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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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10月 10/2 涙・涙・涙…
説明不要の今季のベストゲーム。いちばん悔しくて、いちばん泣いて。いちばん喜んだ瞬間もありました。一球投げるごと、打球が上がるごと、いちばん一喜一憂した試合でした。それでも最後は、今年いちばんの拍手を送った夜でした。
消化試合は2連勝。厳しい条件下での松葉の粘投、T-岡田の特大ホームラン、ブルペン陣の好投と、良い形で今シーズンを締めることができました。ボロボロになりながら最後の最後まで優勝争いに絡みパリーグを盛り上げた選手たちへの、ラストプレゼントだったかもしれません。

CS 10/12 浪速の轟砲が示すこの先の道
先手を取られて崖っぷち、もう負けられないオリックス。選手を欠いてエラーに被弾、なかなか主導権を握れません。そんな中飛び出した、この特大ホームラン。
瞼の裏によみがえる光景がありました。あれは2001年、近鉄が優勝を決めた北川選手のホームラン。京セラがあんな超満員になる日は来るのだろうか、と以前に書きましたが、それが現実となる日が来たのです。
Tのスイング、打球の軌道、いっせいに立ち上がり行方を追う観客席。
その一打をファンが現地で撮影していた動画をいくつか見たのですが、どれも打球が飛んだ瞬間に画像がブレて床しか映っておらず、音声も悲鳴だけでした(笑)現地の熱狂ぶりがよく伝わります。
翌日の試合に敗れて、オリックスの2014年が終わりを告げました。

月にひとつじゃとても足りない。すべてが思い出に残る半年間でした。

ようやく、と言ってもいいかもしれません、防御率1点台で堂々沢村賞を獲得した金子。ポスティングでメジャー挑戦の噂もありますが、できれば海外FA権を取得する来年、チームを優勝させから海を渡ってくれないかなあ…というのは勝手なファンの願いです。
前半の西の活躍なくして、この地位はありえませんでした。あの時のコントロールはリーグトップのクオリティでした。ソフトバンク戦で流した涙は来年の糧。日米野球もありますから、さらなるステップアップを望みます。
10・2とCS、負けられない土壇場で試合を作ってくれたディクソンも、立派な三本柱の一角。昨年、球団はこの頼れる助っ人投手とよく2年契約を結んでくれたもの。
ルーキーながらふたりで10勝、まだ伸び代のある吉田と東明は今後の先発陣のあかるい素材です。来年はめざせ貯金10。
2年目の松葉も一年間ローテを守ってくれました。西と同世代で貴重な左の松葉の成長はうれしい限り。
7回終了時リードしていれば100連勝という金字塔を打ち立てた中継ぎ陣。いつもいつもピンチを救ってくれた比嘉の活躍なくして、今年の上昇は語れません。昨年に続き最優秀中継ぎのタイトルを獲得した佐藤のストレートは今年も健在でした。馬原の復活もはずせません。FA行使せず残留を決めた際はコメントまで男前でした。そして終盤は失敗続きだったとはいえ、最多セーブの平野佳も、勝てば勝つほど出番が増える肉体的にも精神的にも疲労の溜まる抑えというポジションを務めあげました。先発から中継ぎに回りコンディションもテンションも維持が難しかったであろう岸田や、外国人枠の絡みでなかなか起用できずにいたマエストリ含め、12球団一の防御率を誇るオリックスの主軸は、むしろ彼らブルペン陣だったでしょう。
そしてその投手陣をリードし続けた伊藤の奮闘もまた、今年の飛躍の一因でした。オールスターや日米野球に選出されたことに加え、10・2の号泣した姿も大きくクローズアップされました。来年はいっそう衆目を集めることでしょう。重圧も増えるでしょうが、ぜひ日本を代表する捕手になっていってほしいものです。
伊藤の活躍は山崎のFA加入の影響も大きかったことでしょう。出番を求めて移籍したにもかかわらず、結局ディクソン専用捕手に落ち着いてしまいましたが、ベンチで声を出し、タイムリーには前に出て喜び、10・2ではホームベースでうずくまり動けない伊藤を抱えてベンチに戻る姿もありました。若手の多いオリックスにおいて、捕手陣の支柱であることを表すシーンでした。
イデホの代わりとして加入したペーニャ。昨年の成績からは信じられない存在感でした。京セラ天井弾や帯広の場外弾、圧巻の飛距離には度肝を抜かれました。巨体を揺らしながらの積極的な走塁に士気を鼓舞するパフォーマンス、それだけに終盤の怪我が惜しまれてなりません。契約交渉が芳しくないようですが今のオリックスには必要な戦力。残留の報を待っています。
同じく助っ人のヘルマンも、高齢にもかかわらずほぼ全試合出場で盗塁数はチーム2位。夏以降疲労のせいか目立つ活躍は減りましたが、10・2での円陣の中心で檄を飛ばす姿、CSでのT-岡田ホームランで飛び跳ねてはしゃぐ姿はおとなしい選手の多いオリックスにおいてカンフル剤となったのではないでしょうか。CSの同点タイムリーも忘れられません。来年は三塁を補強して休み休み出場してもらい、元気なプレーを披露してもらいましょう。
日本を代表する外野手である糸井は、移籍2年目にもかかわらずチームの顔となりました。登場曲に合わせてスタジアム全体に揺れる糸井フラッグは壮観でした。背番号7に合わせて起用したウルトラセブンのイベントもよかった。キャリアハイの成績をおさめた今季は満身創痍の中、最後までグラウンドに立ち続けました。辞退の相次ぐ日米野球にも参戦する模様ですが、どうかオフは身体を治して、来年こそトリプル3を見せてほしいものです。
背水の陣で挑んだ今季、GGを獲得し復活のシーズンとなったT-岡田。万が一ペーニャが退団すれば、Tに与えられる役割はいっそう大きくなります。他球団のマークも厳しくなるでしょう。来年はひとまわり成長した姿で、シーズン通して4番の座を守り続けることを期待します。
実質野手陣の中心であった平野恵の存在もまた、大きかったことでしょう。外野でも内野でも、衰えを感じさせぬ華麗なプレーで魅せてくれました。しかし年齢を考えれば二塁手の育成は急務。平野恵を休ませながら起用できる選手層は、常勝軍団の道となるでしょう。
成長をもっとも感じたのが今季の安達でした。守備の安定感に文句は言いません(GGの得票数がH今宮に負けるのはやむなしとして、なにゆえM鈴木より下なのか…)。30にあとひとつと迫る盗塁数と、果敢に次の塁を落とす走塁は、今までのチームにはない意識の高さを感じました。ベンチから求められる要求もどんどん上がっていくでしょう。それに応えるだけのポテンシャルを安達は持っているはず。ファンの期待も、高まるばかりです。
バッテリーをのぞくすべての内野を守りまわった原拓には頭が下がります。重要な場面でのバントの正確さはもちろん、四球を獲れる選球眼、もちろん10・2やCSのタイムリーも特筆すべきです。原の存在は欠かすことのできないピースであることを実感したシーズンでした。
雑誌のインタビューで、思うままに動けないもどかしさとこれからの自分を語っていた坂口。かつて不動のセンターとして輝いていたことを思えば、今の姿は悲しくてなりません。キャプテンを任じられながら結果を残せない悔しさははかりしれないものがあったことでしょう。それでも勝負どころで見せたタイムリーや、打球に飛びこみサヨナラを阻止しようとしたプレーにはキャプテンの意地を感じました。スタメンを外れることも増えた今季。来年もまたポジション争いの中で若手と戦わなければなりません。スタープレーヤーでなくなった坂口の、ベテランらしい渋い活躍を期待します。
新たな不動のセンターの地位を確立しそうな駿太の活躍もまた、あかるい未来への光となりました。高卒一年目から一軍で出場し、いつまでも末っ子のように思っていましたが、10・2の敗戦を「チームに貢献できていないから悔しがる意味もない」と語り、「チームを背負っていると思えるだけの活躍をしたい」と誓う姿には、まるで親戚のオバチャンみたいに「大きくなったねえ~」と肩を叩きたくなってしまいました。同世代のS山田に刺激を受けたことでしょう。来年はぜひ、彼に負けない活躍を。
枠を争う外野陣。頭部死球の受難から甦った川端のしぶとい打撃はやはり信頼を持って見てしまいます。鉄平も決して多くない機会の中でも印象的なプレーやヒットがありました。竹原は終盤貴重な右の代打の切り札となりました(でも外野は守らせない方がいい…)。若手も着々と経験を積んでいます。競争枠は残して、切磋琢磨してほしいものです。
いつも冷静な森脇監督の姿勢は、チームを常勝軍団へ導くことができるでしょうか。来季もまた男前なコメント期待します(采配も…)。

思えば春、補強がうまくいかずオープン戦も負け続けたあの時、「実はソフトバンクと最後まで優勝争いするんだよ」と未来からお告げがあったとしても、絶対に信じなかったでしょう。
終盤はファンまでさんざん胃を痛めることになり、優勝争いをすることがこんなにもつらく、しかし楽しいものだとは知りませんでした。
願わくば、これからもずっとこんなシーズンであり続けてほしいものです。身が持たないかもしれませんが。




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