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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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スペインで行われた国際サミットの演説中、米大統領が狙撃されます。

犯人を追う護衛官。ハンディカメラを放さなかった聴衆。惨劇に呆然とするテレビディレクター。

「その瞬間」が幾人もの視点でくり返され、真実が明らかになっていきます。

狙撃、爆破、追跡と、事件はスピーディに展開していくのですが、

ひとつエピソードが語られるたび時計が巻き戻され、

テロの現場を何度も観るハメになり、若干「また?」とダレてくるのですが、

そのダレタイミングを狙って巻き戻された場面が変わったので、

飽きることなく最後まで楽しめました。

後半は息をもつかせぬ迫力アクションの連続。

1時間半という長さも、ちょうど良い時間です。これ以上心臓バクバクが続くと体に悪いし。

舞台がスペイン、題材がテロということで、

犯罪の孕む思想的国家的問題も語られるのかな、と思っていたのですが、

この尺でそれはありえませんでした。

終わり方も、予想どおりというか、ハリウッド的大団円というか、

2時間ドラマを観ているようでした。

俳優もドラマ出身者が多いようなので、さもありなむ。

評価:★★★☆☆

 

<おまけ:ヤスオーのシネマ坊主>

 

 一つ前に観た「アメリカン・ギャングスター」とまったく同じ出だしになりますけど、見ててそれなりに面白く退屈はしないので、出来は悪くないと思うんですが、まったく心に残らない映画でした。しかし、この映画の場合は、作り手側がアカデミー賞を獲ろうとか、後年に残る名作を作ろうとかはまったく思ってなさそうなのが分かるから、「アメリカン・ギャングスター」よりはマシですけどね。

 「登場人物の背景はあえて描かんかったんや。そんなん描いてもだれるやろ。そのへんは観客が勝手に想像してくれたらええんや。この映画は大衆向けに作ってるんやで。とにかくスピード感のある展開にして、客を飽きさせへんようにせなあかん。人間ドラマに費やす尺はクライマックスのハラハラドキドキの追いかけっこにまわそうや。もちろんスペインでロケしてるんやから、スペインの街並みをバックに追いかけっこさせるでえ。あと、色々な視点から見た一つの出来事ってのがテーマやから、編集やカット割りには時間かけらなあかんな。ほら、いい感じになってきたやろ。90分の短い尺できっちり締まったええ映画になったな。」という作り手側の意図がすごく伝わってくるんですよ。そして、その狙い通りの作品に仕上がっています。

 しかし、僕は個人的にはそのようなコンセプトの作品はTVドラマで作ったらいいと思うんですけどね。僕はTVドラマは日本のもアメリカのも韓国のも一切見ませんが、それは作品に奥行きを感じないからです。映画は決して枠にはめようと思ってもはまらないところが好きなんです。この映画は、作り手側がぎちぎちに設定した枠に、きっちりはまっていますからね。老若男女映画通から素人まで100人集めたら、100人が同じような感想を言う映画でしょう。ほめるところも一緒だし、けなすところも一緒。そして何よりも、そういう感想は作り手側が全部あらかじめ想定していそうなところがムカつくんです。だから僕もご都合主義な展開にケチはつけないです。初めは「絶対この子死なんやろ~。ほらやっぱり。ハリウッドやなあ~。」とか、「こいつ裏切るやろ。やっぱりなあ。わかってんねん。」とか思いましたが、そんなことを考える奴がたくさんいることぐらい監督も分かってるでしょうからね。だからバカになって素直に楽しんだらいいんでしょう。僕はこの映画の場合はそれができなかったですけど。

 それはこの映画の世間の評価が中途半端に高かったからですよ。一番悪いのは映画を作った人達ではなく、世間です。こういう映画は賛否両論で全体の評価がちょうど真ん中ぐらいに位置してないといけない。僕がこの映画をどこにでもあるハリウッド娯楽作だと思って見たら、もっと楽しめたと思いますからね。

 評価:★3/(★5で満点)

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