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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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レ・ミゼラブル
監督にトム・フーバー、出演者にヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイなどなど、今をときめく俳優陣を迎えて映画化されたミュージカルの傑作。
といっても原作は読んだことがありません。タイトルだけでなんだか胸が痛くなり、手に取ることはありませんでした。
というわけで、この鑑賞ではじめて、この有名なミュージカルが罪と罰だけでなく、宗教と革命をもテーマに孕んだ、非常に重厚な作品であることを知りました。
「歌」は時に、演説よりも強く心に響くことがありますが、この映画においても当然ながらその「歌」の数々が非常に重要なファクターとなっており(むしろセリフより歌の割合が多い)、葛藤や悲しみの絶唱に心が熱く震えました。
人が生きていくことは、なんと困難なのだろう。多くの罪を抱え、それでも正しくあろうとし、しかしいつもまっすぐでいられるとは限らない。時に心は黒く塗りつぶされてしまう。誰かを愛するがゆえに。正しいと信じる道が誰にでもまっすぐ見えるとは限らない。権力への怒り。任務への使命感。それは誰かにとっての善であり、誰かにとっての悪であり。
そしていつか迎える死出の道。その瞼を閉じる瞬間に、神の御手によりすべての罪は浄化され、人は救われて天へ旅立つ。
物語の根底にあるのは、神への信仰。
神を信じない者には少し入りこめない部分があるかもしれない。それでも信仰がいかに崇高であるか、生きてそして死ぬまでの時を意味あるものにできるか、一種のあこがれをもってジャン・バルジャンを見送りました。
ファンティーヌのコゼットへの愛。ジャン・バルジャンのファンティーヌ親娘への愛。マリウスのコゼットへの愛。さまざまな愛が描かれますが、いちばん強く印象に残ったのはマリウスを愛するエポニーヌでした。サマンサ・バークスはこの演技でかなり評価を上げたそうですが、本編通じてもっとも胸を打ったのが彼女の『オン・マイ・オウン』の絶唱でした。
愛するマリウスの愛する者は自分ではない。届かぬ想いを胸に秘め、女は歌う。愛する者のために身を投げ出し、愛する者の愛を護る。無償の愛、これもまた神が人に与えた恵みのひとつ。エポニーヌの美しい心は砲煙の中で輝き、空へと昇華していきました。
ただひとつ、ラッセル・クロウの歌唱力が名だたる演者たちの中で少しランクダウンしていたところが残念であったでしょうか。それでも彼の投げかけた命題は、彼の命尽きた後もなお永遠に神になれぬ愚かな人の心に突き刺さっていくのです。





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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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