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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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容疑者Xの献身

東野圭吾の原作に関しては、以前に感想を書いたので省略します。

かつて、ドラマ『ガリレオ』の主役が福山雅治と知った瞬間、「なんじゃそりゃあー!!!」と叫んだ私。

だって、湯川は絶対に絶対に絶対に、福山ではないでしょうがーーーーーあ!!!

作者でさえ、「佐野史郎」って言ってるんですよ。あんなイケメンの上に頭も良かったら、どんな変人でもかまいやしませんよ!(←?)

というわけで未見でした。

さて今回、初めての湯川=福山。やっぱり、かっこいいですね。でもって湯川ではないですね。しかし、さすがの画面映えですね。かっこよけりゃいいんでしょうね。

この原作で唯一私が感動したのはアリバイのトリックだったのですが、それを知っていただけに、また、キャラメルの舞台がお芝居として良かっただけに、どうしても見劣りがしてしまいます。

ただ、石神を演じた堤真一はさすがの演技力でした。キャラメルの西川さんの石神も見事でしたが、他の演者が演者だけに、突出していましたね。松雪泰子もよかったです。いい女優さんになったなあと思います。

・・・まあ、それだけの映画だと思います。

評価:★★★☆☆

 

~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~

 タイトルどおり、石神という冴えない数学教師が、アパートの隣の部屋に住む花岡靖子という子持ちのシングルマザーに「献身」する話です。本当にこれでもかというぐらい「献身」していて、どれぐらい「献身」していたかが分かった時はかなりびっくりしました。冴えない男が美女に尽くすというのは世の中よくある話なんですが、それはいつかセックスをさせてくれるかもという微かな希望を持っているからであり、この石神のような純粋な献身はなかなかないですからね。小説だからといえばそれまでですが、この理解を超えた献身ぶりには冷めた僕でも圧倒され、ちょっと感動してしまいます。

 石神を演じた堤真一は演技が上手ですね。僕は「ALWAYS 三丁目の夕日」でも彼の演技を絶賛しましたが、間違いなく彼は芝居が上手です。この映画を石神の生きざまを見る映画ですから、この役をしょうもない役者がやったら台無しです。福山雅治や柴咲コウの役は誰がやってもいいんですけどね。陳腐なキャラ設定の柴咲コウの役なんていらないぐらいですし。まあ、堤真一はカッコ良すぎるので、なぜ花岡靖子がこんな顔も頭も良くて安定感のある職業の男に惚れないでダンカンに惚れるのかという疑問が残るのですが、この難易度が高くて重要な役を演じれる40ぐらいの役者が日本にどれだけいるのかと考えると(さや氏によると原作の石神は丸っちょい奴らしいのでドランクドラゴンの塚地ぐらいか…)、ある意味仕方がないのかもしれませんね。

 ただ、これは映画ではなく原作の問題だと思いますが、「石神が花岡靖子にそこまで献身するのはなぜか」というところの描写が弱すぎました。東野圭吾の小説は僕もよく読んでいるんですが、いかんせんこの人は人の心の陽の部分を描くのが下手ですからね。赤川次郎より下手だと思いますよ。トリックはよかったので、推理物としてはいい原作だと思うんですけどね。人間ドラマの原作者には向いていない作家だと思います。

 まあ、この映画の製作者側は原作者なんて比較にならないぐらいダメですけどね。良いところといえば、それなりに原作に忠実に描いていたところだけです。柴咲コウの役はスポンサーとか事務所の絡みで仕方ないとしても、ラストの福山と柴咲コウがベンチに座ってたら雪が降ってくるシーンなんか火曜サスペンス劇場の終わり方と同レベルですし、エンドロールの時の死体が見つかるシーンなんかは絶対に入れないでほしかった。結局石神のミスは花岡靖子が自首したことだけだったというのが、最後の石神の激しく悲しむシーンに繋がっていて、こちらの石神の生きざまへの感動も頂点に達するのに、こんなシーン入れられたらその感動の余韻はまったくなくなり、彼がただの安っぽい犯罪者に成り下がってしまいます。僕はこの映画に★7付けていますが、これは堤真一と東野圭吾が稼いだ点数で、監督とか製作陣の点数はまったくないです。

評価(★×10で満点):★★★★★★★

助演男優賞候補…堤真一

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