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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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《演劇集団キャラメルボックス2009スプリングツアー"容疑者Xの献身"》 

かつて東野圭吾フリークだった私。

『秘密』以来のバカ売れ&路線転換に若干鼻白み、新刊を手に取ることはなかったのですが、『容疑者Xの献身』の帯の文句&見た目の重厚感に思わず単行本をレジに運んでしまいました。

そしてラスト・・・「なんじゃこりゃあーーー!(松田優作風)」。

ミステリとしては、非常に優れていると思います。トリックも、話の展開も。

でも、でも、違うんです。私の読みたい東野圭吾は、こんなんじゃないんです。

で、1回読んだだけで古本屋行きの段ボールに放りこんでしまいました。

それから数年。キャラメルがこの話を舞台化すると聞いて、驚きました。

暗いし、舞台転換も多いし、ハッピーエンドではないし、どういうお芝居にするつもりなのかしら? と、期待と不安半分でチケットを取りました。

 

ごはんを食べて会場に入ったのが、開演15分前。チケットに書かれた席番に向かうと・・・あれ、人がいる。

直接声をかけるのも何なので、係員にお願いしました。

すると、どうやらその人のチケットにも、同じ席番が印刷されていたようです。ちらりと見えたチケットは、販売元が違いました。

係員は要領悪く場内と外を行ったり来たり。おいおい始まっちゃうよ。

ようやく劇団の人が予約した席の数番隣のチケットを持ってきました。・・・いや、その席も、人座ってたやん。

案の定また「しばらくお待ちください」。すでに開演5分前。

再び案内された席は、サイドのセンター寄り。いや、私センターのセンターを予約したんだけどね。

私が開場してすぐに入っていたら、予約した席に座れたわけで、そしたらその人が待たされたわけで。

いったいどーゆーことなんでしょーね。

これが後方や、2・3階席を案内されたら、「ふざけんなあ!」とクレーマーになってみるのですが、そこまで悪くなかったので、我慢しました。

問題は、ダブルブッキングが私だけでなかったことですよ。

同様に謝罪されながら案内されていた人がいましたが、その人はサイドのサイドに座らされていました。元の席番は知りませんが、悪条件ですよ。

モヤットをいっぱい抱えて席に着くと、ほどなく開演。

 

キャラメルといえばオープニングのダンスもひとつの楽しみですが、今回は内容が内容だけに、ダンスはありませんでした。静かで薄暗い幕開けです。

数学者を断念し高校教師になった石神役は、西川浩幸さん。

探偵ガリレオこと湯川役は岡田達也さん。

劇団の看板俳優ふたりの演技合戦のはじまりです。

石神が恋心を抱く靖子役の女優さんは客演でしたが、もう少し儚い雰囲気の人がいいなと思いました。進行するごとに入りこんで、気にならなくなりましたが。

重たい雰囲気の中にも、ところどころにはキャラメルらしい笑いが盛り込まれていました。

寝ぼけた湯川が「誰かクサナギに服を着せてやってくれ~」には大爆笑。

友人である草薙刑事と、巷で話題の彼をもじっているのでしょうが、うーんブラックやね。

若手も演技力に磨きがかかっていることもあって、非常に見ごたえのある舞台でした。

とくに西川さん。近頃、ちょっと存在感が減ってきていたような気がしていただけに、今日のお芝居は真骨頂でしたね。いつも飄々としていて、今回の石神も感情を抑えた役柄でしたが、最後の最後で感情を爆発させる場面は、石神の抱えてきた想いを切に感じ、涙が出ました。

 

『容疑者Xの献身』って、こんなお話だったのね・・・。

もう一度、読んでみようかしらん。

 

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