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チェ・ゲバラという人物。名前だけは知っています。彼がどのように革命に生き、革命に散ったのかは知りません。『モーターサイクル・ダイアリーズ』で感銘を受けたとはいえ、結局その後彼の人生に対する知識を仕入れることはありませんでした。
しかし主役がベニチオ・デル・トロであること、最初から前後篇の作りで気合いが入っているらしいことから、もう一度ゲバラという人物の生きざまに触れてみることにしました。
革命。その言葉から想起するのは、劇的な展開です。派手な攻撃が仕掛けられるかもしれない。窮地から奇跡のような大逆転を起こすかもしれない。そして主人公は英雄として崇め奉られるだろう。しかし実際はどうであるか。革命が起きるまでにはその国家のさまざまな政治的、経済的、国際的背景があり、いくつかの事象が、そして人の思いが偶然に融合し、失敗をくり返し、交渉や謀略を重ね、幾多の血を流し、ようやくに成されるのだと思います。キューバ革命とて、その範疇を超えるものではなかったでしょう。
カメラは淡々と、戦闘の日々を追い、歴史に名を刻んだゲバラの姿を追い、彼を眺める世界の他者を追います。
ゲバラがなぜ革命に参加したのか。戦いの日々の中で、彼が何を思い、何を憂い、何を希求していたか。それを深く掘り下げることはなく、その運命の一日は訪れ、革命は成功します。ベニチオ・デル・トロはゲバラになりきっていました。しかし思い描いていたようなカリスマ性を発揮するでもなく、理想と現実の狭間で苦悩する人間臭さもなく、ただひたすらに冷静で誠実で芯を曲げない指揮官としてしか描かれていませんでした。最もそうでなければ、勝利を手に入れることはできなかったでしょうが。
己の無知を後悔しました。歴史の背景を知っていれば、展開についていけなくなることもなかったでしょう。ただ、知っていれば知っていたで、ドキュメンタリーを観ているような気持ちになったかもしれません。
ゲバラはアメリカに対し原爆投下の責任を問わない日本人に怒りを隠さなかったと言います。28歳という若さで母国でない国の革命に参加した青年の、脚色することなく丁寧に再現された壮絶な人生の一部分に触れても結局共鳴できなかったのは、その高潔で激烈な精神が、あまりにも今の自分とかけ離れているからなのでしょうか。
評価:★★★☆☆