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飛行機のエンジンが部屋に落下したその夜から、ドニー・ダーコの運命は転変する。突如現れ「世界の終わり」までの残り時間を告げる兎。美人の転校生。学校への破壊と暴力。ドニー・ダーコは一躍ヒーローとなった。「世界の終わり」が来るまでの時間「28.06.42.12」は――。
とても不思議な映画です。SFなのか、青春物なのか、ミステリーなのか。答えは判然としないまま、エンディングを迎えます。しかしこれまた不思議なことに、違和感は残りません。良い作品を観た後の、爽快さとも呼べる感覚に支配されました。
タバコに恋に反抗に。青春を謳歌しているように見えて、ドニー少年には影がつきまとう。放火の前科、精神安定剤にカウンセリング。家族との不和。催眠術で夢とうつつのはざまを行き来しながら、つぶやくうわごと。真の彼は、世界はどこに在るのか。観ている者の足もともまた、おぼつかない。
兎の言い残した28日後の世界の終わり。その瞬間に、世界は「始まり」へと戻る。ドニーの部屋にエンジンが落ちた、あの瞬間に。ドニーは死んだ。翌朝現場を通りかかったのは恋人「だった」はずの転校生。もちろん彼女はドニーのことを知らない。知らない、はず。
ドニーの過ごした28日間は、果たして「本物」だったのか。それとも彼が今わの際に寝床で見た、幸福な夢だったのか。答えはもちろん観ている者に委ねられ、提示されることはありません。
夢の世界は荒唐無稽なように見えて、実はすべてがどこかで目にした人物や風景で構成されているといいます。得体のしれない不気味な兎の着ぐるみ、エンディングにおいてドニーが死んだその時には、まだラフスケッチの段階であったかのように見受けられますが、果たしてそれが真実かどうかはわかりません。ドニーが彼の絵を何かの拍子に目にしていた可能性はあると思いますし、グラッツェンとも街のどこかですれ違っていたかもしれません。英雄願望は誰しもに存在するもの。ドニーの欲望を満たす28日間は彼の潜在意識によって作り上げられた限りなく現実に近い夢だったという単純な解釈も、否定できないと思います。確かに最後は悲劇が襲う。しかし世界の終わりは回避された。彼が目覚めることによって。だから笑えた。彼は世界を救ったのだ。最後まで、英雄として。
もちろんタイムパラドックスやパラレルワールドと考えるのもありですし、これほど自由に解釈できる、しかし消化不良の残らない作品も稀有なのではないでしょうか。
時に狂気じみた陰影を両眼に宿すジェイク・ギレンホールの演技が秀逸でした。『プリンス・オブ・ペルシャ』の主演と同一人物とは思えませんな・・・。
評価:★★★★☆(3.7)
ヤスオーの感想はこちら。