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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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今日、フラフラ~っと本屋に立ち寄って、

またも衝動買いしてしまいました。

 

『栄光のマウンド』というタイトルのその表紙には、

早稲田実・斎藤、駒大苫小牧・田中両投手が写っています。

何冊も発売された、ハンカチ王子ブームに乗っかった便乗本かなあ・・・と思いつつ、

手に取ってみたら、著者・矢崎良一他とありました。

竹書房から出ている、矢崎氏らが書いた高校野球をテーマにした本が、

現在うちには2冊あります。

そのシリーズと知ってしまって、触手がうようよ動く。

でも単行本は、値が張るし・・・と迷いつつ、目次を見ると、

決勝を争った両校、両投手の話のほかに、

《鹿児島工》の特集もあるではありませんか。

即、お買い上げ。

 

プロ野球よりも高校野球のほうが好きな私です。

この夏も、熱闘甲子園で堪能しました。

 

日程が進むにつれて、甘いマスクの斎藤投手と、

それとは対称的な仏頂面の田中投手に注目が集まる中、

快進撃を続けていた《鹿児島工》から、私は目が離せませんでした。

鹿児島県は今年、樟南や鹿児島実をはじめとした強豪私立が、

早い段階でことごとく敗退しました。

鹿児島工の優勝は漁夫の利としか思えませんでした。

地方大会の優勝インタビューで、号泣していた監督に、我が家では、

「そりゃあ泣くよねえ。きっともう二度と出られないもんねえ」

などと、笑っていました。

抽選では、もっとも不利な49番目。

「こりゃあ勝てないよ。鹿児島は今年は初戦敗退だ」

と思っていたら、

あっという間に勝ち星を重ね、なんと準決勝へ。

49番目に登場した高校がここまで勝ち上がるというのは、

私が記憶している中ではありません。

 

鹿児島工は、まるでマンガです。

日本の端っこ、田舎の公立高。

主将で4番、チームをひっぱる大型捕手。

細身でイケメン右腕のエース。

高い打率のリードオフマン。

愛すべきキャラクターの代打の切り札。

いやあ、こんなにある意味理想的なチームは今まで見たことがありません。

 

残念ながら、準決勝で早稲田実に敗退してしまいましたが、

その試合も好ゲームでした。

終始早稲田実に押されていて、まったく勝てる気がしなかったのですけれども、

いい試合だったと思わせるなにかが、鹿児島工にはあったのです。

とくに、代打の切り札・今吉が登場した時。

斎藤との勝負に期待した甲子園は、一気に湧き上がりました。

5万人の歓声が、たったひとりの高校生に送られたのです。

一球ごと、拍手とため息に揺れるスタンド。

感動して、涙が出そうでした。

残念ながら三振してしまったのですが、

今吉くんにとって、この日のことはきっと一生忘れられない思い出になるでしょう。

これからはじまる新しい人生、5万人の熱い拍手を胸によみがえらせば、

どんなことだって乗り越えていけるはずです。

負けたあと、泣き顔しか印象になかった監督さんが、

とてもいい笑顔でインタビューに応えていたのも印象的でした。

 

しかし、はっきり言って単純そうなあの今吉くんが、

別の素顔を秘めていたとは・・・。

なかなか、あなどれない少年だ。

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