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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ミーコが死んで、

そういえば猫の死に面するのは、

これが最初ではないことに思い至りました。

 

ミーコを拾った次の年の春でした。

近所に猫が捨てられているというので、見に行くと、

まだ目も開いていない生まれたての仔猫が4匹、

牛乳とかつおぶしがまき散らされた段ボールに入れられていたのです。

姉と私はすぐさま病院に連れて行きました。

生まれたばかりの子どもに、母親が必要なのは、猫も人間も同じ。

「たぶん、1ヶ月ともたないよ」と獣医さんに言われました。

 

それでも、このまま放っておくわけにはいかない。

人工母乳をもらって、家に連れて帰りました。

もちろん、親は大弱り。

そこを拝み倒して、うちで看病することになりました。

 

仔猫は、白地に縞のブチが2匹、雉が2匹。

とりあえず、名前をつけることに。

白・縞ブチ多(オス) → てらお (姉が当時寺尾関を好きだったから)

白・縞ブチ少(オス) → きら (姉が当時好きだった小説の主人公から)

雉(オス) → ろっきぃ (姉が当時シルベスター・スタローンを好きだったから)

雉(メス) → まい (1匹くらい私につけさせろ!と主張して、私命名)

 

目も開いていない、小さな小さな仔猫を胸に抱き、

注射器でお乳を飲ませ、排泄の世話をして、ミィミィ鳴いている姿を観察するのは、

とてもうれしくて、楽しかったです。

 

ミーコは、野良猫に嫌われ、友達を欲しがっていました。

ですが、仔猫たちはなにぶん、小さすぎます。

仔猫は姉の部屋で育てられ、ミーコは彼らに会えませんでした。

 

そんなある日。

洗濯物を干しにいった母が、うっかり、姉の部屋を開け放してしまいました。

仲間がいることを察知していたミーコ、すかさず侵入。

母があわてて飛んでいった時には、てらおがミーコにくわえられ、振り回されていました。

もちろん本人は遊んでいるつもり。

救助されたてらおはぐったりしていました。

 

それが原因、というわけではないでしょう。

もともと、1ヶ月ともたないといわれた命でした。

彼らがこの世に存在することを許された時間は、たったの2週間でした。

 

最初は、きらとてらおが。

そしてろっきぃ、まいも、短い一生を終えました。

小さな箱に詰められ、彼らは庭に葬られました。

 

お墓の目印も立てず、今、その場所は花壇になっています。

 

生まれて間もない命を路傍に捨てた、顔も名前も知らない誰かのことを、私は許せません。

ペットも人間と同じ命を持っているのです。

同じ価値ではないにしても、生を与えられた以上、彼らには生きる権利があるのです。

 

前回書いた茶トラの母猫は、どてちゃんとの間にたくさんの仔猫をもうけました。

飼い主である一人暮らしの中年男性は、そのたびに仔猫たちをどこかへ捨てに行ったそうです。

何匹も育てられないからというのが、理由だそうです。

 

彼だけではありません。

高価な動物をお店で買って、言うことをきかないから返品したいと言う飼い主や、

ゴミでも捨てるように飼育放棄する飼い主が世の中にたくさんいます。

 

また、どこかの作家が、飼い猫が産んだ仔猫を崖から投げ落として、

人間に避妊手術をさせる権利はないとか、それで命の大切さを実感しているとかを文章にして、

避難囂々となりました。

彼女の言い分は、まったくわけがわかりません。

 

確かに、無力な生き物から生殖機能を奪い去るのは、人間の勝手な行動なのかもしれない。

でも、自分が育てている命から生まれた命を育てる義務はあるのです。

それを、どこかへ捨てたり、崖から落とす権利は存在しないはずです。

 

仔猫の死を思うたび、いつも悔しさで胸がいっぱいになります。

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