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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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諸事情あってTSUTAYA DISCASを退会してから、

まったくと言っていいほど映画を観ていませんでした。

改心して、週に1本は鑑賞するようにします。

 

『パンズ・ラビリンス』

 

オスカー3部門に輝いたスペイン映画。

主人公オフェリアの、唯一の家族である母親は再婚相手の子を宿し、娘には気を回さない。

その義父はというと、妻のお腹の中の「息子」しか興味のない冷血漢。

孤独を抱えた少女が異世界に迷い込み、実は自分が魔法の国の王女であることを知る・・・というのは、

ファンタジーによくある導入部。

この映画も、そのテの部類なのかなあ、と思っていたら、

趣がずいぶん違います。

まず、夢の世界の妖精たちがまったくといっていいほど、かわいくありません。むしろブキミです。

オフェリアが「王女」に「戻る」ための試練というのも、

洞窟を虫まみれ泥まみれになりながら這い進んだ先で魔物に唾液を浴びせられたり、

飢えのあまり食べるなの禁忌を犯したばかりに追いかけられたり、

あこがれていた夢の世界は、実は現実と同じくらい厳しくて醜く、過酷です。

一方当時のスペインは、政府と抵抗組織の間で内戦がくり返されている時代。

オフェリアを唯一気にかけてくれる女中のメルセデスは、実はレジスタンスのスパイ。

オフェリアが試練に挑戦している間、彼女は屋敷を抜け出して、

泥にまみれながら山に潜伏しているレジスタンスに物品を届けたり、

解放への甘い誘惑に混乱する捕虜に心を乱されたりしています。

「夢」と「現実」とを行ったり来たり、

オフェリアの世界と、メルセデスの世界がうまく構成されていたのは、

その「違い」を感じなかったからでしょうか。

メルセデスと、レジスタンスに所属している弟との関係、

母親の下肢を濡らす生々しい鮮血、

禁忌の暗喩が散りばめられた物語のラストは、

あまりにも絶望的なハッピーエンド。

少女があこがれた夢の世界も、実は残酷な現実に過ぎないことを、

見事に暗喩した作品です。

評価:★★★★(4.2)

 

<おまけ:ヤスオーのシネマ坊主>

さや氏の言うようにたしかに完成度が高くいい映画です。テリー・ギリアムの「ローズ・イン・タイドランド」に似ていますが、こっちの方がよくまとまっていて分かりやすいですね。負けているのは主役の女の子のルックスぐらいでしょう。

さや氏がこの映画の評価すべきポイント(「主人公が誰にも愛されていない」、「夢の世界の方も現実世界と同じく恐怖に満ちていて辛い世界」、「ラストがハッピーエンドでもありバッドエンドでもある」等)をすべて言ってしまっているので、特に僕は何も言うことないんですけど、二人で同じ映画を見て二人とも同じようなことを思ってるのだから、やはりこの映画はわかりやすくかつ良い映画なんでしょう。

夢の世界の方が本当にオフェリアの幻想なのか、ということだけが最後まで気になりましたが、最後まで見て素直に解釈したらただの幻想だったんでしょうね。悲しい話です。

欲を言えばもうちょっと夢の世界の冒険を描いてほしかったですね~。途中からメルセデスが主人公みたいになってましたから。まあメルセデスの視点から見ても面白い映画なんですけど。

評価:★4つ/(★5で満点)

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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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