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『マリーアントワネット』
まず言っておきたいのは、これは女性の女性による女性のための映画だということです。
もちろんこの作品を受け入れられない女性もいれば、好きになる男性もいるでしょう。
しかし、これほど露骨に観客層を選ぶ映画もなかなかないと思います。
主人公は王妃、舞台はフランス革命前夜。
でもこれは世界を変えた歴史を語る重厚な物語ではありません。
オープニング、いきなりエレキギターに合わせて踊るショッキングピンクの文字。
この映画は、あくまでとあるキュートな女性の短い一生をポップでキッチュに脚色したお話です。
だから、歴史モノだと構えずに、ビバリーヒルズでも観る感じでかる~くのぞめば良いのです。
マリー・アントワネットの一生なら、『ベルばら』で予習は完璧。
14歳で故国のすべてを捨てさせられ、見も知らぬ男に嫁がされ、
「ばかげた」しきたりにがんじがらめにされ、
男子を産むことを強要され、不妊症と罵られ。
考えただけでもぞっとします。
この現代においても、女性を「(男子を)産む機械」だと思っている人は、
政治家だけじゃなくてあちこちに存在しますしね。
そういうことを面と向かって言う家に嫁がなくて良かったとは思います。
ま、それはともかく、
政治をほったらかし浪費に走ったマリーの行動を容認するわけではありませんが、
同情は禁じ得ません。
贅沢に囲まれはしゃぐマリーの姿は、よけいに切ない。
キルスティン・ダンストは、どうひいき目に見ても絶世の美女ではありません。
でも、だからこそ人知れず流す主人公の涙に共感するのです。
「自分がこの立場だったら」と、生まれ変わってもありえないようなことを考えてしまうのです。
それにしても、色とりどりのドレスに靴、ふわふわの羽に光る石。甘いお菓子にしたたるシャンパン。
やっぱり私も好きだったんですよ、おとぎ話の中に出てくるお姫様の世界が。
とくにあのケーキ。指ですくいとってぺろっと。一度でいいから、やってみたーい!
観ているだけで楽しくなります。
ラスト、おとぎ話は突然現実へ。
とってつけたように革命が始まります。
が、オチはみんな知っているだろうし、別にわざわざ流れを描かなくてもよかったんじゃないかなあ。
たとえば、すべて処刑前夜のマリーの回想だったとかにすれば、
尻切れトンボ感はなかったのではないかと思いますね。
評価:★★★☆☆
『フライ,ダディ,フライ』
娘の身体と心両方に怪我を負わせたボクシング少年に復讐するため、
喧嘩の方法を学ぼうと高校生に弟子入りした中年男性のひと夏の物語です。
仕事は順調でポスト部長、郊外の一軒家に愛する妻と娘。
絵に描いたような幸せな日常は、家庭を持つ男性なら誰しもが夢見る未来なのかもしれません。
でも男にはもうひとつ、昔から捨てられない憧れがあるようです。
それは--《腕力》。
勉強ができてもお金があっても、少年のヒエラルキーは結局腕っ節の強さで決まります。
武器に頼ってはいけません。それは自分が弱いとアピールしているようなもの。
闘うならば、腕一本。
いつのまにか、自分の弱さを人のせいにしたり、権力に折れたりしてしまうオッサンを、
背中からどやしつけるように、見事にのしてみせた高校生は、
オッサンには真夏の太陽の如くあまりにも眩しい。
毎日仕事に出かけ、決まった時間に駅でお迎えを待つオッサンに、夏休みはない。
でも、本当はいつのまにか諦めていただけ。
その道を選びさえすれば、年中スーツを着ているオッサンも、夏休みを満喫できるのです。
でも、大半の大人は選べない。
幼い頃、広場でバット振って甲子園目指して野球の真似ごとしていても、
歳を取ったらビール片手にプロ野球中継にヤジを飛ばすのが関の山。
だからもちろん、スーツにスニーカーはいて、バスとかけっこなんてできやしない。
でも、本当はやってみたいんです。バスに乗ってるだけじゃイヤなんです。
欲しいんです、夏休みが。
40日間過ぎたら、なにか変わっているような気がしていたあの日々が。
でも、当時はなんにも変わらなかった。
夏休みは毎年あると思っていたから。
今だったら、変われる気がする。絶対なにかを変えてみせる。
よれよれスーツでも羽根になる。
飛んでいける。
風に向かって走るオッサンは、確かに空に向かって羽ばたいていました。
評価:★★★★☆