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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『逃げる女』
NHKの土10が原作ものでないオリジナルドラマを放送するのは久しぶりのような気もします。鎌田敏夫の描く複雑な精神世界が、海沿いの決して美しく撮られていない町の風景と役者たちの微かな表情の動きの中に溶け込み、セリフの少ない画面に見入ってしまいます。
主人公は無実の罪で8年間服役し、ようやく冤罪が認められて出所してきたばかりの梨江子。信じていた友人の裏切りに苦しみながら刑務所の生活に耐え、罪は晴れたものの世間の偏見にさらされ、逃れられない過去の呪縛にもがいています。怒りなのか憎悪なのか、それともただ真実をあきらかにしたいという切実な思いなのか、あらゆる感情がないまぜとなった梨江子の瞳の鈍い光はあまりにも悲しく、彼女を取り巻く人びとのさまざまな思いも、手持ちカメラの演出が控えめであればあるほど強く伝わってきます。
一方、梨江子につきまとう出自不明の美緒はどうやら複数の男を銃殺しています。狂気をもまとう彼女の目的は何なのか。出産後とは思えない仲里依紗のスタイルはさすがですが、いっちゃってる演技も変わらず、巧みです。
梨江子を冤罪に追いつめた後悔の念から彼女のこれからを支えようとする遠藤憲一(刑事エンケン&水野美紀は『家族狩り』を思い出す)、いわくありげな加藤雅也など、脇を固める面々も含め、あいかわらずクオリティの高いNHKドラマ。じっくりとかみしめて鑑賞していきたいと思います。

『ちかえもん』
松尾スズキ演じる情けない中年作家・近松門左衛門、奇妙な不孝糖売り・万次らがくり広げる、何ともシュールで斬新な時代劇。毎週ちかえもんが独唱する選曲や説明がわりのシュールな劇画も見どころのひとつ。ところどころ現代語をさしはさむ脚本も、一歩間違えれば漫画チックになりそうなところを、大阪を書かせればピカイチの藤本有紀がいい塩梅でまとめてくれています。大河では違和感ですが木曜時代劇ならオッケー。
かの『曽根崎心中』の完成秘話、とありますが、イモリの黒焼きのおかげ? で恋に堕ちたあほぼん徳兵衛と遊女お初の今後は、いったいどうなっていくのか。討ち入り寸前で鼻緒がどうの行灯がどうの、とモメ始める四十七士の話しか書けない今のちかえもんが、あの元禄の大ヒット作品をいかにして書き上げるのか、予想もつかない展開に期待が持てます。
NHKは大河と朝ドラしか話題にのぼりませんが、この作品もなかなか秀作です。それにしても、『あさが来た』から始まって、大坂の陣も描かれる『真田丸』、そしてこの『ちかえもん』と、今年のNHKはなかなか大阪づいていますね。

『お義父さんと呼ばせて』
遠藤憲一&渡部篤郎のW主演のホームコメディ、と聞けば見ずにはいられない。
美蘭がたもっちゃんについて家族に嘘を並べ立てていたのは、彼女の性格設定を考えると少しウーン…でしたが、ふたりのカップルぶりがかわいらしいですし、きちんと義理親に筋を通そうとするたもっちゃんの態度も潔かったです(一話)。二話でいきなりワインに酔って本音をブチまけてしまいましたが…そもそも波乱しか待ち受けていないであろうこのふたりの行く先、いったいどうなるのでしょう。
自分は完璧だと信じている紀一郎ですが、妻はドレッサーの引き出しに離婚届をひそめています。彼がそれに気づくのはいつの日か。父親と同い年の義弟・義兄を持つことになる美蘭の兄妹もまだまだストーリーにからんできそう。イケイケおじいちゃんの品川徹も、今までのイメージを覆す配役です。そういえば、兄役の俳優をどこかで見たことがあるなあと思っていたら、映画『沈まぬ太陽』で、遺体安置所に並べられた父親の棺を前に父の遺した家族あてのメモをノーカットで読み上げた高校生役の人でした。あの場面は印象的だったなあ。
それにしてもまたエンケンの裸踊りを見ることになろうとは…(『お父さんは二度死ぬ』)。『逃げる女』での渋い刑事役とこのドラマでの三枚目役、一週間で二度おいしいエンケン。好きだなあ。


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