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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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桜の枝も、プチプチしてきました。

そろそろ開花の季節です。

 

春が似合う人といえば、紫の上です。

源氏の君がいちばん愛した女性といわれています。

美人で、賢くて、才にも恵まれて、女房たちにも慕われて、

女性から見ても女性の理想像そのものな女人なわけですが、

「そんなヤツおらんやろ~」なので、感情移入はできかねます。

でも、いちばん不幸だったのはこの人だろうなと思います。

そもそもは、初恋の人である藤壺の宮に似ていたから源氏に引き取られたわけだし、

結婚だって正妻が死んだからってなんの準備もなしだし、

夫は舅に冷たいし、おかげで父親には嫌われっぱなしだし、

やっと落ち着いたかと思えば、いきなり若い正妻がやってくるし、

娶るだけ娶っといて正妻に冷たい源氏への非難は全部自分にやってくるし、

結局子どもには恵まれなかったし、

死ぬまで心落ち着く時はなかったような気がします。

いくら紫の上がすばらしい人間であったとしても、

花散里あたりの立ち位置が気楽よね~と、友達と話し合っていました。

 

『源氏物語』が日本文学史に残る名作とは、完読するまで実感できませんでした。

中学・高校で、教師たちが『源氏』をどんなにスバラシイスバラシイと誉めそやしても、

あらすじだけをかいつまむ女学生にとっちゃ、

「ケッ、しょせんは男の性欲記録だろーが」で終わるわけです。

 

歳を重ねて、恋愛だけでなく、いろいろな社会を見てきてようやく、

『源氏』の孕むさまざまな要素が理解できるよう(な気)になりました。

『源氏』だけでなく、いろんな文学作品を読んでみたくなったのは最近です。

ふと人生といいますか、日々死に向かっていくだけの生活、

ひいては自分自身に立ち返って、なにかを思索してみたい気になった時に、

文学は必要なのかもしれません。

日々エネルギーを費やしてもすぐに満たされていた若かりし頃に、

ブンガクブンガクと押しつけられても、苦痛でしかないのです。

 

といっても、読みたくなるだけで、なかなか手には取らないのですが。

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