忍者ブログ
おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

知人にゲイの人がいました。

はじめて聞いた時はびっくりしたけど、すごくいい人でした。

何より、話しやすいのです。異性には構えていろんな壁を作ってしまうし、同性だと底に沈澱するいろんな感情の探りあいみたいなところがあって、深いところまで潜れません。でも、その人には心を開いて「会話」ができそうかなと感じました。結局、そういうところまで仲良くはならなかったのですが。

やはり、女性には慕われていました。しかし男性には少し距離を置かれていたようでした。まだまだ日本において偏見を凌駕するのは難しいようですが、70年代のアメリカも宗教を盾にとった相当な差別社会であったようです。

ハーヴィー・ミルクという人のことは、まったく知りませんでした。

差別と偏見に満ちた街の片隅で心を鎖していたゲイの人々に、小さなコミュニティを作り安楽の場所を与える。やがて社会への開放を求め、選挙に出馬する。彼の奔走により根強かった差別主義者は徐々にその勢力を弱めていく。

笑顔とジョークを絶やさずにいても、その中身は真面目すぎるほどに真面目。最初は己の生き易さを求めて始まった活動は、周囲の人々の思いを乗せて、彼らの理想の実現化へと高まっていく。大切な人を失うことになっても、彼は最大公約数の幸せを選んだ。

ミルクでなければいけなかった、ということではないのかもしれません。

最初の一歩を踏み出せるか、否かが重要。彼はその勇気を持っていた。自己犠牲をいとわぬ精神も持っていた。しかし傍観することに慣れた凡人にはなかなかできないことです。だからこそ、彼や第一人者と呼ばれる数々の人々は立派だと呼ばれるのでしょう。 

この作品は、いわばミルクという人間のドキュメンタリーですが、展開がスピーディで実在するキャラクターなのに色付けがしっかりしているので、退屈せずに見られました。そのかわり大きな感動もお涙頂戴もありませんが、観終わったあとにふと己を振り返ってみることのできる、偉人の伝記のような作品です。

今さらなのですが、ショーン・ペンの演技は見事でした。ノーマルからみると美しくはないラブシーンですが、決して不愉快にはならないのは、きっと彼が演じている間は心からゲイになりきっていたということでしょう。

ゲイに対する男性の偏見、と書きましたが、頭ごなしに批判するつもりはありません。私とて、ずっと以前に、電車内でレズのカップルを見たことがあります。「・・・」でした。そして、レズの人と普通に仲良くできる自信もありません。つまり、私も差別社会を形成するひとりなのだということでしょう。

評価:★★★★☆ 

 

~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~

 アカデミー脚本賞とアカデミー主演男優賞を獲り、非常に評判の良い映画ですが、僕はそこまでこの映画には感動しなかったですね。まあ、そつなく丁寧に作られているので、僕のようなハーヴェイ・ミルクについてまったく知らず、ゲイ社会なんぞにまったく興味のない人でも観てて飽きはしないですから、決して出来は悪くはないのでしょう。ただ、この映画の主人公の伝記映画なら、そこそこ腕のある監督や脚本家なら誰でもアカデミー賞は狙えるでしょう。それぐらいミルクという人は映画にはうってつけのドラマティックな人生を送っています。映画そのものよりも、僕はこの人の人生に衝撃を受けましたから。

 当時の映像や実際にミルクの周りにいた人を出すのも映画の現実味、説得力を増すのに非常に効果的だったのですが、これも突き詰めて考えると、記録映像やインタビューばっかりで構成された「ハーヴェイ・ミルク」を題材にしたドキュメンタリー番組を見た方がいいのではないかとも思います。この映画みたいなわりと史実に忠実に作っている映画は、どうしてもそう考えてしまいますね。まあ、あまりにも史実をねじ曲げると僕のようなミルクをまったく知らない人にはウケるかも知れないですが、逆にミルクの関係者や信奉者にキレられそうですし、難しいところです。

 「提案6号」の否決のところなんかはこの映画で一番の感動を呼ぶシーンだと思うのですが、ここも僕はそんなに感動しませんでしたからね。ミルクの最後のシーンもちょっとあっけなかったです。このへんもこの映画がミルク一人の人生を描くことに集中したからだと思います。もうちょっと他の人の描写にも力を入れればもっと盛り上がったんでしょうけどね。

 演技はみんな上手だと思いましたね。役者陣もアカデミー賞を狙えそうな素材の映画に出れたから張り切っていたのでしょう。よく洋画はセリフが理解できないので邦画より役者が上手に見える、そもそもセリフを理解していないのだから演技力自体が測れない、と言う人がいますが、この映画でスコットを演じていたジェームズ・フランコとかいう若い役者は、前回見た「ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ」に出ていた市原隼人や三浦春馬より間違いなく100倍演技が上手です。主役を演じたショーン・ペンは、先に挙げた二人とは比べるまでもないでしょう。ただこの役者はシーシェパードの支持者なのであんまり好きじゃないんですけどね。 

評価(★×10で満点):★★★★★★

主演男優賞候補…ショーン・ペン

助演男優賞候補…ジェームズ・フランコ

PR
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
さや
性別:
女性
自己紹介:
ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
ブログ内検索
バーコード
ATOM  
ATOM 
RSS  
RSS 
Copyright ©   風花の庭   All Rights Reserved
Design by MMIT  Powered by NINJA TOOLS
忍者ブログ [PR]