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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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60回目を迎えた正倉院展に今年も行ってまいりました。

昨年の経験を活かし、8時過ぎには到着しよう! と意気込んでいたものの、

結局8時半に。

それでもすでに行列が・・・。

今年はよりによって、天皇・皇后両陛下の来館がありましたから、

またまた知名度が上がってしまいましたかね。

せんとくんを知っている皇后陛下にビックリでしたが。

 

さて、中はあいかわらずのゴミゴミです。

足踏むわ踏まれるわ割り込むわ割り込まれるわ。

やっぱり、観覧の順番を決めて誘導すべきだと思うのですが。

 

それでも観るものはきっちり観ました。

今年の目玉のひとつは《刻彫尺八》。

今の尺八よりもスリムで穴も六個あります。

全面に文様が彫られてあり、鳥や蝶や楽器を奏でる女性が描かれています。

その細かさにはため息が出るばかり。

そして、なんと昭和20年代にその尺八を演奏したテープが流されていました。

1300年前の楽器なのに、ちゃんと吹けるんですね!

その型をとどめたこと自体が奇跡の古代の音に心が揺さぶられました。

 

ササン朝ペルシアから運ばれた切子模様のカットグラス《白瑠璃椀》。

シルクロードを経て、はるばる日本にやってきたガラス椀は、

国に残れば副葬品として地下深く眠るはずだった運命を転変させ、

時代も国境も超えて日の目を見ることとなりました。

どのような旅路を越えてきたのか。

色褪せぬ器は黙して語らず凛然とその美を誇ります。

 

いつの時代も、使役される側の苦労は変わりません。

寺に納める写経のため、国じゅうから優秀な若者が集められました。

しかし国家の一大行事に参加する名誉とひきかえにするにはあまりにも、

その労働は過酷なものであったようです。

写経生と呼ばれる彼らの現実が、休暇届や始末書というかたちで伝えられています。

「これからはまじめに働きます」という一文のあとには、同僚の連書もありました。

詰めさせられた夜などはみんなで励ましあっていたのでしょうか。

 

古の美に耽ったあとは、お隣の興福寺へ。

五重塔は奈良のシンボルでもありますが、

国宝特別公開期間の今は、なんとこの五重塔に入ることができるのです!

と、いっても初層だけですが。

昔は上まで登れたそうです。ピサの斜塔みたいなものでしょうか。

高層建築を支える太い柱の根っこも、

薬師・阿弥陀・弥勒・釈迦の勢ぞろいも見られます。

さらに東金堂では、白鳳・平安・鎌倉・室町時代に作られた仏像の見事なコラボ(?)。

それぞれの時代の美を一堂に感じることができる、贅沢な空間です。

南円堂では不空羂索観音像がお出迎え。

光背を背負った仏様を前にすると、胸が締め付けられるのはやはり私が罪業深い故でしょうか。

思わず手を合わせてしまいます。

 

今日はとってもいいお天気。

自転車の向かい風も気持ちいい秋晴れの朝でした。

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