『偽りなき者』のDVDに予告編として収録されていて、興味深かったので借りてみました。
夫のDVにより8歳の息子を連れて郊外に逃れてきたアナ。恐怖の記憶にとらわれているアナは、別のベッドに眠る息子の様子を確認するため《チャイルドコール》を枕元に置く。ある夜、そこから聞こえてきたのは、子どものすさまじい悲鳴。あわてて部屋に走ると、息子は静かに眠っていた。
声の主は誰なのか。
『ドラゴン・タトゥーの女』のヒロインだったノオミ・ラパスは、一転不安と恐怖にかられ続ける母親を巧みに演じています。
曇り空、静かな街。あいかわらず、おしゃれでのどかなイメージとはかけ離れた北欧です。昼下がりの散歩道になるはずの近所の森も、残酷なひと幕の舞台となりました。
物語は、チャイルドコールから聞こえてきた声の正体を探るアナの視点で進みます。しかし周囲の人びとは、アナの見てきたものとは異なる話を事実として語り出し、アナの心とは乖離していきます。
もともと、DVを受けたことで精神不安定であり、息子への執着も強すぎるほど強いアナ。幻聴や幻覚を体験しても不思議ではなく、次第に謎の行きつく先を感じ始めます。
少し佐々木丸美を思わせる展開でした。
悲しい事実から逃れてきたはずの街。しかしそこも、結局、悲しい街だった。
一度鑑賞しただけでは、謎をすべて解釈することはできませんでした。しかし二度観ることはないでしょう。あまりにも、悲しい物語であるからです。
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