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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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フィッシュストーリー

 

『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』と同じ伊坂幸太郎原作の映画です。

2012年、地球に隕石が迫り、世界は滅亡の危機に瀕していた。誰もいなくなった街に流れるパンクロック『FISH STORY』。1975年、逆鱗という無名のバンドが作ったその作品が、その時どきにある人びとに影響をもたらし、37年後世界を救うことになる--という、一見おとぎ話のような、タイトルそのものが示す「FISH STORY(ホラ話)」のような物語です。

イントロダクションだけ聞くと、着想が奇想天外で非常に興味深く、さすが人気作家の思いつくことはすごいなあと感心するわけですが、

時間軸が少しずつずれた4つの物語が展開されていき、ラストにはそれがひとつに繋がる、

その繋がり方が途中で見えてしまったために、面白さが半減してしまいました。

エピソードひとつひとつの流れや構成、キャラクターの色付けも非常に良い出来なのに、イカニモと見せる伏線の作り方で謎解き要素のアクが薄くなり、ちょっと肩すかしをくらった感じになりました。

『重力』はミステリーよりも家族愛が強く印象づけられたし、『ゴールデン』も時間軸の使い方が秀逸で後味の良いラストになっていました。それらと較べると、どうしても見劣りしてしまいます。

キャストも少し魅力がありませんでした。伊藤淳史はやはりパンクロッカーには見えないし、高良健吾は最近注目の役者さんですがあまり目立ちませんでしたし、多部未華子も印象に残る役どころではないし、濱田岳も普通の学生さんだったし、大森南朋も立ち位置が中途半端。良かったのはアヤシさ満開の石丸謙二郎と鬱陶しさ100%の山中崇ですかね。後者は『闇金ウシジマ君』といいこんな役ばっかりなので、たまにCMで普通のお父さん役を観ると逆に違和感です。

評価:★★★☆(3.2)

~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~

  パズル的な構成の群像劇は僕の好みのはずなんですが、どうもこの映画は演出がイマイチで全体的にダラダラしているうえに途中でネタも分かるので、ラストのスッキリ感がなかったですね。群像劇なのに人物描写も浅く、登場人物に魅力がありませんし。この映画はバンド編だけは丁寧に描いているので、ラストの奇跡ももっと音楽に何か意味があり、この音楽が世界を救ったという説得力がきちんとあればもっと良い気分で観終われたと思うのですが、こんなんだったら普通に多部未華子が一人で救っただけに見えてしまうので、何も感動できません。

 森山未來が多部未華子の命を救うこと、森山未來が正義の味方になるために親に身体を鍛えられていること、その親は父親が勇気を持って母親をレイプ魔から救ったから結婚できて森山未來を産んだこと、これらも全部奇跡といえば奇跡ですよ。ただ、これらの奇跡と音楽の繋がりもどうも納得させるものがなく、観ていて爽快感がありません。同じ一つの音楽をテーマにした作品で言えばちょっと前に見た「少年メリケンサック」の方が一つの曲とストーリーがバシッと繋がっていてずっと良かったです。

 また、地球の滅亡を救うという話にしては、地球滅亡の悲愴感が全然出せていないことも感動がない原因でしょう。映像もちゃちかったです。人がいなくてゴミが散らかっているシーンを見せるだけではダメでしょう。レコード屋のやりとりもだるかっただけですね。バンド編は丁寧に描いていると言いましたが、こちらも丁寧なだけで特に面白かったわけではありません。僕は元より伊藤淳史という俳優の評価は非常に低いのですが、彼に魅力を感じないとバンド編は楽しめませんからね。今回も拙い演技と薄っぺらい役作りでした。薄っぺらい役作りと言えば大森南朋もそうでしたね。この人は演技が上手い印象があったのですが、今回は全然ダメでした。

 ただ、世間の評価はそんなに低くないんですね。どうしてでしょうか。みんな自分の存在にも何か意味があるはずだと励まされていい気分になるのでしょうか。

 評価(★×10で満点)★★★

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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