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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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予告編を見る限り、「あー、お兄さんの死から立ち直れないヒロをベイマックスが癒して、一緒に冒険して、最後ベイマックスはヒロをかばってか何かでいなくなっちゃうけれど、ヒロは彼との思い出を胸にひとりで強く生きていくというラストなんだろうな…」と想像していたのですが、まったくもって想像したとおりのストーリーでした。
しかし、ディズニー映画の素晴らしさは、「物語は予定調和でも作り手の思惑どおりハラハラドキドキさせられて、いっぱい笑って最後には滂沱の涙で画面が見えないくらい感動してしまう」ところなのです。
それにはやはり見事な脚本運びもさりながら、ベイマックスのキャラクター造形やアクションシーンの迫力などの映像技術の高さも一役買っていると思います。
しかし途中からヒーロー戦隊ものになるとは思いもしませんでした。それもそのはず、アメリカでのタイトルは『BIG HERO 6』。ヒロと仲間たちが協力し、その天才的な頭脳をフルに駆使して勧善懲悪を果たす姿は、はるか昔戦隊ものに夢中になっていた時と同じ高揚感を呼び起こし、思いがけない展開にも違和感なくのめりこむことができます。そして彼ら彼女らは、当時のそれよりずっと個性的で魅力的で、戦い方も多種多様。30年という歳月はヒーロー戦隊をここまで進化させてしまうものなのか。
しかしこの作品のクライマックスは、やはりヒロとベイマックスのお別れのシーンです。大事なものを守るためみんなで戦う戦隊ものも良いけれど、いちばん心を動かされるのはともに戦ってきた仲間がいなくなってしまうこと(過去に見た戦隊ものにそういう場面はなかったような気がするけれど)。太古から「死」や「別れ」に大きな意味を持たせ感傷を禁じ得ない日本人のDNAは、『BIG HERO 6』よりも『ベイマックス』というタイトルと、ヒロとベイマックスを主題に置いた予告編(鉄拳のパラパラ漫画含む)、そして鑑賞直後のAI『STORY』に心動かされてしまうでしょう。
そしてディズニー映画ならではの、決して「予定調和」のひところだけでは終わらない巧みな脚本にも唸らされます。セリフのひとつひとつに重要な意味が込められており、それが後々響いてきます。二度三度見て、何度も深くかみしめたい滋味がある物語です。
ちなみに上映前に流れた『愛犬とごちそう』というショートストーリーですでに瞼が濡れていたことも付加しておきます。歳をとると、いかんな、涙もろくて…。

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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