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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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今さらながら、アニメを全話視聴しました。
デジタルリマスター版が放送されていたので…。

原作とは趣が異なる、とは聞いていたものの、実際ここまで別物であるとは思いもしませんでした。
いきなりオスカルが「俺」なんて言うし…アンドレはクールだし…全体的に暗いし…。
原作の随所に見られたギャグ場面が皆無なのはアニメの演出的に難しかったせいだとしても、オスカルとアンドレの関係性が終盤までなかなか距離が縮まらなかったのは少しもどかしいものがありました。

私がはじめて原作を読んだのは、それが最初に出版されてから30年以上も経っていましたが、まったく色あせない登場人物とストーリー展開の魅力にとり憑かれたものです。女ながら軍人としてカリスマ性を発揮するオスカルという架空の人物は、当時であればなおさら、世の女性たちの憧れの的となったことでしょう。男社会でその能力をいかんなく発揮するワーキングウーマンの理想型。現実的には非凡な存在でありながら、人なみに恋もするし、想い人の前ではドレスも身にまとって胸をときめかせる、きちんと共感できる部分も持ち合わせています。一方、身分違いの恋に苦悩するアンドレの想いは切ないし、お家の事情で結婚させられたアントワネットの孤独は悲痛。誰しもに感情移入しながら読み進めていくことのできる、おそらく永遠に語り継がれるであろう少女漫画の金字塔たる作品です。

そう。これは少女漫画に他ならず、オスカルとアンドレの身分を超えた愛の物語であり、フランス革命はその色づけに過ぎません。だからこそ原作のフランス革命は民衆の掲げる自由と平等という崇高な理想が強調され、オスカルがそれに心を動かされるという流れになっています。
しかしアニメでは、革命の持つ正と負の側面がそれぞれフラットに描かれていました。ロベスピエールやサン・ジュストは野心に燃えるテロリストであり、平民の貧しさをオスカルにつきつける存在であったロザリーはほとんど目立たないので、オスカルがフランスの現実を実感していたかどうかは判然としません。むしろ己の意志で積極的に革命家の講演へと出向いていたアンドレに影響され、革命に対して受け身な姿勢でいたように映りました。
そして最後の選択に対し、「アンドレに従う」と他人に委ねたのも、受動的、女性的とも受け取れる描かれ方であったようにも思います。

なぜわざわざこのように異なる演出をしてフランス革命を描いたのかはわかりません。ただ女性的というならば、確かにアニメのオスカルは出撃を前に妻として夫の選択に従うというわかりやすい夫唱婦随発言をしていますが、それまでの彼女はアンドレを遠ざけうすうす自覚しつつある想いを押し殺すかのように黙々と業務を遂行していました。何かと感情に左右されやすい女性の行動ではありません。
一方、原作のオスカルはそばにいるのがあたりまえのアンドレに時にはむきだしの感情をぶつけ、それをアンドレがすべて受け止めるものだから、ますます甘えて思うがままに振る舞っていたようにも思えます。それもまたオスカルの持つ女性的な一面かもしれません。

いずれにせよアニメオスカルも原作オスカルも、男性的な強さと女性的な愛らしさを兼ね備えた、女性から見てこれほどカッコいい女性は他にいないだろうと思わせるほど魅力的なキャラクターなのです。その点ロザリーは読者あるいは視聴者そのものです。

どちらが好きかと言われたら、やはり原作なのですが…。


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