先発は中４のディクソン。ローテどおり松葉の予想もありましたが、ここは精神的に強いであろう外国人投手を持ってきました。初の中４で心配もありましたが、無難な立ち上がりを見せます。
相手先発は大隣。今季難病から復活を遂げ、オリックスが大の苦手としている投手です。その戦績を裏切らず、上位打線は完璧に抑えられます。かつてはメンタルに問題ありと評されていた大隣も、すっかり別人になりました。
２回にディクソンが先制されてしまいますが、犠飛の１点で抑えました。まだまだ序盤。あきらめない。
好機にも得点できないまま、ゲームは５回に。ランナーを背負い２アウトながら打席には内川。森脇監督が動きます。「ここは比嘉か!?」と思いきや、投手は岸田に。まだ切り札を出すには早いと見たか。
手を合わせて見守る先、内川は投ゴロに。
あとで知ったのですが、比嘉は内川に相性が悪かったのでした。
いつ出番があってもおかしくない大一番。ブルペン陣はしっかり準備をしていたのです。
しかし攻撃陣は大隣相手になかなかホームを踏めません。ここにきて調子を上げてきている糸井が何度出塁しても、そのあとが続きません。球を見きれず振り回してしまうペーニャ。古巣相手に力が入りすぎか。
それでも助かったのは、大隣が６回まで投げ切ったことで７回から中継ぎに交代したこと。もし大隣が早くに降板していたらこれまた苦手の武田が待機していたのです。勝ちパターンではありますが、森ならまだチャンスがあるはず。
そのかすかな期待に手ごたえを持たせてくれたのが、代打キャプテン坂口でした。終盤、好機の代打で勝負強さを見せてくれていましたが、この正念場でも、光を示してくれました。
ツーアウト二塁。監督は積極的に動きます。代打原拓、執念のタイムリーで同点！ １２球団いちあきらめの悪いチームは、やはり絶対にあきらめない。
終盤。いろいろなアヤがありました。吉村に代走が出たこと、今宮に代打が出なかったこと、馬原から佐藤達に前倒し継投で残り投手が少なくなってきたこと、平野佳が３凡に抑えるも次の回の先頭が天敵の柳田になり１イニングしか投げさせられなかったためさらに苦しくなったこと、ペーニャの打球が天井に当たりフェアゾーンに落ちてしまったこと、今宮がそれをファインプレーしたこと。
そして１０回。今季幾度もチームを救ってきた比嘉が一球のアヤでサヨナラタイムリーを許し、判定のアヤでランナーを溜めてしまったマエストリに負けがついてしまいました。
勝負が決まるのは一瞬。ただ試合というものは、試合開始から積み重なったいくつものアヤが縦糸になり横糸になり、最後に勝敗が色分けされる、一枚の大きな織物なのです。
この結果は、試合中、いくつものわずかな偶然が重なった産物でした。
打球が上がった瞬間にくずおれた安達と原。
勝利のランナーが駆け込む横で顔を上げられない伊藤。
歓喜の輪の横を茫然と引き上げる糸井。
ベンチで泣き崩れるナインを挨拶に立ちあがらせた森脇監督。
声を詰まらせながらインタビューに応える面やつれした秋山監督。
グラウンドとスタンドで、そしてテレビの前で止まらないいくつもの涙。
１０・２。
きっとプロ野球史に残る一戦になるだろうと、思っていました。
そしてその予想を裏切らないゲームになりました。
10/2 vsH ●
（結果）78勝62敗2分（２位確定）
優勝したソフトバンクには、称賛を捧げます。
終盤の失速には驚きましたが、シーズン前の大補強で「優勝してあたりまえ」の声多い中、オリックスの意外な躍進とマジック点灯に相当追いつめられていたのでしょう。秋山監督のやつれっぷりがその苦しさを物語っていました。しかし怪我人が続出してもあとを埋める存在が次々出てきたことはやはりその強さが本物である証。負傷者や不調の選手を起用し続けなければいけなかったオリックスと較べると差はあきらかです。だからこそ、この戦力で優勝争いを演じたオリックスが大健闘と讃えられるのでしょう。
しかし「よくやった」で終わるわけにはいきません。
箱根駅伝で覇権奪回した東洋大のスローガンは「１秒を削り出せ」。２１秒差で優勝を逃した悔しさを、ひとりひとりが「あと１秒」の意識を持つことで強さに変えました。
競技は違いますが野球も同じ。「あの１敗がなければ」「あそこで勝っていれば」と思い返す試合は多々あります。わずかな差でＣＳを逃したあの時よりも、悔しさの質はまるで違います。それほど「優勝」の価値は、ＣＳがある今でもなお、大きく輝いているのです。その栄光へあと一歩。その一歩のために、削り出さなければならないものは、なお多く横たわっています。
それでもまだ終わりではありません。
１２球団いちあきらめの悪いチームは、次なる戦いに挑みます。
行こう、この先へ。
日本シリーズ出場、そして日本一へ。
切り替えることもまた強さ。
楽天戦２試合はその良い機会となるでしょう。糸井の首位打者、金子のタイトルもかかっています。まずはレギュラーシーズンを良いかたちで終え、ポストシーズンを迎えてほしいものです。
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