MENU | MENU | MENU | MENU | MENU | MENU |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
グレースとサム夫婦はふたりの可愛い娘にも恵まれ、幸せな生活を送っていた。銀行強盗で服役し、出所したばかりサムの弟トミーは家族の厄介者。グレースは彼に好意を持てずにいた。サムが海兵隊員としてアフガニスタンに派遣されてほどなく、彼の訃報がグレースのもとへ届く。悲しみにくれる彼女たちを励ましたのは、トミーだった。サムの代わりとしてグレースと娘たちを支えようとする彼の姿に、グレースも心を動かされていく。
ナタリー・ポートマン、トビー・マグワイア、ジェイク・ギレンホールという、私でも名前を知っているような有名若手俳優の共演。それだけでも見ごたえがありますが、加えて戦地で極限状態を味わった帰還兵の精神の傷、優秀な兄と比較されて卑屈になっていた弟の心の再生。喪失感と戸惑いで揺れる女心、母の愛。優しくて大好きだった父の変わり果てた姿を受け入れられない子どもたち。登場人物ひとりひとりの揺れ動くさまが繊細に描かれていて、感傷のひだに沁み入る作品でした。
ごく普通の家族だったのです。愛にあふれた家庭、無邪気に駆けまわる子ども、息子が誇らしい老いた父、拗ねてやんちゃする次男坊。そんな幸せな家族に陰を落とした非日常が戦争。サムが目にし、その手に味わった地獄。生きのびて祖国に帰り、英雄扱いされても決して生涯消えぬであろう罪悪感。グレースも、トミーも何かを感じ取りながら、踏み込めない。素直で残酷な子どもは、正直な言葉で抉り取る。ぎごちないかつての居場所。錯綜するいくつもの愛。ふりほどかれた手はさまようばかり。
固く結ばれていた糸を容赦なく断ち切り、永遠の闇の中へ突き落とす。戦争は、こんな家族をきっといくつも生み出したのだろうと思う。そして、これからも生み出し続けるのだろう。兵器と狂気の前に、愛はあまりにも無力だ。それでも地獄の中空っぽになった心を埋められるのは、家族の愛しかないのだと思う。枯れ果てた大地に少しずつ水をそそぐように、たとえ何年かかっても。愛の力は、大量破壊兵器よりも無限であると信じたい。
オープニングでの満たされた表情から一転、帰還後のすさんだ目をしたトビー・マグワイアの熱演が印象的でした。『シービスケット』や『スパイダーマン』のイメージしかなかったので、誰だかわからないほどでした。ナタリー・ポートマンは子持ちの母親に見えなかったのは少しマイナスでしたが、それを補ってあまりあるのは長女役の子です。妹ばかりかわいがられると不満を持つお姉ちゃんらしいいじけ方、同調してくれた叔父に甘える姿、変貌した父に反感を持つところ、すべてが作品の質をより高める素晴らしい演技でした。
評価:★★★★☆