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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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4匹の仔猫の命が失われて悲しみに沈んでいた我が家に、

また新しい家族が増えたのは、それから1ヵ月もたたない4月のことでした。

 

姉が拾ってきたのは、小さな三毛猫。

姉の大学の近くから、電車に乗ってやってきました。

今度こそメス猫でした。名前をつけたのは私。死んでしまったまいと同じ「マイ」。

私はこの時、よほど「マイ」という名前が好きだったのでしょう。理由はわかりませんが。

 

マイは拾われてきた直後、玄関から落ちて腰を痛めました。

そのせいで、歩く時少しお尻を振るのですが、それがマヌケな感じです。

歩き方だけでなく、実際の頭のほうも、マヌケでした。

ミーコはトイレのしつけもすぐにできたし、「お座り」や「立っち」の芸もできるお利口さんですが、

マイのほうはてんでダメでした。

マイのトイレは、玄関一面です。

おかげで、あちこちに吸水シートが置かれ、お客さんを呼べない家になってしまいました。

芸も仕込めず、賢いミーコをかわいがっていた父には毛嫌いされる始末。

そのくせ、ワル知恵は働きます。

家に閉じ込められている2匹は外への憧れが強く、隙を見ては、脱走をはかります。

おデブのミーコは、いつも玄関で捕まえられますが、

避妊手術を経ていつまでたっても大きくならないマイはすばしっこくて、

階段の陰に隠れてこちらを油断させておいて、一瞬の隙をついて逃走。

近所の家(とくにお庭のある裏)に頭を下げて、何度捕まえに行ったことか・・・。

 

避妊手術をすると、そこで成長が心身ともに止まってしまうようです。

マイはいくつになっても、赤ちゃんのような甘えんぼ。

とくに母への懐きようは尋常ではなく、何度も抱っこをせがんで離れません。

そのうえ、人見知り。

八方美人のミーコと違い、家族以外の人間には近寄りもしません。

とくに男性には弱く、彼を家に連れていった時は、必死になって逃げ回っていました。

動物の感覚は不思議なものです。

外で《ガチャ》と門の開く音がした時、

マイが2階に駆け上がって隠れるのは他人、玄関に走っていくのは父、と便利な芸を発見。

そして、すぐにムキになります。

やっと友達ができてうれしいミーコがちょっかいをかけると、牙をむいて威嚇。

鬼ごっこやプロレスごっこでも、本気になっているのはマイだけでした。

それでも2匹は仲良しで、冬場には、一緒に毛布にくるまって、猫だんごになっていました。

 

マイはミーコより1歳下なので、もう18歳になりますが、まだ健在です。

ほとんど寝たきりになったミーコの晩年は、近寄りもしなかったのですが、

死んだ時は、亡骸をにおいに行っていたそうです。

やっぱりわかっていたのかなあ。

最近年のせいかヒステリーになり、夜鳴きがひどく、両親は参りぎみですが、

それでもミーコのことを思うと、いつ逝ってしまうのかわからないので、

ミーコが死んでからは怒るのをやめ、とてもかわいがっているのだとか。

 

猫はやっぱり、我が家のムードメーカー。

命に限りがあることを思い知らされたとはいえ、

マイにはいつまでも元気でいてほしいと心から思うのです。

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