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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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フォーン・ブース
 

そこそこ楽しめるが、1,800円は絶対に出せない映画

 

r081865763L.jpg ★★★★★☆☆☆☆☆ 

監督/ジョエル・シューマカー

出演/コリン・ファレル、フォレスト・ウィッテカー、ラダ・ミッチェル
 

(2002年・米)

 
 ニューヨークのタイムズスクエアの電話ボックスで、自称一流のパブリシストのスチュ・シェパードは、売出し中の女優パメラとの電話が終わった後、不意に鳴った電話ボックスの電話に出てしまいます。その電話からは「電話を切ったら殺す。」との声が聞こえました。それは苛酷なゲームの始まりでした。

 ストーリーはそんなに面白いとは思わないですが、臨場感は圧倒的なものがあり、主人公の緊張感がそのまま伝わってきてかなりハラハラドキドキします。映画はしょせんひまつぶしであると考えるとかなり高水準の映画です。舞台は1つの電話ボックスとその周辺のみというかなり限られた空間で、ほぼ会話だけで物語が進行していく映画なのに、まったくだれることはないですからね。

 主人公演じるコリン・ファレルの演技も見事です。この映画は全編会話劇で相手は電話の声だけだからほとんどコリン・ファレルしか映っていないですからね。間違いなく彼がコケたらこの映画はダメになるでしょう。そんな重要な役どころを彼は見事にこなしたと思います。

 ただ、この映画が傑作かというと、間違いなくそうじゃないと言い切れます。何せオチがないですからね。犯人がなぜ主人公にこんなむごいことをするのかは、最後まで見てもまったくわかりません。犯人と主人公の関係性をまったく描いてないですからね。たしかに主人公は軽薄で傲慢なイヤな奴なんですが、この程度のイヤな奴なんて世の中なんぼでもいるし、何でこいつだけこんな目に遭わなあかんのかとまったく納得できないラストですね。

 もしこの映画の監督が、「謎は謎のままあえて残したんや。主人公に降りかかる不条理な不幸を描いたんや。」と言うならば、もちろんその考え方自体は間違いではないんですが、今度は作り方を見直してほしいですね。変に画面を分割したりする安っぽい映像や、現場の警察の無能な動きは、いかにも安っぽいTVドラマですからね。「謎」や「不条理」というテーマで真っ先に思いつく映画としては「CUBE」がありますが、あの映画は余計な描写や小手先の技術は一切ありませんでした。それが逆にあの映画のスケールを大きなものに見せています。この映画はコリン・ファレルのギャラだけで「CUBE」の全制作費を超えていると思いますが、どこか安っぽく見えますからね。

 あと、この映画を何の予備知識もなしに見た人は、100人中99人が序盤で出てくるピザ屋のおっさんを疑うと思うので、犯人探しの面でも楽しめると思うんですが、僕のようにキャスティングを見てからこの映画を見た人は、100人中100人がなかなか登場しないキーファー・サザーランドを疑うと思います。だから「今まで出てきた奴らの誰かがもしかすると…」というミステリーをまったく楽しめないんです。こういうところで監督のセンスを疑いますね。別に犯人を演技力が確かな無名の役者が演じてもいいと思うんですけど。

 というわけで点数は★5ぐらいですかね。レンタルビデオ屋でDVDを借りて見たので、出費としては200円ぐらいだからこその点数です。映画館で1,800円払って見てたらもっと低いと思いますね。あくまでもひまつぶしとして楽しむための映画ですから。

 この映画は尺も81分とかなり短いですからね。これで1,800円は間違いなく損した気分になると思います。劇場の大画面で見たいようなド迫力の派手なアクションシーンもないですし。
 
  




<フォーン・ブース 解説>

 マンハッタン、タイムズスクエア。自称一流のパブリシスト、スチュは、今日もアシスタントを従え、携帯電話からクライアントや業界に口八丁でビジネスをまとめ上げている。そんな彼はアシスタントと別れた後、1台の電話ボックスに立ち寄り、結婚指輪を外してクライアントの新進女優パメラに電話を掛けた。スチュは彼女をモノにしようとしていたが、上手くいかずに受話器を置く。その刹那、今使っていた公衆電話のベルが鳴り、思わず受話器を取ってしまうスチュ。すると電話の主は、“電話を切ったら殺す”と脅迫してきたのだった…。

 

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