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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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あーーーー、ときめきたいったらありゃしねえ!!

ヤスオーと一緒の時はちょいヒネリのラブストーリーしか観られないので(例:エターナル・サンシャイン)、こういう超ド真ん中150km速球の映画で、たまには刺激が必要です。

韓国映画です。しかし舞台はアムステルダム。

広場で肖像画を描いているヘヨンは、デイジーの花を贈り続けてくれる誰かのことを想い続ける毎日。ある日、客として現れたジョンウのことを、花の贈り主と確信する。たちまち恋に落ちたふたり。だが、ジョンウは国際警察の一員だった。事件に巻き込まれ、声を失ったヘヨン。ジョンウも祖国に還され、失意の彼女に近づいたのはパクウィ。ヒットマンである正体を隠し、彼女のことを遠くから見てきた彼こそが、実はデイジーの君だった。

イントロダクションで女ゴコロはくすぐられます。三角関係。片想い。秘密の正体。男ふたりは敵同士。いいじゃないですか~。

モチーフとなっている花が薔薇や百合でなく、デイジーというのが、純愛というテーマを象徴するような素朴さと愛らしさを兼ね備えていて良いです。逆に、パクウィへの暗殺指令である黒いチューリップは、対比されておどろおどろしい。せめて紫くらいにとどめておけば良いものを。

前半はヘヨンとジョンウのふたりで進められますが、後半から登場するパクウィがあまりにもカッコ良すぎて、ジョンウの影が完全に薄れます。「暗殺犯だろうが何だろうが、絶対パクウィのほうがええで」と言いたくなるような。この後パクウィの視点から語られる『アナザーストーリー』が作られたようですが、さもありなむ。

ジョンウよりパクウィの秘密のほうが絶対的に不利なだけに、パクウィの想いがより胸を打ちます。一生懸命絵の知識を仕入れたり、こっそり一緒に乾杯したり、やっと親しくなれても、デイジーのことは秘密にしたり。腕は一流のヒットマンのくせになんて純粋一途なんだ!! 観ているほうはメロメロではないか!!

例によって、ラストは韓国映画っぽいのですが、これはこれで予想の範囲内なので構いません。しかし、ヘヨンの声を聴きながら、覚悟の地へと赴くパクウィの純愛にブレがなく、切なさを余韻として残す、鉄壁のラブストーリーと呼んでしかるべき結末です。

が、ただの韓国風純愛ドラマとあなどってはいけません。

一面に咲き誇るデイジーの花。一夜にして掛け替えられた丸太橋。ヘヨンの作品の数々。雨やどり。アムステルダムの街並み。それぞれの部屋の風景。それぞれの映像美に加え、場面ごとに演出が効いているので、ベタベタな設定もまったく気になりません。途中で眠くなることもなく、物語に入りこんでいけます。

『インファナル・アフェア』は未見ですが、こちらも挑戦してみたいと思います。

私としては、『猟奇的な彼女』よりもこちらのほうが好きです。

評価:★★★☆(3.5)

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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