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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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ドラマの再放送で鷲津さんのメガネに惚れた私。

今回、登場場面では裸眼だったので、「え、まさかコンタクトに!?」と愕然としたのも束の間、ちゃんとかけてくれました、メガネ。しかもアップで。わかってるわ~。

中国系ファンド会社を率いる残留孤児3世の劉一華は、日本有数の自動車メーカー《アカマ自動車》の買収に乗り出す。日本経済に嫌気がさして海外で隠遁生活を送っていた鷲津は、アカマの役員になっていた芝野に乞われ、劉とのマネー戦争に乗り出すことに。

企業買収をめぐって対峙するふたりのハゲタカ。果たして勝利の行方は・・・。

今回の見どころのひとつは、玉山鉄二演じる劉一華の存在。その美貌、そのメガネもさることながら、、かの天才ファンドマネージャー鷲津をもしのぐ頭脳と、中国国家をバックとする潤沢な資金で、日本人として日本の象徴であるアカマを救いたいというその言葉とは裏腹に、鷲津を、日本を追い詰めていきます。

よくいるイケメン俳優のひとりかと見くびっていました、タマテツ。難しい役柄ながら、大森南朋を前にしても決して見劣りしない、見事な演技をくり広げました。白眉だったのは、劉に利用されたと知り札束を床にばらまいた派遣工に「拾え!」と激昂する場面です。

這いつくばってカネをあさる「持たざる者」。かつての己の姿だった。遠い昔中国の農村で目にしたアカマのスポーツカーに憧れた。だから「持つ者」をめざした。しかし持てば持つほど、その思いとは遠ざかる。「持つ」ことは「失う」ことだった。鷲津はそれを知っていた。劉はそれから目をそらした。ゆえに、「持つ者」の悲劇が訪れる。

結論から言うと、ドラマの時の緊張感が、この映画には少し欠けていたようです。それもそのはず、リーマンショックにより脚本の8割を変更せざるをえなかったとか。しかしかの事象を彷彿とさせるマネーゲームのありさまに、身震いさえ憶えました。登場する派遣工の弱者的立場、また彼らをいいようにこき使う企業の姿も、非常にリアルです。

それでも経済という難しいテーマを扱いながら、「カネ」と「ヒトノココロ」という、対立するふたつの要素を見事に融合させ、ひとつの作品として昇華させたスタッフの手腕には感動すら憶えます。

旅館の旦那におさまって、今回は少し陰の薄かった松田龍平の出現がやや唐突で、ドラマを観ていない人には少し不親切ではありますが、それを差し引いても映画作品としてじゅうぶん楽しめる価値のある作品でした。

評価:★★★★☆

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