さあ、いよいよ2016年お正月の〆を飾る箱根駅伝、109.6キロのスタートです。
《6区》
1年生が山を下る青学大を追う東洋大、勝負のカギは6区を走る口町選手の出来にかかっています。何かが起こるならここ、と両校の監督も口を揃える山下り。一斉スタートは13チーム。シード権の行方も箱根の坂に委ねられます。青学大・小野田選手はひとり旅にも臆せず快調な走り。沿道の知人でも見つけたのか笑顔で手を振る余裕もあります。追えども追えども離される東洋大。昨年と同じ展開です。青学大、強し。
日本大が1分近い差をはね返し4位に浮上しますが早稲田大も負けていません。一斉スタートの日体大もぐんぐん前へ出てきます。半分を超えると順位が激しく変動していき、整理も大変です。
1年生とは思えない強心臓の小野田選手は、区間記録と同タイムで山を下りきりました。7区にはエース格の小椋選手が控える磐石の態勢。小野田選手も幾分楽に走れたでしょうし、他校からすればお手上げのエントリー構成です。他校の淡い期待は見事に霧散。
日体大・秋山選手がその小野田選手を超えるペースで日本大・早稲田大を抜き、見た目の順位を4位にあげました。実際の順位もシード圏内に押し上げます。コース変更前の千葉選手のタイムよりも早い見事な区間新記録。山下りのスペシャリストがまたひとり誕生しました。
東洋大は4分15秒差に離されてしまいました。そのくらい小野田選手が想像以上に驚異的な走りをしたということです。
5区で失速した中央学院大もいつの間にやらシード圏内に上がってきました。こちらも1年生がいい走りです。
初の箱根が山下りの駒澤大・宮下選手は少し苦しい走りとなり、青学大・東洋大と差を開けられてしまいました。
《7区》
四年連続7区を走る青学大・小椋選手。完全独走態勢に入りますが、落ち着いてレースに集中しています。後方の差が縮まる様子はありません。
残り4キロで小椋選手の顔が歪みました。正月とは思えない強い陽ざしに、かなり気温が高くなっています。あと少し、粘ってほしい。
中央学院大が積極的に前へ出ています。実際の順位は10位、シード権を守るため、安全圏へあと1分は縮めたいところ。
小椋選手は力を振り絞って平塚へ。苦しみながらも区間賞を取りました。
続く東洋大はトップと約5分差。
三年連続7区を走り昨年の服部弾選手とのデッドヒートも記憶に新しい駒澤大・西山選手は、大八木監督に檄を飛ばされながら襷リレー。東洋とは4分差。
日体大・中央学院大はシード争いに向けていい順位を保っています。明治大も見た目の順位を上げてきましたが、ここからシードを取るには苦しい往路のタイム差です。
上武大が繰り上げスタート。おぼつかない足取りでそれでも中継所へ向かった1年生の田中選手は辛い箱根デビューになってしまいました。上武大のシード権獲得は来年に持ち越しですが、花田監督の次の挑戦に期待します。
《8区》
8区をまかされた青学大・下田選手も実力者。もともと今回のメンバーが最強と言われていた青学大の布陣は磐石です。連覇へ視界をさえぎるものはありません。
駒澤大は馬場選手がエントリーされました。昨年5区の山登りでは低体温症で失速し、一時は陸上をやめることも考えたという経験を経て、再び箱根路に戻ってきたランナー。大八木監督の思いもきっと特別でしょう。馬場選手は安定した走りを見せています。
日本大が順位を落とし、シード権争いが混沌としてきました。一時はタイムの落ちた山梨学院大も持ち直してきました。東海大もふんばりどころ。
快調に飛ばし、歴代3位のタイムで戸塚中継所を通過した青学大に、7分差をつけられた東洋大。その2分後、笑顔で飛び込んだのは駒澤大・馬場選手。そのタイムは区間2位。万感の思いを感じた集大成のゴールでした。
日体大・中央学院大が競るように中継所へ。シードへの執念を感じます。学生連合も今年はいい成績を残せそうです。山梨学院大・帝京大・日本大は、これからが見えない敵との戦いです。
戸塚では5チームが繰り上げスタートとなりました。初出場の東京国際大はシードも狙える位置にいましたが、大幅に順位を落としてしまいました。
《9区》
青学大がめっきり画面に映らなくなりました。あまりに独走だとこうなる…。
東洋大・駒澤大・早稲田大あたりもますます触れられなくなりました。見どころはシード争いに絞られます。
しかし青学大の全員区間記録ばりのすさまじい快走っぷり。皆自信を持って走っているのが伝わります。中村選手は最後疲れていたものの、それでも優位性は変わりません。スタートから一度もトップを明け渡すことなく、あとは最上級生のアンカーに託します。追えども追えども追いつけない東洋大の悲愴感とは対照的です。
駒澤大は馬場選手の頑張りもあり、東洋大とタイム差を詰めてきました。
シード争いに目を移すと、日本大が離されてきました。しかも、繰り上げ時間も迫ってきています。中央学院大・海老澤剛選手も最後は懸命の走り。鶴見中継所の長い直線で、襷を取ることすら忘れてしまうほど朦朧としていたのでしょう。運営管理車からの「よく頑張った!」という監督の声は彼に届いていたでしょうか。
東海大が5位に上がりました。明治大も伝統校の意地を感じる12位の襷リレー。神奈川大はわずか数秒、目の前で繰り上げスタートになってしまいました。無情な箱根駅伝のひとつの姿でもあります。
《10区》
連覇へ向け順調にゴールを目指す青学大。渡邉選手のペースは一貫して落ち着いています。原監督も運営管理車から冷静に声をかけ続けています。
10位争いに焦点を合わせると、帝京大が逃げ日本大が追う展開。その差は1分。強い陽ざしですので脱水症状に気をつけながら、見えない敵を追いたいところ。
順天堂大、東海大は安定したタイムを刻みシード権を確実なものとしました。山梨学院大も安全圏へ向けて慎重かつ攻めの走り。
最後にちょっとコースを間違えかけた渡邉選手、名を呼びながら待つチームメイトからは見えていなかったようなので良かったですね? 誇らしげなガッツポーズでゴールイン。いつの間にか先回りしていた原監督、重そうな胴上げでした。
東洋大・渡邊選手は4年生で初の箱根。一歩一歩踏みしめ走っているように見えました。ゴール前、酒井監督からは「笑顔でゴールしよう」と声がかかったように聞こえましたが、渡邊選手の表情は固いままで、2位という結果にチームとして満足していないことが読み取れました。
3位は大八木節に背を押され、苦しみながらも懸命にゴールを目指した駒澤大・中村選手。
4位は急なエントリー変更で山を下った佐藤選手の頑張りと9区の井戸選手の区間賞で上位を守った早稲田大。以下、東海大、順天堂大が続きます。
往路13位の日体大、14位の中央学院大が復路で見事な追い上げを見せ、シード権を獲得。山梨学院大も往路の貯金を守り切りました。そして最後の椅子は予選会組の帝京大に。同じく予選会組の日本大は、またもシード権を得ることはできませんでした。
《総括》
青学大が1区からトップを守り続け、「完全優勝」で連覇を果たした今年の箱根駅伝。
昨年の初優勝に浮き足立ってもおかしくないチームを、原監督が見事にコントロールしてここまで来ました。「ワクワク大作戦」に続く「ハッピー大作戦」は大成功。一歩間違えれば批判につながりかねない発言を見事に実行に移し結果として実らせた原監督の手腕には脱帽です。インタビューで冗談を振りまく選手たちを見るにつけても、他チームとは異なるカラーを打ち立てた原監督の人望の厚さを感じます。
また、監督は「全日本大学駅伝に敗れたことがひとつの分岐点となった」と語っていました。勝ち続けることの難しさは監督がいちばんよく理解しているはず。久保田・神野・小椋選手が抜けても一色選手らが残る来年、次はどんな作戦が原監督の口から飛び出すか。完全に追われる立場になった青学がどんな走りを見せてくれるのか、楽しみです。
2区から盛り返し、2位の座を譲らなかった東洋大。「その一秒をけずり出せ」のスローガンは今年も健在でした。優勝には届かずとも、柏原・設楽兄弟という大エースが抜けても常勝軍団として存在感を示し続ける東洋大の歴史に、またひとつ輝かしい成績が残されました。今年も服部勇選手が抜けますが、東洋大は変わらぬ強さを見せてくれるはずです。
核となる選手がおらずとも、常に優勝争いに名乗りをあげ、頂上へ挑み続ける駒澤大。大八木監督の挑戦がまたここから始まります。来年はどんな大八木節を聞かせてくれるのでしょう。
有力選手が抜けた今年の明治大でしたが、ついにシードを失ってしまいました。予選会から始まる来年の箱根。未来は西監督にゆだねられました。伝統校のプライドを見せてほしいと思います。
今春、有力選手が多く東海大に入学すると聞きました。2年後、3年後の箱根は東海旋風が吹き荒れるかもしれません。さしあたっては、出雲から始まる今年の三大駅伝。三冠を目指す青学大に、他校はどんな包囲網を敷いてくるのか。三冠を見てみたいような、粉砕してほしいような。
各校の戦いは、もう始まっているのかもしれません。
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