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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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アメリカには今なお根強く残る人種差別。

日本でも、差別だの人権だのとお決まりの文句は道徳の教科書に並んでいたけれど。ピンとこない。

しかし、誰かを見下げて優位に立ちたいという気持ちは、誰にだってある。

勉強。運動。資格。お金。出世。自分、あるいは家族を比較して、一歩でも前に出ようとして、その足で誰かを踏みつけて貶めて振り向かない。

それが人間社会の諸相。イヤというほど感じる、教科書との矛盾。

たまたまそれが肌の色だっただけで。

登場するさまざまな人物。差別をする者、受ける者。理不尽と傲慢と正義と虚無感。それぞれの思いがさまざまな場所で錯綜する。

時に衝突する。

他者を理解することは不可能だ。理解している、と思うのは大いなる傲慢だ。

ベクトルは他者から見れは逆向きで。

向けられた銃口なのか。あるいは差しのべられた腕なのか。

判断するのは、残念ながら他者でしかなくて。

それでも、人間だから。

言葉を持つ。言葉以上の行動を起こせる。今日とは違う明日を迎えることだってできる。

ささいなことなのだ。変わるのは相手ではない、自分だ。

銃口を腕に見せるのか。あるいは腕を銃口に変えるのか。

それは、自分次第。

他者と繋がっていたいと思うなら。

誰かより優位に立ちたいと思うこと、それこそがすでに他者との繋がりの始まりなのだけれど。

評価:★★★★☆

 

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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