男ですね。告白も糸子からだし、糸子は好きだけれど奥さんは見捨てられない。なのに雇ってほしいといけしゃあしゃあと頼みに来て、抱きつくのも糸子からで抵抗せず抱き返す。「辞めましょうか」じゃないだろ、「辞めます」だろう! と受け身の姿勢にイライラしっぱなし。これも本来なら同情すべき主人公の恋を応援できない理由です。あまり男性として魅力的ではないけれど、糸子が惚れるのは、ま、相性なのかなと思います。『源氏物語』にも、女は従順で可愛らしいのがよし、でも仕事はできなきゃダメと言っていますし。男女をとりかえればまんま周防だな。糸子はお父ちゃん気質ですし。
同じ脚本家が描いた『ジョゼと虎と魚たち』での妻夫木聡演じた主人公も優柔不断でしたが、恋愛をキレイごとに描かずにひとくせピリリと効かせているあたりが似ています。そういえば彼も九州男児だったが・・・。
本来、恋とは人間の原始的な本能ですから、倫理観をよそに恋心が産まれるのは自然なことなのでしょうが、そこは人間ですから、自制心が働くのもこれまたあたりまえだと思うのです。しかし箍が外れたら、人間は欲求に忠実な野生に戻り、倫理観は吹っ飛んでしまう。糸子は店主としての立場を建前にもっともらしいことを論じて自分の恋を正当化しようとしていますが、結局は己の欲望を優先する理性を忘れた愚行にしか見えません。ただそれを糾弾する周囲とて、洋装店は糸子の夢だったからという建前をもとに糸子に店主、家長としてすべての責任を負わせ、糸子が女としての幸せ、青春のすべてを棒に振るのを傍観してきたのですから、今更それを盾に詰るのもどうかなと観る者に思わせるあたり、まるで「罪なき者まず石を擲て」とイエスが言ったヨハネの福音書に出てくるワンシーンのような、うまい演出だなと思いました。
ふたりの恋はじき終わりを告げるのでしょう。周防の妻は長崎のピカの毒で病の床にある、というのが鍵になりそうですが、いったいどのようなオチをつけるのでしょうか。
そういえば、「朝ドラで不倫とは何事か!」という批判を避けるかのごときタイミングで、主役交替が発表されました。尾野真千子の糸ちゃんに魅せられた身としてはショックですね・・・。最初から知っていれば受け容れられたのでしょうが、ちょっとなー。ま、夏木マリの好演を期待します。