そろえにそろえた役者のほとんどを死なせてしまった1作目から、どのように続編が作られるのか期待していましたが、今回も芸達者ぞろいの俳優陣が火花を散らせて目の離せぬ展開となりました。
「全員悪人」のキャッチフレーズのとおり、今回も悪人どもが悪行の数々をくり広げます。中でも小日向文世と加瀬亮の悪人っぷりは際立っていました。むしろ悪すぎて小物感までただよっていました。加瀬亮の額に青筋立てて感情を昂らせる姿は、『SPEC』の瀬文を彷彿とさせました。名だたる悪人の中のひとりとして静かな存在感を発揮していた一作目と違い、今回はトップに近い位置で権力をふりかざしギラギラした野心を隠そうともせず、その勢いにやや押されぎみに見えた三浦友和とは対照的で、その過剰な演技が少し浮いてしまったかなという気がします。
一作目の登場人物がほとんど死んでしまっていたため、新キャストも話題を呼びました。若手の中でも演技派として名高い新井浩文と桐谷健太。さぞかしヤクザ組織の期待枠として活躍を見せてくれるのだろうと思っていたら、ただのチンピラ役でたいした見せ場もなくあっけなく殺されてしまいました。なんてもったいない…。
それよりさらに贅沢な使い方であったのが高橋克典。途中まで気づかないくらいセリフもなければアップもない! それでも出たいと言わしめる北野監督の大物感です。
椎名桔平に代わる立ち位置であったのかもしれない松重豊ですが、この役柄が必要であったのかどうか少し疑問です。キャラクターも存在意義もこれといった見せ場もないままラストになってしまいました。
監督が主演を兼ねるとおいしいところをなにかと持って行きがちですが、この作品においても例外ではなく、俳優ビートたけしが人情と冷酷さをあわせもつ人間くさいヤクザを演じ真の勝者としてラストを飾ります。
が、これは一作目でも感じたことでありますが、ビートたけしの演技がいかんせん劣っており、見せ場のはずなのにそこだけ張りつめた空気が弛緩してしまいました。たけしが俳優として駄目なわけではないのでしょうが、周囲が周囲だけに、見劣りするのは避けられません。しかし主役がまた別の名優であったなら、いくら北野武監督作品であったとしても見ようという気になったのかどうかは疑問です。名だたる俳優たちが名演技で迫力あるヤクザの抗争を描いたいわば異世界のような出来事を、こちら闇社会とは無縁の娑婆と結びつけたのが、親しみのある芸人ビートたけしの稚拙な演技であったのかもしれません。
総括としては、一作目のほうが見ごたえがあったかな、という感想です。
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