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『秒速5センチメートル』
『ほしのこえ』の新海誠監督のアニメ作品です。
前作まではSF要素の強い世界での恋愛を描いていたのですが、
今回は思春期の純粋な想いを描いた映画となっています。
この「純粋な」というところがミソですね。
純粋な恋なんて『りぼん』で嫌というほど読んできました。
で、それが全部虚構だということはわかっているのですが、
恋に恋した思春期を持つ大人ならば、この貴樹と明里の恋模様に切なくなるはずです。
小学校を卒業すると同時に転校した明里に会うため、雪の中を走る電車に乗った貴樹。
もし時刻通りに明里に会えていたら、想いをしたためた手紙を渡せていたら、
ふたりの未来はきっと変わっていたに違いありません。
キスに言葉は要らないけれど、
言葉を必要としなかったためにいちばん伝えたかったことを伝えられず、
いつしか地図上の距離は心の距離へと変わります。
高校生になった貴樹に、恋をする少女。
進路に、恋に、サーフィンに悩む彼女が第二部の主人公ですが、
明里よりもよほど体温を感じるキャラクターです。
帰り道、いつも待ち伏せするくせに、彼と同じミルクコーヒーを買うことができません。
ついに告白することを決めた日は、
彼と自分が交わることのない場所にそれぞれ立っていることを知った日でした。
彼の背中を追いながらなにも言い出せないまま涙を流す花苗の心は、
忍ぶ恋のわびさびを解さない直情径行の人間には永遠にわからないでしょう。
誰とは言いませんが。
変わって第三部。山崎まさよしの曲にのせて、貴樹と明里の現在の姿が映し出されます。
幼い恋の呪縛から解き放たれずに不器用に生きる貴樹、
新しい人生をみずからの手で選び取っていく明里。
テーマ曲が『One more time,One more chance』なだけに、
この監督は貴樹目線なのだなあと感じました。
貴樹にも春の訪れを予感させるラストが欲しかったですね。
自然美あふれる映像は、とても素晴らしかったです。
評価:★★★☆☆
『しゃべれども しゃべれども』
古典落語を愛する噺家・三つ葉と、
落語を習うため彼のもとへ集まってきた奇妙な面々。
無愛想で口下手な五月、大阪育ちのおしゃべりな少年・優、解説のできない元プロ野球選手の湯河原。
不器用ながらなにかを伝えようと懸命になる「弟子」たちの姿に、
女にフラれ、師匠にけなされ、落ち込み悩んでいた三つ葉も、
いつしか自分の中でなにかを変えていきます。
落語に接した機会といえば、学生時代の芸術鑑賞会のほかには、
関西ローカルで放送していた『らくごのご』という番組の高校生大会。
笑福亭鶴瓶と桂ざこばが即興で三題噺を披露するもので、
鶴瓶がたいていささっとまとめるのに対し、しどろもどろになるざこばが見どころでしたが、
たまたま観に行ったその時はめずらしく鶴瓶が苦しんでいて、貴重な経験をしました。
あとは、大学の邦楽部時代、同じ伝統系サークルということもあって、
落語研究会と仲良くさせていただいていたのですが、
向こうは定演はもちろん、内輪の部内発表会まで聴きに来てくれるにもかかわらず、
こちらはさっぱり出向いていかないので、よく先輩に怒られました。
つまり、そんなに落語に興味がないのですね。
でも、この映画内で演じた師匠役の伊東四郎は、落語を知らないながらもすごいなあと思いました。
講演会での話し方まで、真打という感じが出ていました。
一方、二つ目役の国分太一。
拙いしゃべりにお客が途中で帰ろうとも頑なに古典にこだわり続け、言いたいことを言って相手を怒らせる。
人の良さそうな太一くんには向いていない気がしましたが、
着流し姿は意外に似合っていましたね。
ラストを飾る『火焔太鼓』は見事な一席でした。
落語は「間」が命といいます。
コントやバラエティをする現代のお笑い芸人も、落語を聴いて勉強するといいます。
それ自体はポピュラーなものではなく、かたちも変わり続けているのに、
いろんな世界でちゃんと生き続けている芸能なのですね。
おしゃべりも生きかたも不器用な4人が、落語を語ることでそれぞれの世界を広げていく。
しゃべれどもしゃべれども、相手に届かないもどかしさ。
落語でも、会話でも、コミュニケーションの基本は同じ。
本当に伝えたいことは、どんなに不器用でも真剣であればよいのです。
五月の最後の笑顔は、とてもかわいかったです。
評価:★★★☆☆