『あさが来た』
今世紀最高視聴率を記録したこの朝ドラ。それもうなずける質の高さでした。
半年スパンのドラマにはどうしても起きてしまう中だるみ時期が、いっさいありませんでした。ふゆの片想いとうめ&雁助エピソードがややひっぱりすぎな感はありましたが、主人公が成長して出産してもなお、停滞しないスピード感と一週間の構成が巧みで、あっという間に終わったようでいて、なお心を満たす充足感がありました。
当初は慣れない大阪弁と演技力のつたなさが気になってしまった波瑠ですが、いつしか炭鉱の荒くれたちを手なずけても、さほど歳の変わらない小芝風花の母親になっても、不自然にならないくらいに貫禄と風格を身に着けていました。ショートカットの似合うクールビューティなイメージしかなかったのですが、大きな瞳が感情豊かで朝ドラヒロインらしいかわいらしさがあふれていました。
「五代ロス」なる流行語を生んだ五代さまのイケメンぶりもさりながら、最後は「やっぱり旦那さま」でした。当時では異端の女性であったあさのすべてを受け止める包容力、いつもやさしくてなよなよしていても妻を中傷する者には怒りを隠さない男らしさ、これぞ理想の夫像。しかし夫が理想の夫であるからには、妻も理想の妻でなければなりません。あさの魅力は家を背負う者としての決断力、行動力、洞察力だけでなく、「そうだすなあ」と相手に共感し、「すんまへんだした」と頭を下げることのできる柔軟性だと思うのです。それこそ、新次郎が認めていたあさの「やらかさ」、あさがそれを失わずに理想の妻であり続けたからこそ、新次郎は理想の夫であり続けることができたのだと思うのです。
当初の予定を変更して最終回まで生き続けた、はつ役の宮崎あおい。紆余曲折はありましたが、幸せになってよかった。凛として美しく印象的なはつでしたが、主役のあさを食うことなく存在感を示したのは宮崎あおいの演技力ならでは。
最初から最後まで、ひとつひとつのシーンが印象に残っています。終わった瞬間から、「再放送まだ!?」と言いたくなってしまう朝ドラもひさしぶり。『カーネーション』のように、一週間の総集編を放送してくれませんかね。
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