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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『夜のピクニック』

原作は、いわゆる爽やか青春小説でした。

扱っている秘密はディープなはずなのに、全体的にさらりとしていて、

それも、人生の中でそこだけ異なる時間の流れを持つ限られた一夜を描いた話だからなのかもしれません

学校の友達と過ごす夜って、ちょっと特別。

あかるい教室で見る顔とはなんか違って、距離も近くなった気がして、

秘密を聞きたくなったり、語りたくなったりします。

修学旅行のメインは、もちろんふとんにくるまっての恋バナ。まあ私はもっぱら聞き役でしたがね。

この話は歩行祭を扱っていますが、私の場合高校ではなく、大学でありました。

とりあえず首をつっこんでみる興味津々の1回生ですが、翌年は口をそろえて「二度とイヤ!」。

かなりえげつなかったようで、クラブの合宿と重なって参加できなかった私は幸いだったのかもしれません。

だからきっと私がもしこの高校にいたら、

「も~だめ! バスに乗る~!」と弱音ばかり吐く生徒になっていたと思います。

さて、映画本編自体ですが、非常に出来が悪いです。

群像劇なのか、主人公ふたりの葛藤なのか、青春賛歌なのか、

いったいなにを主流に起きたかったのかわかりません。

シーンのつなぎがつねにちぐはぐで、ラストの爽やかさがむしろ異様に映りました。

キャストの演技力はまあ若いから大目に見るとしても、

もうちょっと締まりを持たせられなかったのかと残念でなりません。

原作のとおり淡々と進めても問題なかったと思うのですが。

評価:★★☆☆☆

 

『バーバー吉野』

もたいまさこに小学生の息子というのは、ちょっと無理あるなあと思ったら、ちゃんと上に姉ちゃんがいました。

この姉ちゃん、年頃なのにロングスカートやロングの花柄ワンピースを着ています。

時代設定はそんなに昔ではないはずなのに、変なの、と思っていましたが、

これも古き慣習といいますか、派手な恰好などしようものならあっという間に町中の噂になるような、

そんな閉鎖的な土地の象徴なのかもしれないと思いました。

その慣習の最たるものが、《吉野刈り》と呼ばれる男の子の髪型です。

この町の男子は皆同じ、マッシュルームのような髪型をしています。

町の伝承とはいいますが、吉野とは町に1件しかない理髪店の名前。かなり怪しいです。

でもなんの疑問も抱かず、理髪店の女主人に髪を刈られ続ける少年たちの前に、

今風にキメた東京からの転校生が現れて波紋を起こし・・・というお話です。

この男の子たちの行動がリアルっぽくて、おもしろい。

秘密基地やエロ本など、大人が「ダメ!」というアイテムは、

男女関係なく子どものドキドキ心をかきたてるものなのです。

子役の素直な演技もさりながら、圧倒的な存在感を持つもたいまさこ、

お父さん、担任の先生、切るところがないのに床屋に通うおじいさん、

そして「いたいた! こんな人!」の、変な格好で子どもを追いかけまわすケケおじさん。

キャラの際立つ脇役で固めた役者陣、のどかな田園風景、

自然にその世界に溶けこみ、いつしか子どもたちと一緒に遊んだり怒ったり悲しんだり。

ラスト。質素な服装の下に、真っ赤なハデハデ下着を隠していた姉ちゃんは、

荷物をまとめて町を出ます。

そして、《脱・吉野刈り》を目指して反乱を起こした子どもたちも、

人の気持ちを思いやれる大人に近づきます。

青春の階段をのぼりはじめた彼ら、

そして伝統から脱却していく町の行方をあたたかい気持ちで見送れる、

ノスタルジックな映画です。

評価:★★★★☆

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