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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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「転んでも立ち上がらないことが恥なのだ」

 

地面に這いつくばって泥にまみれて、それでも立ち上がる勇気を持つこと。それが人の生きること。

だけど、口にできるほど容易ではない。

このままでもいいではないか、と思う。

逃げることを是とする自分がいる。

逃げるほうが楽だから。

 

素晴らしい活躍を目の当たりにして拍手を送りつつ、

アスリートの強さはどこにあるのだろう、と考える。

競技が好きだから? 目標が高いから? それとももう生活のすべてだから?

答えは人によってさまざまなのだろうけど、

誰もが順風満帆な競技人生を送ってきたわけではなくて、多くの挫折を味わって、活躍すればするほど賞賛とともに嫉妬も受けて、あきらかに揺り幅が大きくて。そんな毎日、のらくら生きているだけのちっぽけな精神力では闘えない。

 

フィギュアスケーターの精神力は並みではない。

全日本選手権を観ていて、想像することすらできない世界での闘いに、何度もため息をつきました。

 

今季はじめて浅田真央の作り上げた世界を堪能することができました。去年の力強かった仮面舞踏会は、浅田選手自身が語っていた「はじめての舞踏会」のようにやわらかく、優しく変化していました。ピンクの愛らしい衣装が、GPシリーズの時のように不自然ではありませんでした。同様に、フリーの『鐘』も浅田選手の気迫が重厚なメロディーに乗って、心に大きく響き渡りました。

あんなにこだわってきたトリプルアクセル3回の封印は、いろんな葛藤があったことでしょう。これだけ注目されてしまうと、自分自身の問題ではなくなってしまいます。周囲からの無責任な攻撃も覚悟していたかもしれません。

いつもいつも矢面に立たされる安藤選手の不調気味の演技は五輪選出の不満を助長してしまわないかと心配です。GPシリーズを終えてひとまわり痩せているようですし、ピークを保ち続けることのむずかしさを感じます。でも五輪ではGPファイナルの時のような鬼気迫る演技を魅せてくれると信じています。

逆に上り調子なのが鈴木選手。一度プレッシャーを乗り越えて、GPファイナルそして全日本と、まるで殻を破ったかのような素晴らしい演技が続いています。観客を巻き込む情熱ほとばしるストレートラインステップ。五輪でもきっとハッピーエンドのウェストサイドストーリーが華麗に幕を開けることでしょう。

落選してしまった中野選手。あの美しいスピンとやわらかな笑顔が五輪で観られないのかと思うと・・・。中野選手の独創性あふれる『火の鳥』を、もっと完璧な状態で感じたかったです。24歳という年齢を考えれば、五輪出場への情熱がいちばん強かったのは、もしかしたら彼女ではないかと。勝負の世界とはいえ、胸が痛みます。ソチをあきらめないで、というには、この4年間はあまりにも彼女にとって長すぎたのかもしれません。

トリノの前から応援していた村主選手も、29歳を目の前にして去就に揺れているようです。情感あふれるスケーティングは並みいる実力派の中でも群を抜いていました。10代の若手が次々に台頭してくる中、現役で存在感を示し続けた姿は立派だと思います。

 

男子のフリーを観ることができなかったのは残念でしたが;

五輪出場の決まった選手たちには、心からのエールを送りたいと思います。

メダルはしょせん結果の産物。

氷上ですべてを出しつくしてほしいです。

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