MENU | MENU | MENU | MENU | MENU | MENU |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
北野武監督作品は、『監督・ばんざい!』以来、2作目です。
何故その作品を観たのか(しかも映画館で)未だに謎・・・レビューすら書けないほどのシロモノでした。
もちろん、だからといって私の中で北野武という監督の評価が下がるわけではありません。『HANABI』とか『座頭市』とか『Dolls』とか、観てみたいと思う作品はいろいろあるし、海外で高い評価を受けていることに加え、私が好むキム・ギドクと似ているという話を聞くにつけても、非常に高い芸術性を持ち合わせた個性の強い監督であることは、なんとなくイメージがつきます。
なのに、またもやその芸術性とはおよそかけ離れた作品を映画館で観ることに・・・。
椎名桔平・・・昔っから好きなのだ。
三浦友和・・・最近、その演技力に気づく。
國村隼・・・ドラマにしろCMにしろ、シヴイ存在感。
加瀬亮・・・ヤクザ役に使うそのセンス!
小日向文世、杉本哲太、北村総一郎、石橋蓮司・・・言うまでもない。
これだけのメンツをそろえられたら、興味をそそられないはずはない。
中身は、とどのつまりヤクザの内部抗争で、最初に人間関係だけ整理しておけば頭は必要ありません。R-15指定されるだけある残忍な拷問シーンはありますが、知っている俳優だけに観ていてさほど痛みは感じませんでした。ところどころクスリと笑える部分もあり、スピード感あるエンターテイメントとして楽しめました。
「誰もが主役で誰もが脇役」の言葉どおり、誰もが主役を張れるほどの豪華俳優陣ながら、誰もが強い光を放つこともなく、しかしインパクトはしっかり残して去っていきます。今や、北野監督作品に出演することは、ひとつのステイタスでもあるのでしょう。役者たちの強い緊張感が伝わってきました。その緊張感が薄いのは、自分が監督であるから仕方ないのでしょうね、演技力の点でもビートたけしだけが少し見劣りしました。
しかし、椎名桔平はやっぱりカッコよかったなあ・・・あ、ヨダレが・・・。
評価:★★★★☆(3.2)
~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~
北野武の映画ではいつものことですが、インターネットの感想のほとんどが「北野武は映画監督として有能か無能か」という議論ばかりです。たぶんそういうことばかり言う人は映画をきちんと理解していないんでしょうね。だから「ヨーロッパで評価されているからすごい監督のはずだ!」とか「単調なストーリーの暴力映画ばっかり撮ってるこんな監督のどこがすごいんだ」とか浅はかな意見しか言えないんでしょう。まあその意見は2つとも間違いではないんですが、少なくとも北野武の映画を観るなら、さや氏には何回も言っていますが、「死」の描写については絶対に触れなくてはならないでしょう。今回の映画もそうですが、この人の映画は「死」の描き方が素晴らしいと思います。少なくとも最近観たアバターのような典型的ハリウッド大作のようにワーワー大勢の人が戦って人が何人死んでるかわからないが主人公はちゃんと生きているみたいなことはありません。
この映画で一番カッコ良いのは誰がどう見ても椎名桔平の役でしょう。このキャラはハリウッド映画では絶対に生き残るか、死ぬとしても最後の最後にカッコいい死に方をします。しかしこの映画では彼は身を隠していた部屋で最後に女を抱いて、銃を手に覚悟を決めて出ていくところまではカッコ良かったのですが、その後名前も分からないチンピラ相手に何の抵抗も出来ずに殺されます。こういうキャラがあっけない死に方をするところにある意味リアルさを感じさせるのが北野映画の良さでしょうね。確かに僕たちの生きる社会ではヤクザが「怖い≒強い」とされていますが、リングの上で互いの腕力だけで戦うのだったらその辺のスポーツマンの方が上かもしれません。実際にヤクザの方が怖いのは彼らが社会のルールを簡単に飛び越えるからで、この映画のようなヤクザ同士の戦いはルール無用の戦いになりますから、絶対的な「強い」という基準はなくなってしまいます。そうなると椎名桔平がチンピラより長く生き残る理由は何もありませんからね。
死とは関係ありませんが、椎名桔平が警官に怒鳴られてそれに素直に従いタバコを拾い、どんな仕返しをするかと思いきやタバコを車に投げつけるだけという僕ですらできそうなことしかしないことや、武が最後自分よりボクシングの弱い警官の小向日文世のパンチを食らうが立場が弱くなったため反撃できないところなどから考えて、世の中で本当に一番強いのは警察だということを示しておきながら、本当のラストシーンで偉そうにしている三浦友和や加瀬亮の前で、小向日文世が腰の低いところを見せているところなんかもなかなかリアルに怖くていいですね。それまで偉そうに怒鳴ったり凄んだりしていたヤクザ達がみな滑稽に見えます。そう考えると武の怒号が凄みをまったく感じさせなかったのは、彼が演技が下手だからではなく、わざと怖く見せないように演技していたのかもしれません。まあそれは考えすぎでしょうけど。
褒めてばかりいますが、やはりアンチ北野武が言うようにストーリー展開が凡庸なのはまったくもってその通りですし、「ソナチネ」なんかと比べたら北野武の感性も鈍ってきたなあと思います。それに「アウトレイジ」は豪華キャストを売りにしていますが、「ソナチネ」も大杉漣、寺島進、津田寛治とその時はまったく無名でしたが今思えばいい俳優が出ていましたからね。まあそれでも「アウトレイジ」の俳優陣の方が凄いですけど。僕がキャスティングだけで「見たい」と素直に思った映画は邦画ではこれが初めてですし、よくこれだけの人達をよく揃えたなあと思います。みんなもちろん上手いんですが、特に僕は國村隼に今までそんなに注目してなかったことを反省しました。僕が日本の俳優の中でキャリアの長短をまったく考慮せずに純粋に演技が上手い人を選ぶとすれば大杉漣と小向日文世の二人になりますが、この人もその二人にかなり近いところにいるのではないでしょうか。
評価(★×10で満点):★★★★★★★