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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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いよいよ冬の祭典が始まりました。
時差をうらめしく思いながらの17日間。
寒波も吹き飛ばす戦いの数々に、胸を熱くさせる毎日です。

なに? 滑り台? マトリョーシカ? と、あっけにとられてばかりのスノボスロープスタイル。「まわしてまわして~~」の実況も不思議なこの競技、角野選手の律儀なお礼とスタート前の謎の編み物に、初日から虜にされました。

正直「いらんやろ」と思っていたフィギュア団体戦。いきなり羽生選手が圧巻の演技を魅せてくれました。皇帝プル様(プルシェンコ選手)の復活もうれしい。…と言いながら、観ていませんでした。「どうせ本番は個人戦だしぃ」と…。後々心底後悔したのですが…。国別対抗戦とは雰囲気も大幅に異なっており、慣れない競技に選手たちは少しとまどいもあったでしょうか。浅田選手も今までにないプレッシャーを感じてしまったようです。調整の難しさもあったでしょう。…ま、得点の大盤振る舞いを見ても、開催地ロシアに花を持たせるための新設だったのかもしれませんね~。
しかし日本がFPへ進めたのは、リード姉弟と高橋・木原ペアのがんばりも大きかったと思います。もっとクローズアップされても良いのにと思いました。

4年前、バンクーバーで圧倒されたショーン・ホワイト選手のスノーボードハーフパイプ。新進気鋭の日本人選手がいることは耳にしていましたが、予選の滑りを見るにショーンの連覇は固いだろうと信じて疑いませんでした。平野選手・平岡選手のメダルへの重圧を感じさせないエアの連続も見事でしたが、ポドラドチコフ選手の人生2回目という大技を呼び寄せ、絶対王者のミスを誘い出したオリンピックという名の魔物には驚かされました。

魔物とは自分の中に棲んでいるものだと誰かが言いました。

もちろん、最初からそんなものは存在しないのです。
最初に誰が言い出したのでしょうか。周囲が、勝手に想像していた結果と異なる展開をまのあたりにした時に、自分の感情を整理するために作りだした都合のよい言葉にすぎません。勝負ごとはその場で決する一回限り。人間ですからミスもする。百回やって百回勝っていても、千回目には、一万回目にはどうなるかわからないのです。その一回が、たまたまオリンピックの舞台であっただけの話。

ただ、女子ジャンプ高梨沙羅選手の結果について、さすがに「魔物」と耳にはしませんでした。さほど興味がなくて、今季何回優勝、台落ちゼロというメディアが大々的に報じた前情報だけを目にすれば、「メダル間違いナシ!」と勝手に期待した視聴者はきっと少なくないでしょう。
ただ、はじめてのオリンピックで4位入賞という結果にも悔し涙を流し、インタビューでは相手の目を見ながら気丈にもひとことひとことはっきりと謝罪と今後の目標を口にする姿を目にした時、17歳の聡明な少女が、その小さな肩に背負ったはかりしれない重圧を、テレビ越しに背負わせてしまった自分勝手な期待の無意味さを思い知らされることとなったのです。

今回に限らず、優勝候補以外の出場者の実力を知りもせず、自分たちの無知を棚に上げて魔物などと見えない力のせいにするのは、その競技に対して多くのものを犠牲にしながら研鑽を積んできた出場選手すべての努力を愚弄する浅はかな行為なのかもしれないと感じました。
もちろん、オリンピックという4年に一度世界が注目する大舞台で勝つことは、国際大会で何度優勝しても手に入れられない栄光なのかもしれません。
それでも高梨選手の色あせない輝きは、確かにこの目に焼きついています。彼女の戦いを、笑顔を、これからも何度も目にすることができますように。

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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