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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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マイクはバスケ部の花形選手。だが試合前に恋人から妊娠したことを聞かされる。動揺した彼はスカウトの見守る中、彼女を追ってコートを飛び出してしまう。

本来ならば。彼はバスケ界において大学で、さらにその先で華々しく活躍するはずだった。

だが現実は、16年間働いても出世できず、妻には離婚状を叩きつけられ、子どもからはシカトされ。

もしあの時に戻れたら。過去の選択を後悔する人間は少なくない。マイクももちろんそのひとり。

その願いは突然聞き届けられることになる。だが、戻ったのは肉体だけ。37歳のマイクは、17歳の若さと力を手に入れて、もう一度高校生活をやり直すことになる。

そのキャンパスで、マイクは子どもたちの今まで知らなかったもうひとつの顔を見ることに。息子はバスケ部のキャプテンにイジメを受けており、娘はそのイジメっ子と交際中。子どもたちを守るべく、父は立ちあがる。

すんなり破天荒な展開についていけたのは、万人に共通する明快なテーマを冒頭で提示してくれただけでなく、マークこと17歳のマイクを演じるザック・エフロンの魅力もあるでしょう。オープニングのサービスショット的なダンスシーン、鮮やかなバスケットボールさばきもさりながら、20年前のハンサムボーイらしい爽やかさ。仇であるバスケ部のキャプテンはいかにも現代っ子的な軽薄さがあるイケメンですが、堂々とセックスに誘う現代少女をとりこにするのは、それよりも古風な身持ちの固さ。腕力がなくても大人の余裕で学園のボスをやりこめるマイクに37歳のおっさんくささはほとんどありませんが、欧米のおっさんは基本的にダンディ(なイメージ)なので、自然に溶け込めるのではないでしょうか。

学生時代から親友であり、若返ったマイクの父親役となるネッドもなかなか個性的です。かつての「おたく」趣味は相も変わらず、スターウォーズの剣を飾りエルフ語を習得し、その邸宅は趣味一色に彩られています。いじめられ、みじめな思いしかなかった17歳は、彼にとっては悪夢の記憶。二度と立ち返りたくなかったはずのその場所で、失ったはずの青春を取り戻すことになるとは皮肉な話です。それもマイクの守護霊の力だったのかもしれません。

さて、マイクが本当に取り返したかったこととは、いったい何だったのか。バスケ界での活躍か、妻への愛か、子どもたちの信頼か。

やり直せる選択とは、存在するのでしょうか。

その道を選んだのは、誰しも己の意志。あとで後悔することになったとしても、それ自体が己の築いた道。かつて詩人も言っていた、「僕の前に道はない」。

マイクの出発点は最初からひとつだった。妻を愛していること。17歳に立ち返っても、選択権は最初から存在すらしなかった。

過去を悔いることは過去の自分を否定すること。常に、生きることに一生懸命であるならば、その必要もないでしょう。

前向きに。前だけ向いて、生きていこう。

評価:★★★☆(3.8)

 

~ヤスオーのシネマ坊主<第2部>~

 とてもベタベタなストーリーです。最初20分見たら、最後どうなるのかはだいたい想像がつきます。主人公のオッサンは17歳の頃の身体に戻ってしまうのですが、戻る過程もとても適当です。ストーリー展開もかなり強引で、「おいおい」を思うところは色々あります。主役のザック・エフロンも、今とても人気がある若手俳優みたいですが、ダンスやバスケの技術はともかく演技自体はそんなに上手くないなあと思いました。

 ただ、間違いなくこの映画はいい映画です。最後までご都合主義な展開の映画でしたが、それでも感動してしまうところが、この映画のすごいところです。すべての物事が強引にいい方向に転がっていくのですが、あまりにも強引なのでいつのまにかご都合主義へのひねくれたツッコミはどこかに飛んで行ってしまい、最後は爽快感しか残っていませんでした。この映画の監督や脚本家はきっと評価されないと思いますが、彼らが自分の評価とかを気にしていたら、この映画はダメになっていたでしょうね。とにかく邪念を捨てハッピーエンドの王道を突っ走ることだけを考えたのがこの映画の出来を良くした原因だと思います。前回観た「ダイアナの選択」とはまさに真逆の映画ですね。あちらは緻密で、丁寧な作りの映画ですが、監督のどや顔が浮かんでちょっと鼻につきますからね。

 ひねくれ者の僕がこのテの映画でそれなりに感動するということは、サイコパスの人を除いて老若男女どういう人が見ても、それなりに楽しめ、感動する映画だと思いますよ。主役のザック・エフロンも演技力はともかくとして間違いなく女にモテそうな男ですから、負け犬30代女性の観客は主人公の母親に自分を当てはめて「あんなイケメンに言い寄られたいなあ。私だって年はとったとはいえまだまだ女盛りだしなあ。」といい気持ちになることができますし、くたびれたオッサンの観客は主人公に自分を当てはめて「おれの嫁や子どももいいところはあるなあ。あいつらはあいつらでがんばっているんだよなあ。もっと優しくしないとなあ。」といい気持ちになれますし、不遇な学校生活を送っている若者の観客はネッドに自分を当てはめて「今はつまらない人生だけど、将来はオレもどうなるのかわからんぞ。よし、もっと勉強してきっと大人になったら成功してやる。」といい気持ちになれますからね。

 ただ、僕が中盤から泣き始め、終盤は涙で画面を直視できなかった伝説の名作「リトル・ミス・サンシャイン」と比べると、同じ負け組家族を描いた作品としてはやはり一枚も二枚も小粒ですね。ラスト付近の、裁判所で主人公の読み上げた手紙に裁判所の住所しか書いてないところなんかはなかなかの名シーンだと思うのですが、「オレは『セブンティーン・アゲイン』はむっちゃ感動したで~!」とは周りには絶対に言えないですから。やはり作品としてのスケールの小ささやノリの軽さはいかんともしがたいですね。いい映画なんですが、その点から考えると、★7が限度ですね。ミュージカルみたいなシーンも多かったし。僕はああいうシーンは全然楽しめなくて見ててしんどくなってくるんですよ。

評価(★×10で満点):★★★★★★★

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