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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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エドtv

刺激の少ない、小ぢんまりした印象の映画です。

 

r081461721L.jpg ★★★★☆☆☆☆☆☆ 

監督/ロン・ハワード

出演/マシュー・マコノヒー、ウディ・ハレルソン、ジェナ・エルフマン

(1998年・米)


 「トゥルーTV」は、ごく普通の人間の日常を24時間映し続けるというドキュメンタリー番組を考えました。この番組の主役に選ばれた、それまではごく普通のレンタルビデオ屋の店員だった主人公のエドは、一躍人気者になります。しかし彼はプライバシーのない生活がだんだん嫌になっていきます。

 この映画を見た人は誰もが指摘するでしょうし、僕も言わずにはおれないんですが、この映画は「トゥルーマン・ショー」という有名な映画にむちゃくちゃ似ています。違いといえば主人公が撮られてることを知っているか知らないかということだけで、着想はまったく同じですからね。しかし面白さでいうと、僕は「トゥルーマン・ショー」の方が断然面白いと思います。あっちは点数でいえば満点と言ってもいいぐらい好きですね。

 テレビ業界やマスコミ、大衆等の描き方を見るに、「クイズ・ショウ」のようにただ単にそれらをバカにしたり皮肉ったりしているだけでないので、そのへんは「さすがロン・ハワード。視野が広いなあ。」とも思うんですが、いかんせんコメディ要素が強すぎて奥の深い映画とは到底思えず、ただの能天気なホームドラマに見えてしまいます。コメディといっても腹を抱えて笑うほどは面白くないですしね。まあこの映画に限らず、僕はアメリカのコメディ映画ではあまり笑いませんけど。

 それに結局この映画は、「家族は大事だよ。」ということが一番言いたいんです。これはあまりにもありきたりすぎるテーマでしょう。そんなテーマの映画が見たいんだったらこんなマニアックな映画わざわざビデオ屋で借りないです。アメリカの娯楽大作にはそんなんいっぱいありますから。それに、僕は何だかんだいって「クイズ・ショウ」は嫌いではないですから、イントロダクションのイメージ通りのテレビ業界や大衆を批判する風刺性の強い映画にしてくれた方がよかったですね。まさかこういう軽いノリの映画だとは思いませんでした。

 主人公の置かれている状況も「電波少年」レベルのスケールの小ささです。「トゥルーマン・ショー」のインパクトのある設定とは比べ物になりません。ストーリーも結局は様々な人間のたわいもない話の積み重ねです。ラストの展開もつまらないです。何も考えずにヒマつぶしに見るには向いていますが、「ああ、心に残る素晴らしい映画に出会いたいなあ。」と思っている人は絶対「トゥルーマン・ショー」や「クイズ・ショウ」を見た方がいいです。

 ただ、決して出来の悪い映画ではないですよ。TVの前の視聴者達や番組制作スタッフなど、さして重要でない登場人物のキャラクター付けなんかはしっかりできていますし、TVカメラを通さない生身のエドには何の価値もないということの描写なんかもうまいことしています。それに表面上のコメディ要素にとらわれなければ、ストーリー展開を考えると奥が深い映画と言えないこともないです。

 だから、僕はさっきも言ったように「トゥルーマン・ショー」の方が好きですが、作品としての出来を見たら正直そんなに負けていないと思います。しかし実際は人気でも評価でもかなり負けていますね。やはり、刺激が少なく小ぢんまりした映画という印象が強いんでしょう。

 僕の点数は★4ぐらいですかね。微妙なところです。まあ、ほのぼのした後味の良い映画ですし、「クイズ・ショウ」と違ってTV見るのが嫌になったりもしないので、誰が見ても★1とかは付けない、好き嫌いの分かれない映画だと思います。


 




<エドtv 解説>

 ケーブル・チャンネル“トゥルーTV”の視聴率は、放送開始以来2年間低迷状態にあった。崖っ淵に追い込まれた番組ディレクターのシンシアが起死回生のためにブチ上げた企画は“台本、俳優、編集ナシ。主役はごく普通の人。24時間ぶっ通しで、その人の生活をカメラが追う”というもの。選ばれたのは30過ぎのビデオショップ店員エド。番組は当たり、エドは1日にして人気者となるが……。「身代金」のロン・ハワード監督がテレビの持つ恐ろしさを描いたコミカル・ドラマ。

 

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