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おのづから言はぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮れぬる(西行)
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『嫌われ松子の一生』

ドラマで観てさらに原作まで読んだのですが、もともと話題になっていた映画もずっと気になってはいました。

ジェットコースターのような松子の人生。

ドラマで11回もかけて描いた数十年をどうやって2時間にまとめるのだろうと思っていたら、

松子の妄想と現実が鮮やかな映像と音楽ででめまぐるしく交錯する、ミュージカル仕立てでした。

極端にまで孤独を嫌い、愛を求める彼女は、根っからプラス思考で楽天家。

映画を観ているとそう感じます。

病弱な妹にばかり注がれる父の愛情を少しでもこちらに向けたくて会得した特技・ヘンな顔。

惜し気もなくくり返しソープ嬢から女囚、醜く老いさらばえた姿まで、

いろんな女の転身を演じた中谷美紀の女優魂も必見?

でも、愛に飢え打ち破れる女性にしてはちょっと正統派美人な気がするんですよね。

キャラクターの違いもありますが、内山理名のほうが適役に見えました。

物語を彩る松子の相手役の劇団ひとりや伊勢谷友介も貧相でした。

香川照之が郷里の弟役というのがもったいないですね。

荒川良々はいい雰囲気でした。

ラストは松子が本当に帰りたかった場所、そしていちばん言いたかった言葉なのでしょう。

切ない一生、でも十二分に愛に生きた一生だったのだと思います。

やっぱり私にはムリですけど。

評価:★★★☆☆

 

『バベル』

菊地凜子がアカデミー賞にノミネートされたことで一気に日本国内の注目度を集めた映画ですが、

ブラット・ピットやケイト・ブランシェットなど、著名な俳優陣が名を連ねているにもかかわらず、

娯楽とは程遠い作品です。

舞台はモロッコ・メキシコ・日本。

話は時空を越えて展開しますが、言葉も人種も環境も異なる人々は、

それぞれ同様の闇を心に抱えています。

それは孤独であるということ。

すれ違う夫婦、すれ違う親子は事件を通して絆を回復していきますが、

それはまた別の孤独を知ることでもありました。

法と国家の理不尽な壁。

その前では命はあまりにもちっぽけな存在であり、思いも絶叫もたやすく踏みにじられてしまいます。

それでもそばに寄り添う誰かがいたならば、その手を離さずにいるならば、

少しずつでも思いをそれぞれのコトバで語りあえば、きっと救われるに違いありません。

お金や名誉や快楽、物質的な幸せはたやすく崩されてしまいます。

いちばん大切なものは、すぐそばにあるのです。

それを最初から知っていたのは、

傷ついた見知らぬ女性に煙草を与えた老女と、

観光客から謝礼を受け取らなかったガイド青年の親子だけだったのかもしれません。

評価:★★★★☆

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