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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『デート~恋とはどんなものかしら~』
いやー、おもしろかった。ゆううつなはずの月曜日が楽しみでたまらないほどに待ち遠しく、普段は録画でドラマを楽しむ自分でしたがこれに関しては途中からリアルタイムで視聴していました。それほどに役者・脚本・演出と三拍子そろった質の高い作品だったと思います。
杏と長谷川博己は役にピッタリでした。とくにハセヒロは『八重の桜』の誠実な尚之助さまや『MOZU』のすっとんきょうな東社長とはまるで違う、情けなくてどうしようもない高等遊民=ニートのはずなのに、いとおしくて仕方ないという難しい役柄をカメレオン俳優の面目躍如といった演技で魅せてくれました。杏も古風な眼鏡と流行からはほど遠い髪型で女性的な雰囲気をいっさい排除しながら、物語が進むにつれそのかわいらしさが浮きたっていました。鷲尾くんとの初デートでがらりとイメチェンした姿は、さすがの美しさでしたが、依子はやっぱり眼鏡とおさげのほうが良い…と思ってしまったのは、それまでの依子の一見では伝わらない魅力を杏がしっかり演じていたからでしょう。
終盤、依子と巧が結ばれると見せかけてやっぱり鷲尾や佳織とくっつくのかと思わせておいて、最終的には当初の予想どおりに依子と巧が恋をして、鷲尾と佳織の間にも新たな恋の芽生えを匂わせるラストで幕を閉じました。「結婚とは契約であり、恋とは不要なものである」といういわゆる「月9」の王道をひっくり返すテーマで始まっておきながら、だんだんと心が通じ合っていき、しかし思わぬライバル登場、それでも最後には互いが互いを思いやり、アダムとイブの禁断の実を互いに食し、恋という苦しみの中に身を投じることを決意したふたり。なあんだ、やっぱりこれは「王道の月9的ラブストーリー」だったんだ。
しかしそれに至るまでの描き方の、なんと見事なことか。調べてみればこの脚本家は『キサラギ』『ゴンゾウ』『外事警察』を手がけた敏腕ライターではないですか。
このくらい良質で、泣いて笑って楽しめるドラマが今後も増えていけばいいなあと思います。

『マッサン』
脇を固めていた余市の人びとが退場し、オープニングのクレジットも淋しくなった最終週。
さまざまな人との出会いと別れが交差したこの物語の最後は、エリーとマッサン、夫婦ふたりで静かにしめくくりました。
最期の時が近づいてくることを悟り、マッサンへの思いを手紙につづるエリー。昨今の朝ドラの描写にならい老けメイクもほとんどされていないのに、老いた者の弱々しさと死の影をほのめかす透明感を醸し出していたのは、ここまでドラマを支えてきたシャーロットの演技力でした。そしてエリー亡き後抜け殻になってしまったマッサン、手紙を読んでふたたびふたりの夢を思い出したマッサン、目の動きだけで演じる玉山鉄二に涙をもよおし、このしあわせだった半年間が終わってしまうことにもまた、涙を誘われるのでした。
毎日すばらしい15分間を提供してくれた『マッサン』でしたが、すべてにおいて良質だったわけではありません。
脚本や演出には随所に粗さが見られました。説明的なナレーションや親子の確執のくり返しは鼻につくことが多かったですし、とくに終盤の大事な時期のエマ&一馬の長丁場にはうんざりしてしまいました。それまで登場した役者が芸人含めて質を損なわぬ演技をしていただけに、エマ役の小野寺ちゃん(とつい呼んでしまいたくなる)の拙さが際立ってしまったのは、女優さんにとっても不幸なことであったと思います。それと前後して小野寺ちゃんが休養を発表したのは、もしかしてこの出演のプレッシャーが大きかったのかなとも感じました。『あまちゃん』の時以上に痩せていましたし。残り2週でエマ役が木南晴夏に代わったのは予定どおりだったとは思えませんが、当初から彼女がエマを演じていたなら、終盤で違和感を抱くこともなかっただろうにと思います。『てっぱん』でもセーラー服だったし、女学生役を演じることもできたと思うのですが…。
しかしそれらの欠点をすべて補って余りあったのが、エリーとマッサンの熱演でした。主役がこのふたりでなかったら、おそらくこの朝ドラは失敗に終わっていたと断言できます。とくにシャーロットには毎日泣かされました。中でも、特高を前に「私は亀山エリーです」と主張する回は終盤の見せ場でした。
泣き上戸のシャーロットさんですが、『あさイチ』で通訳さんまでそろって泣いているのが印象的でした。
もうこの夫婦の仲睦まじい姿を見られなくなってしまうのは、淋しいばかり。
しばらくは「マッサンロス」になりそうです。
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ヤスオーと古都の片隅で暮らしています。プロ野球と連ドラ視聴の日々さまざま。
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