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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ツレの選ぶ映画はたいてい、あらすじを知らないまま観てしまいます。

ですので、この映画、最初は法廷モノかと思っていました。

が、どうやら違っていたことに、途中で気づきました。

主演は、最近知事になった宇宙人ジョーンズさん。

軍人であった彼を追い、軍に入隊した息子が、イラク戦争から帰還してすぐに行方不明になります。

知らせを受けたハンクは、すぐさま基地へ向かいますが、

彼を待っていたのは息子の惨殺死体でした。

誰がどうして、いったいなんのために、息子は殺されたのか。

子を想う父親の、真実への追求が始まります。

見知らぬ土地で不毛な戦いの果てに病んでいく兵士たち。

なのに祖国はその叫びに耳を貸さず、ただ正義をふりかざす。

救いを求めた家族からさえも、理解は得られない。

戦争の先にある利益、効果、そんなもののために命の尊厳はいともたやすく踏みにじられる。

『告発のとき』は邦題で、原題は「In the valley of Elah」。

エラの谷とは、ダビデ少年がわずかな武器で巨人ゴリアテに立ち向かい勝利した場所のこと。

ハンクが息子によく語っていた旧約聖書の伝説ですが、

「勝利とは恐怖に打ち勝つことで得られるものだ」というその言葉。

恐怖とはいったい何か。

人の命をあやめることか。戦場で正気を失ってしまうことか。

正義の御旗のもとにすべてを正当化する国家に洗脳されてしまうことか。

愛する者からのSOSでさえ気づくこともできないほどに。

ハンクが明らかにした真実を提示することは、確かに「告発」なのかもしれない。

だが、PTSDをはじめとする戦争の現実はずっと前から提唱されてきたこと。

今さら「告発」という言葉を使う必要がどこにあるのだろうか。

この結末を「告発」と思い知るか、あるいは「エラの谷の勇気」と受け止めるか、

戦争に対する意識の国民性の違いをあえて配慮するタイトルは必要ないと思う。

評価:★★★☆(3.8)

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