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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ファミリー・ツリー
舞台はハワイ・オアフ島。主人公マットは弁護士、遺産の土地の処遇で苦悩しているさなか、妻エリザベスがボート事故で意識不明に。母親の事故にショックを受け学校で問題を起こすようになった次女をもてあまし、寮にいる上の娘を呼び戻すもこちらは反抗期まっただ中で妹をはるかに凌駕する問題児。家族をかえりみず仕事にかまけてきた父親は、年ごろの娘ふたりと向き合わざるをえなくなる。しかも、長女アレックスから聞かされたのは妻が浮気していたという事実。
私が幼い頃は、海外旅行といえばハワイで新婚旅行ももちろんハワイという風潮でしたが、自分の頃には選択肢が増えていたので「今さらハワイ」という感覚でした。今後行く機会があるかどうかもわかりません。
しかし、現在でもハワイは根強い人気があるようです。我が家ではよくBS12チャンネル(野球中継)をかけているのですが、毎回CM中に『ハワイに恋して』という番宣を目にします。しかもずいぶん前から流れているような気がするので、長寿番組なのかもしれません。それほどハワイには放送してもしきれない魅力があるのでしょう。
その『ハワイに恋して』は実際見たことがないのですが、今回この作品を見て、「ハワイいいなあ、行ってみたいなあ」と思うようになりました。
主役はジョージ・クルーニー。ハリウッド界きっての激シブ色男ですが、この映画では冴えない父親を演じています。妻の浮気を知って動揺のあまり便所サンダルで全力疾走してしまう姿など、紙コップをゴミ箱に投げ入れる姿だけでハートを狙い撃ちされたあのCM(オデッセイの宣伝なのに車は背景)とは似ても似つきません。
マットにとってはまるで宇宙人のような娘たちと、長女の彼氏でこれまたマットの理解を超えるイマドキの若者シドを加えたチームは次女には悟られぬようにエリザベスの浮気相手を探りつつ、土地問題もからみ、本当ならば重い展開のはずなのですが、ハワイという舞台の醸し出すゆるやかな空気感が作品全体を包みこんでいます。ドラマチックな展開や大どんでん返しがあるわけでもなく、途中いくつかクスリと笑える場面もありつつ淡々と物語は進み、最後はホロリと泣かされます。
これはどこにでもあるかもしれないひとつの家族の物語。もちろん、浮気やら事故やら土地やら、非日常なファクターはありますが、家族といえども秘密があって、思いがけなく露見して、家族を思うからこそその解決に躍起になって。
妻は眠っているから真実を聞き出せない。いや、話すことができたとしてもほんとうのことは誰にもわからない。家族であっても別々の人間。最後のところはわかりあえない。
でも、家族だから。わからない部分もまるごと受け入れられる。言葉がなくてもわかりあえる。
みんな無言でテレビを見ながらアイスをわけあって、亡き母の足元にあったハワイアンキルトをわけあって。
音楽のやさしさが、心にしみるラストシーンです。


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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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